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馬産地往来

17/12/25

「ワクワク感」の創出を!

後藤 正俊

 2017年ジャパンCは、今回も日本馬シュヴァルグランが勝利し、これで日本馬は06年ディープインパクトから12連勝となった。2着レイデオロ、3着キタサンブラックと上位3頭も日本馬が独占し、外国馬で馬券に絡んだ馬は06年3着ウィジャボード以来、出ていない。
 今年はアイルランドからエイダン・オブライエン厩舎のアイダホ、ドイツからギニョール、イキートス、オーストラリアからブームタイムの4頭の外国馬が出走した。世界を席巻するA.オブライエン厩舎からのジャパンC出走は、04年パワーズコート(10着)、10年ジョシュアツリー(10着)以来、7年ぶり3頭目。過去の2頭に比べれば、16年英ダービー3着、17年キングジョージ6世&クイーンエリザベスS3着のアイダホは実績上位。同厩舎の序列からすればエースとは言えない存在だったものの5着と健闘した。
 イキートスは昨年0秒6差7着に続いて2度目の挑戦で、今シーズンは凱旋門賞でも7着になるなど昨年以上の実績を積み上げていたが15着。バーデン大賞、バイエルン大賞ではそのイキートスを破ったギニョールは9着。17年コーフィールドCを制したブームタイムは12着と、日本の馬場でのスピード不足を露呈した。4頭のレベルはこの数年の外国馬に比べれば比較的高かったと言えるが、それでも日本馬の牙城を崩すことはできなかった。
 「日本馬がそれだけ強くなったのだ」と主張する人は多い。香港、ドバイなどの国際レース、オーストラリアに移籍した馬、日本産で欧米デビューしている馬たちの活躍を見れば、日本産馬のレベルアップは間違いのない事実だ。「日本馬が強いから、招待レースであってもわざわざ有力な外国馬はやって来ない」という意見は論理的なものだ。「日本競馬は門戸を開いているのだから、媚を売ってまで海外有力馬に来てもらう必要はない」という意見もある意味で正論だろう。だがジャパンCをずっと見てきた一ファンとしては、「ワクワク感」がなくなってきていることも事実だ。
 1981年の第1回ジャパンCは、日本のエース2頭、ホウヨウボーイとモンテプリンスが、米国の無名牝馬メアジードーツやカナダのセン馬フロストキングらに完敗し、絶望的なその実力差に衝撃を受けた一方、「インドのシンザン」と呼ばれたオウンオピニオンが来日し、蹄鉄を着けずに裸足で走ってカナダの2頭に先着したことにも「ワクワク」した。そのオウンオピニオンの祖父が日本で活躍した種牡馬シルバーシャークだったことも、妙に嬉しく感じたものだ。
 翌82年の第2回も外国馬が上位独占し、特に2、3着のオールアロング、エイプリルランはフランスの名牝で知名度も高かったが、この年のハイライトは何といってもジョンヘンリーの来日だった。海外競馬にそれほど詳しくないファンであっても、米国の歴史的名馬ジョンヘンリーの馬名は知っていた。その馬を生で見ることができた感激はいまでも忘れられない。結果は、日本の馬場には合わずに13着惨敗だったものの、454キロの馬体重ながらこぼれんばかりに張り出した豊富な筋肉にゾクゾクしたものだった。
 そんな海外の猛者たちと対決した日本馬たちも多くのドラマを作った。第3回2着キョウエイプロミスの魂の激走。第4回はカツラギエースの日本馬初勝利よりもシンボリルドルフの初敗戦の方が衝撃的だったかもしれない。第5回はシンボリルドルフの完璧な勝利よりも、2着ロッキータイガーの桑島孝春騎手の水車ムチが忘れられない。ペイザバトラーとタマモクロス、ホーリックスとオグリキャップ、トウカイテイオーとナチュラリズム、ピルサドスキーとエアグルーヴなど外国馬と日本馬の壮絶な一騎打ちも多くのドラマを残した。個人的には、ジャパンCは1年間でもっともワクワクするレースだったが、ここ最近はその感覚を忘れかけてきている。
 媚を売ることになったとしても、やはり目玉となる馬には積極的なアプローチをするべきではないだろうか。今回のジャパンCにも21連勝中でオーストラリアの歴史的名牝と言われるウィンクスが予備登録をしていた。2400m向きではないことは明らかだったため当初から来日の意思は薄いとは思われていたが、日本の軽い馬場なら2400m戦でもその怪物ぶりを発揮できたのではないかとの見方もあった。結果はどうなったか判らないが、来日していればワクワク感があったことは間違いない。
 毎週のようにG1が開催されているいまの日本競馬は、確かに売り上げ面を考えればJRAの施策は成功なのだろう。だが天皇賞・秋〜ジャパンC〜有馬記念と続く秋の中長距離G1・3連戦には、やはり何らかのバリエーションが欲しい。ジャパンCを以前のような「物見遊山」的な部分も容認しながら、馬券だけではない「ワクワク感」を創出するレースに戻していくことも、競馬ファンを増やす一つの手ではないだろうか。