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日高便り

2012年4月24日

十人十色の生産者たち

牧場訪問で聞いた生産者の本音

北海道事務所・遠藤 幹

 3月下旬、私は本部職員のUさんとともに、今年のセレクトセールへの上場申込を勧誘するため、日高地域の生産牧場を2日間にわたって計13カ所訪問した。今回は、セレクトセールへの上場経験のない牧場と、上場がご無沙汰気味の有力牧場をピックアップして訪れた。
 日高の根雪はほぼ溶けて茶褐色の放牧地が広がっている。心なしか放牧されている馬の数が減った地区が広がっているようにも見えるが、初めて訪問する牧場も多いので、私自身は気持ちを高揚させて車を走らせた。
 最初に訪問した日高町のA牧場は、7、8年前にGI馬も生産した販売力のある牧場だ。牧場主の人柄もあって複数の馬主や調教師と良好な関係を築いていて、セリ売りをすることはほとんどないが、変貌する馬産を取り巻く状況を考えて、今回初めてセレクトセールへの申し込みを確約してくれた。
 続いて私たちに向けられた質問は、「コンサイナーで実績があるところは?」「レポジトリーはどこが定評あるの?」など、上場に際しての実践的なものばかり。牧場主のセリに賭ける意気込みがひしひしと伝わってきた。
 静内で訪問したB牧場は実績ある日高の老舗。今は代替わりし、切り盛りしている牧場主はまだ30代後半だ。セレクトセールへの上場はごくたまにある程度だが、当セールやHBAセレクションセールの売買成績の分析、特に近隣の同規模牧場の上場馬の売買成績は事細かに頭に入れていて、いつも自場の生産馬に置き換えてセリ上場をシミュレーションしているという。
「牧場経営では販売戦略が重要です。セレクトセールに上場するなら、本当の自信作と決めています。うちの基本は、500万円ぐらいのコストの馬を、いかに1000万円から2000万円程度で売るかということ。セレクションセールと割合相性が良いので、そちらに上場することが多いのですが、いつもセレクトセールのことは考えていますよ」と、眼の奥が光った。
 三石のC牧場は、毎年セレクションセールで複数頭販売するなど、セリ売りをうまく利用している牧場だ。コンサイナーは利用せず自場で馬を仕上げてセリで販売しているが、実務を取り仕切るご子息二人がまだ経験不足ということで、当面はHBA中心で販売していきたいとのこと。1歳馬は春先に全頭四肢レントゲンを撮影し、問題ない馬だけセリへ申し込んでいる。
「セリで売ってからトラブるのはいやだからね」とCさん。当たり前のことを当たり前にやるのは簡単なようで難しい。その当たり前のことを厭わずにやり続けていることが、HBAセールでの好成績につながっていることを改めて知らされた。
 浦河のD牧場は少数精鋭主義の老舗牧場。訪問した矢先に「うちの馬では見劣りするから上場しない!」とガツンと言われ、私たちはその勢いにややひるんでしまった。休憩所でかりんとうの袋を開けて勧めながら、「社台さんのやっている努力がすごいことはよくわかっている。でも私は負けず嫌いだし、セリに向けて仕上げるのは馬のためにならないから、セリでは売らないんだ」と、Dさんはきっぱり。
 さらに話は、馬産地や競馬のシステムのことに及び、私たちはすっかり聞き入ってしまった。予定時間を1時間あまりオーバーしておいとましたが、昼食の時間をとうに過ぎているにもかかわらず、Dさんは「私はここで」と食事もとらずに厩舎に戻っていった。馬中心主義ということは前から耳にしていたが、本当にそのとおりの方だった。
 E牧場のEさんは総合農協の理事も兼務している。指定された農協事務所を訪問すると営農計画書の査定の真最中だった。
「今も生産者に言ったんだ。種付料が平均30万円で種付する牝馬が10頭、売上見込みは3500万円とか書いてくるから、それは違うだろうって。生産頭数を半分に絞って、浮いたぶんの種付料を合わせて、一番いい繁殖に社台さんの種牡馬を付けなさいと指導してるんだよ。そして良い仔ができたら、セレクトセールに上場しなさいと。皆に恨まれる役どころだけど、自分も馬屋だし日高の馬産がこの先も続いてほしいからね」と、Eさんは煙草をくゆらせながらエネルギッシュに話してくれた。
 十人十色。皆さんそれぞれの考え、スタンスで馬産に取り組んでいる。私たちは競走馬を介して、馬主の方々と生産者の方々の出会いの場を提供しているが、今年も1組でも多く良い出会いが生まれればと、切に思う。





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