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馬産地往来

2020年12月25日

第40回ジャパンCの衝撃

後藤 正俊

 コロナ禍の2020年の競馬は、どうしてこんなにもドラマチックな出来事ばかりが起こるのだろうか。11年東日本大震災直後のドバイワールドCでヴィクトワールピサ、トランセンドの日本調教馬が1、2着を独占し、日本中に元気をもたらしてくれた時の感動を思い出す。それほど第40回ジャパンCは衝撃的なレースだった。
 3歳牡牝3冠馬と先輩3冠牝馬との夢の対決の詳細については、すでに多くの報道で紹介されているので省略するが、これまで50年以上も競馬を見ている筆者にとっても、レース前もレース後も興奮状態が続いた数少ないレースだった。「3強対決」と言えば、オールドファンにとってはマーチス・アサカオー・タケシバオー、ロングエース・ランドプリンス・タイテエム、牝馬ならニットウチドリ・ナスノチグサ・レデースポートなどを思い浮かべるが、今回の「1戦だけの3強対決」とは様相が違う。トウショウボーイ・テンポイント・グリーングラスの「TTG」もあったが、これはTT対決が主だった。「一騎打ち」にはそのTTをはじめ、アローエクスプレス・タニノムーティエ、カブラヤオー・テスコガビー、ミスターシービー・シンボリルドルフ、メジロマックイーン・トウカイテイオー、ナリタブライアン・ヒシアマゾンなど「どちらが強いのか」という名勝負も数多くあったが、「初対決の3頭の中でどの馬が一番強いのか」と誰もが頭を悩ませるレースは初めてだったかもしれない。結果も1~3番人気が1~3着。4、5番人気も順番が入れ替わって4、5着と、どの馬も実力を出し切るレース内容で、馬券の的中如何にかかわらずファンの満足度も高かったことだろう。同レースの売り上げは約272億7千万円で、昨年の約184億8千万円を87億9千万円近くも上回った。
 夢のレースが実現した背景には、コロナが影響したことも想像できる。例年なら日本のトップホースが多く遠征する12月の香港国際競走は、コロナ禍で直前まで開催に不確定要素があり、コロナ検疫で関係者の移動も制限されることが予想されていた。アーモンドアイ陣営にしても現地入りしながらレース中止となった3月のドバイの二の舞を演じたくはなかったはずだ。また中東地域でもコロナは収まっておらず、来年3月のドバイも予定を立てにくい。トップホースが海外に目を向けることは、賞金獲得のチャンス拡大はもちろんだが、日本馬・血統の国際的評価の確立という面からも推進されるべきことだとは思うが、有力馬の分散の要因になっていることは確かだ。またG1レースの拡大、カテゴリー細分化も、同様の結果をもたらしているのではないだろうか。
 かなり以前の話だが、JRAに対して「日本の生産頭数規模でG1を粗製乱造することは有力馬の分散につながり、チャンピオンシップ競走としての価値が下がるのではないか。ファンも最強馬同士の対決をG1に期待しているのでは」と提言したことがあった。当時のJRA業務部の回答は「グレード競走の指定はあくまでも国際血統書委員会の規定に基づきレースレーティングで格付けをしている。JRAがG1を増やそうと思って勝手にやっているわけではない」「経営者として売り上げを考えることは極めて重要で、G1はそのレースも含め当日の売り上げが大きく増加する」「日本の生産者はいまや世界を相手に取引をしており、ブラックタイプに太字ゴシックが多く入ることには大きな意義がある。G1格のレースを格付けしないことは生産者に対しても営業妨害になる」などだった。詳細なデータを示しての回答に、こちらは何も言い返せなかったことを憶えている。
 それでも再び今回のジャパンCのようなメンバーを集結させるためには、やや子供だましにも見えるが、ボートレースのような「SG」を創設することも一つの手なのかもしれない。例えば、2歳、3歳、牝馬の限定戦はそのままG1に据え置きし、春シーズンは天皇賞(春)、安田記念、宝塚記念、秋シーズンはスプリンターズS、天皇賞(秋)、有馬記念、東京大賞典を「SG」にする。問題は今回こそ夢の対決となったジャパンCだが、3歳馬の挑戦しやすさを考えれば、いずれは有馬記念に統合する方が良いのかもしれない。当初は日本だけのローカルルールであっても、いずれは国際血統書委員会に働きかけて国際基準にすることも考えられる。G1があまりにも多いのは海外でも同様だからだ。
 同様に「G2」の見直しも必要ではないか。例えばアーモンドアイは3歳の桜花賞以来、ドバイターフを含めて12戦連続でG1に出走した。キタサンブラックも引退前の8戦はすべてG1だった。「トライアルを使って本番へ」というかつてのローテーションは、すでに出走権利を有している有力馬は取らない場合も多くなり、G1トライアルをG2に設定している根拠は薄くなりつつある。トライアルをダウングレードすることで、例えば秋シーズンに古馬はオールカマーなど、3歳牝馬はローズSなどを使わずに、天皇賞(秋)・秋華賞~ジャパンC~有馬記念のローテーションを取る馬が多くなることも想像できる。さすがに菊花賞ぶっつけは難しいかもしれないが。
 もちろんSG級レースの賞金アップやボーナス付与という方法もあるだろうが、売り上げを維持しつつ、G1数は変えず、有力馬が1つの大レースに集結するための方法を模索していく必要があるのではないだろうか。





歴代G1勝ち馬

Stallions in Japan

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