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馬産地往来

2011年12月22日

「牝馬の時代」さらに加速

牡・牝の市場価格差にも好影響

後藤 正俊

 史上最強メンバーがそろったともいわれた第31回ジャパンCは、昨年1位降着のブエナビスタ(牝5歳)が見事な雪辱Vを果たした。1番人気こそわずかに凱旋門賞馬デインドリームに譲ったものの、レースは完璧な横綱相撲。日本最強馬がその力を遺憾なく発揮した。
 スローペース、インコースが有利な馬場状態を見越した岩田騎手の寸分の狂いもない騎乗ぶりも素晴らしかったが、リーディングトップを走る名手が涙を流し、この3戦勝てなかったことをブエナビスタとファンに対して謝ったインタビューもメチャクチャ格好良かった。
 岩田騎手が騎乗して敗れた3戦とも、目立ったミスがあったわけではない。調子、展開、相手関係もあるのだから、1番人気馬でも敗れることのほうが圧倒的に多いのが競馬というもの。それでもブエナビスタを最強だと信じていたからこそ出た「申し訳なかった」の言葉。岩田騎手がJRAに移籍してからも圧倒的なパフォーマンスを見せ続けているのは、このスポーツマンとしての真摯な姿勢を持ち続けているからこそなのだろう。
 JRAでは地方騎手の移籍規定を安藤勝騎手以前のように1次試験免除特例を撤廃したため、今年は戸崎騎手の移籍が実現されなかった。もし安藤勝、岩田、小牧、内田博騎手らがJRA入りしていなかったら、日本の競馬の発展は変わっていたはず。
 地方競馬にとっては人材流出かもしれないが、第1号の赤木騎手がかつての地元・園田で引退式を行った際の地元ファンの温かい声援を聞いていると、流出はマイナスばかりでもない気がした。せめて外国人騎手と同様の短期騎乗免許を地方騎手にも交付する手法があってもいいのではないだろうか。
 ブエナビスタは牝馬として5頭目のジャパンC勝ち馬となった。3頭目までは最初の10年間で、いずれも外国馬。その後は牝馬の苦戦が続いていたが、この5年間は2勝、2着1回(ブエナビスタの1位降着)、3着2回、4着1回と日本牝馬の台頭が目立っている。今年の凱旋門賞は牝馬が1─3着を独占したし、世界的にもレイチェルアレキサンドラ、ゼニヤッタ、ゴルディコヴァなど歴史的名牝が相次ぎ誕生している。決して偶然ではないだろう。
 ダイワスカーレットなどを生産した社台ファームの吉田照哉氏は「飼養管理技術が発展したことによって、牝馬も牡馬と変わらない体力を有するようになり、同程度の調教を積むことができるようになりました。それでも牡馬と牝馬のセックスアロワンスは変わっていないので、牝馬優位の時代になってきたのだと思います」と分析。セレクトセール、北海道市場とも、牡馬と牝馬の取引価格の差は依然として大きく、馬産地の大きな悩みとなっているが、「今後は・牝馬のほうがお買い得・だと感じるバイヤーが確実に増えてくるでしょう」と価格差が埋まってくることを確信している。
 ブエナビスタは牝馬のタフさも示した。JCにはドバイワールドCを制したヴィクトワールピサも出走したが、まったくいいところがないまま13着に惨敗してしまった。脚部不安で凱旋門賞を回避し、8カ月の休養明けという不利はあったとしても、この負けっぷりはファンにとって大きなショックだった。
 海外遠征から帰って本調子を取り戻せていないのはヴィクトワールピサだけではない。6月の英・セントジェームズパレスSに挑戦したグランプリボスは帰国後のスワンSが8着、ひと叩きされたマイルCSもテンからまったく追走できない、春シーズンとは別馬のような動きで13着。立ち直るにはまだ時間がかかりそうな状況だ。凱旋門賞に出走したナカヤマフェスタは種牡馬入りで引退、ヒルノダムールも復帰は未定と、海外遠征のダメージは想像以上に大きいことが伺える。
 だがウオッカやこのブエナビスタは、遠征帰り直後から好走を続けている。今年のブエナビスタは多少のダメージがあったようにも見えたが、ジャパンCでは完全復活を見せ付けた。「一度調子を落とすと復活が難しい」と思われていた牝馬のひ弱なイメージはもうどこにもない。
 ブエナビスタは来春で引退してしまうが、アパパネ、レーヴディソール、ホエールキャプチャら、今後も世界を股に掛けて活躍する名牝が続々と誕生し、確固たる「牝馬の時代」が築かれていくに違いない。





歴代G1勝ち馬

Stallions in Japan

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