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日高便り

2011年10月25日

サマーセールで成功する方法

低価格市場を勝ち抜く種牡馬選び

北海道事務所・遠藤 幹

 同日に日本で行われた秋のGI開幕戦スプリンターズSは、ロケットマン、ラッキーナインら東南アジア勢3頭が有利と見られていたが、結果は日本馬が上位独占と地元の意地を見せた。生産を含めて日本競馬のレベルはさらに高まっている。近い将来必ず、日本馬による凱旋門賞戴冠の日が訪れるに違いない。9月5日~9日までの5日間、HBA主催のサマーセールが開催された。国内の軽種馬市場では上場頭数が最多となるセールで、主に日高地区の標準的な1歳馬が上場されるので、その結果は日高の軽種馬産業の景気を計るバロメーターとなっている。
 今年の結果は、1歳馬1209頭が上場されて519頭を売却。売却総額は20億2723万円、売却率は42・9%、平均価格は390万円だった。総売上は10年ぶりに20億円の大台に達して売却率も過去10年間では最高だったので、一部にセリ結果を肯定的に捉える向きもあるが、平均価格が10年前(637万円)の6割程度で250万円もの減少となれば、生産者の懐はやせ細るばかりだろう。
 産地の景気回復に何かヒントはないかと思い、今回のセリ結果の調査、分析を試みた。
 サマーセールで産駒6頭以上を売却した現役種牡馬30頭をピックアップし、「産駒の売却率(表1)」と「産駒取引価格の平均値から種付時の種付料を差し引いた金額(表2)」を調べ、それぞれ上位10頭を挙げてみた。要は産駒がよく売れていて、生産者の手元に残る金額の多い種牡馬は何かということである。
 一覧にすると、予想していた種牡馬の顔ぶれとはかなり違うことに気づいた。これはあくまでもサマーセールの分析であり、上級市場のセレクトセールやセレクションセールとは根底から異なることはお断りしておくが、日高の標準的な1歳馬をサマーセールで販売することを考えた場合の参考にはなるだろう。
 「表1」の売却率では、ステイゴールドの11頭完売や売却率7割前後のブラックタイド、ケイムホームが目に付く。実績のある種牡馬の産駒が高率で売れるのは当たり前であるが、ブラックタイドなどは初年度産駒がまだ1歳でもあり、本馬の血統的な魅力と産駒の馬体の良さに将来性を感じたあたりが売れ行き好調の要因のようだ。


●表1 サマーセール種牡馬別売却率 (売却6頭以上)
順位 種牡馬名 上場頭数 売却頭数 売却率
1 ステイゴールド 11 11 100%
2 スターリングローズ 7 6 85.7%
3 ブラックタイド 27 19 70.4%
4 ケイムホーム 19 13 68.4%
5 シンボリクリスエス 17 11 64.7%
6 タニノギムレット 11 7 63.6%
7 ゴールドヘイロー 16 10 62.5%
8 クロフネ 23 14 60.9%
9 アルデバランⅡ 15 9 60.0%
9 ゴールドアリュール 15 9 60.0%
9 シニスターミニスター 10 6 60.0%
9 ジャングルポケット 10 6 60.0%

 「表2」は、平均価格と種付料の差額が大きい種牡馬の上位10頭である。種付料以外に飼養管理費、人件費などもろもろの経費もかかるので、上位10頭でも利益が出る水準かどうかは微妙なところではあるが、一定の傾向は見えてくる。高額種付料の種牡馬も一部ランクインしているが、サマーセールの取引平均価格の低さを考えると、全体としては低価格帯の種付料の種牡馬が優位であると思われる。


●表2 サマーセール種牡馬別売却差額 (売却6頭以上)
順位 種牡馬名 平均価格
(万円)
種付料
(万円)
差額
(万円)
1 リンカーン 403 80 323
2 アドマイヤムーン 680 400 280
3 プリサイスエンド 399 120 279
4 ブラックタイド 318 50 268
5 ブラックホーク 291 30 261
6 ネオユニヴァース 660 400 260
7 アルデバランⅡ 455 200 255
8 ゴールドヘイロー 301 50 251
9 アドマイヤジャパン 315 70 245
9 アドマイヤマックス 311 70 241

 高額種付料の種牡馬については、サマーセールでの販売では損切りも覚悟しなければならない面もありそうだ。事実、高額種付料の種牡馬のなかには、取引平均価格と種付料の差額が100万円以下というものもいて、厳しい一面が垣間見える。
 まとめてみると、今年の取引実績を見る限り、サマーセール向きの種牡馬は、種牡馬実績があるか産地で前評判の高い種牡馬のなかから、種付料が比較的割安な馬を選択したほうが好結果を得ることができるようだ。今年のサマーセールでいえば、ブラックタイドやゴールドヘイロー、アルデバランIIなど、手頃な種付料の種牡馬が両部門でトップ10入りを果たしている。
 当然ながら生産馬を販売するには、地道に種牡馬の情報(産駒成績、産地での評価や将来性)を収集分析して配合を考えなければならない。ところが種付シーズンになると、種馬場への電話で「今日は何が空いてる?」と尋ねる生産者の方が必ずいらっしゃるのだ。種牡馬事務局にとってはありがたい注文ではあるが、その日空いている種牡馬を配合する程度の熱意では、生産者として経営を永続するのは大変厳しいと言わざるをえない。
 もちろん、繁殖牝馬のクオリティや産駒の飼養管理、販売努力も含めた総合力が市場での高額取引につながるわけだが、その前提として、種牡馬や上場する市場の選択について、さまざまな角度から検討する余地はまだまだありそうだ。





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