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日高便り

2010年6月25日

道営のヒロイン クラキンコ

父と母に続いて北海優駿制覇

北海道事務所・遠藤 幹

 6月1日、道営・門別競馬場で行われた第37回北海優駿(ダート2000メートル)で牝馬クラキンコが直線で危なげなく抜け出し、2着馬に1馬身差をつけて快勝した。これで北斗盃制覇に続いてホッカイドウ競馬2冠を達成。通算成績10戦5勝、収得賞金はおよそ1500万円となり、道営3歳馬の頂点に立った。
 このクラキンコは、日高町の倉見牧場のオーナーブリードホースで、父クラキングオーも母クラシャトルも北海優駿の勝ち馬。つまり父母娘、3頭そろって北海優駿の優勝馬なのだ。中央・地方のレベル差があるとはいえ、そうそう簡単に成し遂げられることではない。
 父クラキングオーは、北海優駿のほかにも道営記念、ステイヤーズCなどに勝った道営の名馬で、通算35戦12勝で6200万円の賞金を獲得した。父スズカコバン、母父シングルロマンという血統だ。
 母クラシャトルは、タフに59戦して15勝を挙げ、収得賞金も8500万円に達した女傑だ。父ワカオライデン、母父ネヴァーダンスと、こちらも渋い血統構成である。
 クラキンコは、いわば究極のオーナーブリードホースであり、父馬のクラキングオーは牧場主の倉見利弘さんの自家用種牡馬として、今までクラキンコを含めて3頭しか産駒をとっていない。そもそもクラキングオーは、札幌競馬場でのレース中に右前脚の靭帯全断裂という故障を発生し、普通であれば安楽死もやむを得ない状況となった。現在、種牡馬として飼養管理されていること自体が奇跡に近いのだ。
 倉見さんが当時を振り返る。
 「レース中の故障で、競馬場サイドからはダメ(予後不良)と言われ、ほとんど諦めました。ただ管理調教師の堂山先生が、とりあえず門別のトレセンまで運んで、それから考えましょうと言ってくださったので、がちがちにギブスをして戻ってきました。幸い命は助かりましたが、右前球節が小さなメロンほどの大きさに膨れて変形して固まってしまい、左脚より10センチぐらい短くなりました」
 「うちの功労馬なので、毎年1頭ぐらいは子供をとってやろうと思い、最初に生まれたのがクラキンコです。クラキングオーは厩舎で『クラキン』の愛称で可愛がられていたので、『クラキンの子』の意味なのですが、よく『倉金庫』と間違えられます。縁起の良い名前ですよね」
 「クラキンコの活躍もあって、今年はよそからもクラキングオーの配合申し込みをいただきましたが、脚がそんな具合ですし、うちは本格的な種馬場ではないので、申し訳ないのですがお断りしました」
 クラキングオーは現在13歳。牧場入口の広いパドックを与えられ、のんびりと草を食む日々だ。倉見さんの話によると、ときどき熱心な道営ファンが元気な彼に会いに来るという。
 倉見さんは40代半ばになるが、見た目は大変若く、穏やかに話される方だ。函館で水産加工業を営んでいた先代が昭和55年に倉見牧場を開設し、倉見さんは昭和58年に18歳で牧場主として経営を任されたという。
 「父は道営一本で、多いときには年に40頭ほど馬を使っていました。牧場も繁殖を20頭ほど管理していた時期もあります。今は繁殖7頭、生産は年間5頭ほどです」
 「うちはオーナーブリーダーなので、種牡馬の選定などは、高額馬でなくとも、それに準じる主流血統の種牡馬をチョイスするなどして配合しています。最近はブリーダーズスタリオンさんが、牧場から近くて種付料も手頃な種牡馬が多いので、種付させてもらっています」
 大変うれしい言葉のあとに倉見さんは心情をこう明かした。
 「クラキンコには道営を中心に今後も頑張ってくれたらなあと思っています。クラキンコを見て思うことは、人との縁や助けがあって、牧場や彼女の今があるということです。感謝の気持ちでいっぱいです」
 コスモバルクが引退した今、新たなスターホースが北海道に誕生しつつある。中央の一線級に挑戦し、自らの走りで中央・地方の垣根をぶち壊そうとしたコスモバルクとはタイプが違うが、道営ゆかりの血統、馬主、牧場から誕生したクラキンコは、まさにアットホームなヒロインだ。頑張れ、クラキンコ!



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