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日高便り

2011年4月26日

震災直後に聞いた生産者の意欲

セール上場へ向け牧場訪問を開始

北海道事務所 遠藤 幹

 3月11日午後2時46分、宮城県・牡鹿半島沖を震源としたマグニチュード9・0の巨大地震は、青森県から千葉県にかけての沿岸部に壊滅的な被害をもたらした。私の実家は仙台市の南部だが、NHKでリアルタイムに映し出された名取川を遡上する黒い津波が、幼い頃から慣れ親しんだ名取市閖上(ゆりあげ)の港町を飲み込むさまには、あまりのことに声も出なかった。
 幸いにも北海道沿岸の津波の被害は、烈震に見舞われた東北ほどではなかったものの、それでも東北地方と隣接し、東京の文化圏の影響が大きい北海道は、一気に重苦しいムードに包まれた感じがする。競馬産業も景気の動向に大きく左右されるだけに、JRAや南関東4場の開催中止といった暗い波紋は、産地にも大きな影響を与えている。
 そのような状況のなか、3月24日、25日の2日間にわたり、競走馬協会本部の職員と、昨年に続いてセレクトセールへの上場をお願いするために、日高地区の牧場を10数箇所訪問した。
 震災後まだ2週間余りしか経過しておらず、率直に言って今年の馬の売れ行きについて危機的な見通しを吐露する方がほとんどで、そのなかの数人は異口同音に「来年がさらに厳しい」と見解を述べておられた。
 しかしその一方で、この厳しい情勢だからこそと、セレクトセールへの上場にかける意気込みの高い牧場も当然存在した。
 牧場マネージャーに対応していただいたA牧場では、社長とのコミュニケーションが密に図られているのがうかがい知れた。「私のほうから、セレクトセールをはじめ各セールの特性や購買者を分析した結果を社長に報告しています。その分析を踏まえて社長は『今年は牧場生産の最上級馬はセレクトセールでどんどん販売する!』と方針を決めてくれました。どの馬を上場するかはもう決めていますので、あとはセリに向けて馬を仕上げていくのが私の仕事です。社長から、セレクトセールの実施要項なども早い段階で聞いておりますので、それらの情報をしっかり把握したうえでセリ準備に取りかかれるのは助かります」
 上場予定馬のリストも拝見したが、セレクトセール向きの良血馬が目白押しで、牧場の前向きな意欲がびしびし感じられ、こちらも大変勇気づけられた。
 B牧場は、過去に4頭をセレクトセールに上場してその全頭を売却し、しかも総売り上げは1億6000万円超と、大変営業力のある牧場だ。
 「生産馬の血統や馬体を見極めたうえで、これはと思う馬しかセレクトセールには上場しないよ。上場するからには主取りにならないよう、取り引きのある馬主さんへの営業や働きかけも行って、恥ずかしくない結果を出さないとね。仮に高く売れたとしても、やっぱり競走結果も出さないと、そのあとのお付き合いも続かないしね。セリはシビアだしこっちも必死だよ」 お話の端々に、セリに取り組む真剣な姿勢が垣間見えた。1歳馬の上場をお願いしてみたのだが、今年の景気の下降線を予測して、昨年中に目ぼしい産駒は売り切ってしまったとのこと。その慧眼にも感嘆してしまった。
 今回訪問した牧場のうち何箇所かは、過去にセレクトセールに上場した実績のない牧場だった。これまで上場しなかった理由を尋ねると、旧知の馬主の方との対面販売が取り引きの中心だったり、産駒のポテンシャルを考慮して他団体の主催するセリを主な上場先にしたなど、さまざまな回答が寄せられた。
 これらの牧場は、経営規模も日高のなかでは大きく、良質のサラブレッドを生産していることなどから、今後も協会として上場へ向けて積極的にアプローチしていきたいと考えている。やはり直接牧場の方に会ってお話をしていくことが、上場申し込みにつながる早道だと感じる。
 今回の牧場訪問を通して感じたことは、大変な時代だからこそセリを大いに盛り上げ、マイナスをプラスに転じていきたいということだ。間違いなく今年7月には最上の良質馬を、このご時世だからこそ、お買い得価格で提供できるはずで、だからこそたくさんの購買者の方にセリ会場を訪れていただきたいと思う。セレクトセールへの上場頭数を増やし、さらに質的なレベルアップを図るためにも、今後も牧場訪問を続けていきたい。





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