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日高便り

2006年6月1日

1歳馬「レポジトリー」

獣医学的検査と情報公開

北海道事務所・遠藤 幹

「セレクトセール2006」 では、 1歳市場の再開に際して欧米のセリにならい、 上場馬の獣医学的検査資料の閲覧室 「レポジトリー」 を開設することになった。 レポジトリーは、 1歳上場馬の四肢のレントゲンフィルムとノドの内視鏡動画を一括管理して、 購買者から依頼を受けた獣医師が同行の依頼主とともに、 自由に資料を閲覧していただく方式で運営する。
 レポジトリー開設の目的は、 サラブレッドをセリで取り引きするにあたって、 購買者の方々に上場馬の獣医学的な情報を提供して馬選びの一助としてもらうことにある。 従来の名簿と実馬検分による馬選びにプラスして、 獣医学的なデータを検討材料にすることで、 購買者はより安心してセリに参加できることになり、 ひいては市場の信頼性を高めることにもなる。
 本格的なレポジトリーの開設は初めての試みなので、 実際の運用に当たってはさまざまな問題が生じることが予想される。 もちろん、 上場馬の検査をする獣医師と、 検査結果を診断する獣医師の双方には、 高い技術と識見が要求されることになる。
 日本競走馬協会では、 市場開設に先立って、 馬産地の獣医師の方々を対象とした講習会を6月9日に新ひだか町で開催した。 繁殖シーズンの最中で多忙な時期だったにもかかわらず、 110名あまりの方々が講習会に出席されて、 レポジトリーへの関心の高さがうかがい知れた。
 当日は、 JRA日高育成牧場、 社台ホースクリニック、 ノーザンファームの獣医師3名が講師となり、 30分ほどの昼食時間をはさんで4時間にわたって講義が行われた。 講習会の内容は、 レントゲンと内視鏡による検査方法と検査結果の診断方法から、 海外の研究成果の紹介、 ノーザンファームとJRA日高育成牧場における実馬の研究データの紹介と分析まで、 限られた時間内では消化できないほど盛りだくさんだった。 受講した獣医師の方々も熱心にメモを取り、 質疑応答にも活発に参加するなど、 会場は熱気に満ちていた。
 専門外の私にとって大変興味深かった研究結果は、 「四肢の骨関節疾患の有無とその後の競走成績には有意な相関関係はない」 というものだった。 これはJRAとノーザンファームで1000を超える調査対象馬を検証した研究結果であり、 しかも骨関節疾患のある馬がGIを含む重賞レースに優勝している例も多い。 レポジトリーの利用に際しては、 明らかな臨床症状がない限りは、 レントゲンの検査結果に対して必要以上に神経質になることはなさそうだ。
 これら大量の研究データを分析した結果、 四肢レントゲン検査は、 早期に疾患の有無を把握して適切な処置を施すためには大変有用であることが明らかになったという。 レントゲン検査を踏まえて適切な処置を施してから調教を開始した馬と、 骨疾患を把握しないまま、 闇雲に調教を進めた馬では、 その後の競走馬としての寿命に大きく影響する可能性があるそうだ。
 レポジトリーを本格的に導入して育成期のレントゲン検査を普通化し、 それに基づいた適切な処置がとられるようになれば、 予防医学の観点からも大変望ましいことではないだろうか。 同様のことはノドの内視鏡検査についてもいえることで、 私にとっては 「目からうろこが落ちる」ほどの衝撃的な講習会だった。
 今回のレポジトリー開設に関しては、 施設設計、 管理庫の様式、 貸し出し方法や運用上の規程の作成など、 さまざまな検討項目を少しずつ処理しながら形作っているところだ。 その過程で開催された講習会は、 私にとっても大変有意義なもので、 今後のレポジトリーへの取り組みに大きな示唆を与えてくれた。



2006年の日高便り



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