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日高便り

2006年12月1日

やっぱり競馬は面白い

ジャパンCの賑わいに思う

北海道事務所・遠藤幹

 11月26日のジャパンC当日、 私は東京競馬場にいた。 勤務先が毎年実施している牧場経営者と従業員の方々を対象にした 「ジャパンC観戦ツアー」 に随行員として参加し、 十数年間このレースを見続けているのだ。
 午前中の空いた時間を見計らって久しぶりに競馬場内を散歩してみた。 まだ朝早い時間にもかかわらず、 場内は例年のジャパンC当日と比較しても観客の出足は早く、 家族連れや若者のグループ、 カップルが目立つ。 明らかにディープインパクト効果が現れているのだろう。
 新スタンド2階のファーストフードコーナーに、 早い時間帯から行列ができているラーメン屋があった。 小腹もすいていたので1杯480円なりのラーメンを注文した。 九州トンコツ系のラーメンで、 思いがけず美味しい。 なるほど、 朝から賑わっている理由がわかった。
 前の席の若者4人組は、 「最近、 脂っこいラーメンはスープが飲み干せなくなった」 とか 「バイトのシフトが変わって忙しくなった」 など、 ラーメンをすすりながら雑談中だ。 後ろの30代前半の夫婦と思われるカップルは、 男性が女性に、 ディープインパクトの単勝馬券を記念に買うよう勧めている。 何気ない日常会話の端々に、 ジャパンCを現場で観戦する高揚感や嬉しさがあふれているようだ。
 ラーメンを食べ終えて正門付近に歩いていくと、 7、 8人の若者が携帯で写真を撮っているのが目に入った。 近寄ってみると、 ジャパンCのロゴをあしらったモニュメントを撮影しているのだった (当日、 競馬場に行かれた方で、 あのマークかと気づかれた方は、 相当注意力があります。 競馬ファンじゃないと見過ごしてしまいます)。
 球形の地球をデザインして、 その上に 「JAPAN CUP」のロゴを組み合わせたモニュメントなのだが、 なぜ一所懸命に携帯で写しているのか、 しばし理解ができず、 じっと後ろからうかがった。
「ああそうか、 今日はディープが出走する特別な日なんだ。 皆この日を思い出にしようと、 シャッターを切っているんだ」 ――やっと考えがそこに至ったとき、 すっかりファンの気持ちを忘れてしまっていた自分に驚き、 一方で熱心に写真を撮っているファンの意気込みがずきんと伝わってきた。
 東門近くの競馬博物館では、 三冠馬の記念展示を開催していた。 セントライトからディープインパクトまでの歴代三冠馬のコーナーにも、 熱心なファンがたくさん集まっていた。
 少しファンの気持ちに近づいた私は、 学生時代の思い出の馬、 ミスターシービーやシンボリルドルフのコーナーに吸い寄せられ、 展示物を見た瞬間、 「ああ」 と思わず声が漏れそうになった。 オーナー所有のトロフィや金杯のほかに、 当時出版された本やビデオが展示されていたのだ。
 どれもが20年前に自分が買い求め、 愛読、 視聴したものだった。 今はどこにしまいこんでしまったのか、 行方知れずとなっているそれらの品々を見て、 学生時代に一気に引き戻されたような錯覚にとらわれた。
 競馬博物館の向かいは児童公園になっていて、 子供たちが無邪気に遊んでいる。 その奥は4コーナーを曲がった直線入り口の前で、 芝生が広がっている。 皆、 思い思いにシートを敷いてランチボックスを広げ、 本当に楽しそうだ。 札幌競馬場に似た感じだなと思った。
 誰もがディープの復活に期待し、 その雄姿を目に焼き付けようと、 思い思いのスタンスで生の競馬を楽しみに来場している。
「やっぱり競馬は面白い」 ――競馬場の雑踏は、 忘れかけていた感覚を呼び起こしてくれたような気がした。
 帰道すると、 ばんえい競馬の廃止が決定的になったという報道が飛び込んできたが、 道営競馬をはじめ、 地方競馬の苦境も未だに変わりがない。 赤字競馬の継続は道民、 市民の賛同を得られないといった財政面からの廃止論は無論そのとおりだろう。
 だが、 営々と続いてきた競馬がファンに与えたものは、 配当金といった金銭的なものだけではなかったはずだ。 一人ひとりのファンにそれぞれの競馬があり、 競馬への思いがある。 ジャパンCの賑わいが競馬の1シーンなら、 地方競馬の少頭数レースも競馬であることに変わりはない。
 ばんえい競馬は 「北海道遺産」 にも選定され、 文化的な位置付け (お墨付き) もなされているが、 その世界唯一の競馬がいとも簡単に消滅してしまう。
 馬文化の行く末がこのありさまでは、 ファンの競馬への思いなどは、 なんらの価値も見出されずに切り捨てられてしまうのだろうか。



2006年の日高便り



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