現在表示しているページの位置

馬産地往来

2019年4月25日

令和元年の2歳新種牡馬に期待

後藤 英俊

 平成から令和へと時代が移り変わり、種牡馬界も新たな時代を迎えようとしている。サンデーサイレンスの後を継いで、2010年代の種牡馬界を10年間に渡って支え続けてきたキングカメハメハは18歳、ディープインパクトは17歳と高齢の部類に入ってきた。前者は体調面の不安から、後者は首の痛みから、それぞれ今春の種付けを控えられてもいる。
 種牡馬界の新たなスター誕生を、令和元年の2歳新種牡馬に期待したい。今年は新種牡馬ラッシュで39頭の新種牡馬の産駒がデビューするが、11頭が初年度に100頭以上と交配を行っている。このうち最多の269頭と交配したキズナをはじめ、リアルインパクト(交配139頭)、ワールドエース(同131頭)、スピルバーグ(同101頭)と4頭がディープインパクト産駒で占められている。ディープインパクトの後継種牡馬は、16年にディープブリランテ、トーセンホマレボシがデビュー。ディープブリランテ産駒はセダブリランテスがラジオNIKKEI賞、中山金杯を、トーセンホマレボシ産駒はミッキースワローがセントライト記念を勝つなどまずまずの活躍を見せているが、17、18年は目立った後継馬が不在だった。それだけに今年がディープインパクト2世種牡馬の真価が問われる年になりそうだ。
 キズナはディープインパクトの3世代目産駒で、2世代目のディープブリランテに続いて日本ダービーを制覇したが、そのレースぶりはまったく異なり、後方から直線一気に追い込んだ。馬体はともに500kg級で父よりもかなり大きいが、瞬発力というディープインパクト最大の武器をより強く受け継いでいるのはキズナの方ではないかと思える。父の悲願を引き継いだ凱旋門賞こそ4着だったが、その前哨戦のニエル賞を勝っている点も、次の世代に悲願を達成できる可能性を高く感じさせてくれる。
 キズナのセレクトセールでの取引価格は、17年当歳が平均3082万円、18年1歳が平均2633万円、当歳が平均2456万円。取引頭数に大きな違いがあるので一概に比較はできないが、いずれの価格もディープブリランテよりも高かった。19年種付料もディープブリランテが150万円なのに対して、キズナは350万円。新種牡馬のライバルであるリアルインパクトは80万円で、現時点ではキズナがディープインパクトの最良後継種牡馬候補として期待されていることがうかがえる。
 キズナの魅力の一つがその母系。半姉に桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯を制したファレノプシス、半兄に米国でG2ピーターパンSを勝ち、G1ベルモントS3着となったサンデーブレイクがいるだけでなく、母キャットクイルの姉パシフィカスは菊花賞などG1・3勝、1993年の年度代表馬ビワハヤヒデ、三冠馬で94年の年度代表馬ナリタブライアンの母となっている。ビワハヤヒデ、ナリタブライアンともに種牡馬としてその後継を現在は残していないだけに、キズナにはその血の継承という役割も期待される。
 現時点でサンデーサイレンス系を大きく2つに分けると、ディープインパクト系とステイゴールド系になるだろう。そのもう一方の雄となるステイゴールドの後継種牡馬も続々と誕生している。すでにオルフェーヴルが初年度産駒から皐月賞馬エポカドーロ、阪神JF馬ラッキーライラックを送り出しその存在感を示しているが、今年はフェノーメノ、ゴールドシップの産駒がデビューする。この後継2頭の共通点は高いステイヤー能力だ。フェノーメノは天皇賞(春)2連覇。ゴールドシップは菊花賞、天皇賞(春)に加えて阪神大賞典3連覇と3000m以上で5勝もしている。
 以前の馬産地ではステイヤー種牡馬は人気が低かった。2歳戦が短距離中心で行われていた時代は、ステイヤー血統はどうしても苦戦を強いられる傾向にあった。また地方競馬では2000m超のレースは少ない。だが近年は、地方競馬の距離区分にこそ大きな変化はないものの、JRAでは早い時期の2歳戦から1800m以上のレースが設定されるようになり、ホープフルSが2歳G1に昇格した。距離カテゴリーがしっかりと区分化され中長距離ローテーションも組めるようになってきた。さらに、長距離戦の方が出走頭数が少なく、除外のリスクを考えずにローテーションを組めるという利点もある。
 日本競馬のスピード化はさらに進んでいる傍ら、凱旋門賞をはじめとした海外競馬に目を向けるオーナー、調教師も増えてきて、日本馬にも時計のかかるタフなコースを克服できるスタミナが必要であることが再認識されるようになってきた。まだ徐々にではあるが、ステイヤー種牡馬が受け入れられる環境が整いつつある。そのことを如実に示しているのが、フェノーメノ146頭、ゴールドシップ109頭の初年度種付頭数の多さだろう。
 初年度種付頭数がキズナに次ぐ221頭だったエピファネイア、2世種牡馬の成功が続くキングカメハメハ産駒のトゥザワールドも、スタミナ十分な実績、血統背景を持っている。いずれも早熟タイプのスピード馬ではなく、2歳リーディングサイアーで17年2位となったロードカナロアのようにいきなり好成績を挙げるのは難しいだろうが、ポスト・ディープインパクト、キングカメハメハに名乗りを上げられるかどうか、長い目で見守っていきたい。





歴代G1勝ち馬

Stallions in Japan

サイアーライン