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馬産地往来

2019年12月25日

女性騎手の増加を!

後藤 正俊

 2019年の競馬界は、ディープインパクト、キングカメハメハ、ウオッカの死亡というショッキングなニュースもあったが、最も明るいニュースとして挙げられるのは藤田菜七子騎手(22=根本康広厩舎)の大活躍だろう。12月1日時点でJRA41勝を挙げて全国リーディング26位、関東リーディング10位に食い込んでいる。16年のデビュー以来のJRA通算成績(地方競馬の指定交流競走を含む)は98勝となっており、見習い騎手減量特典がなくなる101勝の年内到達も見えてきた。
 19年JRA競馬場での41勝を振り返ると、見習い・女性騎手減量特典のない特別戦は富嶽賞(5月25日・東京)、粟島特別(10月6日・新潟)の2勝だけで、3月から施行された女性騎手の負担重量減量制度の特典が活かされていることは確かだが、1着時の1番人気が9回しかない。藤田騎手の単勝馬券は応援するファンが多数いるため馬の実力以上の人気になるが、意外にも人気薄馬で勝っていることがデータで示されている。また、個人的な印象としては「好スタートから逃げている」とのイメージが強かったのだが、通過順位が表示されていない直線1000m戦を除くと逃げ切り勝ちは4勝だけで、実は差し切りが多い。
 JRA競馬場での通算88勝のうち芝32勝、ダート56勝とダートの方が勝利数、勝率とも高いというやや意外な特徴も見えてくる。勝率は16年2.0%、17年3.7%、18年4.5%、19年6.2%と年々上昇しており、着実に実力を高めてきていることがうかがえる。
 その数字以上に19年の活躍は目を見張るものがあった。2月のフェブラリーSにコパノキッキングでG1初騎乗して5着。6月はスウェーデン・ブローパーク競馬場で開催された国際女性騎手招待競走「ウィメンジョッキーズワールドカップ」に出場し、見事優勝を果たした。8月には英国・アスコット競馬場で行われたシャーガーCに女性騎手選抜の一員として参戦。勝ち星こそなかったものの、4、5着でポイントを挙げた。10月は東京盃(Jpn2)のコパノキッキングで逃げ切り勝ちを収め重賞初制覇。第3回新潟競馬では通算9勝で開催リーディングジョッキーに輝いた。
 そして最も印象的だったのが11月のJBCスプリント(Jpn1)。結果としてはブルドッグボスのクビ差2着でG1/Jpn1制覇の夢は叶わなかったが、包まれないように3角からのまくり、4角先頭の正攻法。ゲート内でかなり待たされたものの、イレ込みがちな愛馬をしっかりと落ち着かせていた点も含め、満点の騎乗に見えた。だがレース後は悔しさを前面に出した表情でのインタビューに、勝負師としての逞しさを存分に感じさせてくれた。1年間を通じて競馬ファンに明るい話題を提供し続けてくれた藤田騎手は、このまま順調なら、見習い騎手特典がなくなってからもしっかりとした地位を確立できることだろう。
 現在、JRA競馬学校騎手課程に在籍している古川奈穂さん、永島まなみさんの2人の騎手候補生は、順調なら21年春にデビューする。また8月のワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)に出場したミカエル・ミシェル騎手(フランス)が「20年は短期免許を取得し、将来はJRA通年免許取得を目指したい」と発言したとの一部報道もあった。そのWASJに参加した世界トップクラスの女性騎手リサ・オールプレス騎手(NZ)も短期免許取得を希望しているという。外国人を含め、女性騎手の増加は競馬を華やがせる意味でも、男女の地位の均等化を推進する意味でも、喜ばしいことだ。
 だが、女性にとってJRA騎手になることはまだまだ狭き門であるし、スポーツ能力の高い女性が騎手を目指すケースも少ない。馬産地では多くの女性が生産・育成に携わっており、調教に騎乗している人も数多くいる。その中には「いずれは騎手になれれば」と思っている人もいるかもしれないが、JRA競馬学校の騎手課程の入学条件は年齢制限が20歳未満となっている(地方競馬教養センターは20歳以下)。スポーツ活動で特に優れた実績を持つ人にはスポーツ特別入試制度があるが、年齢制限は同じである。育成牧場従業員が受験することは極めて難しい。実際に競馬学校入学者の多くが中学卒業直後で、藤田騎手も美浦トレセンの乗馬苑に通っていたことで中学卒業後すぐに入学したが、競馬関係者の息女以外に15歳という年齢で騎手を目指そうという女性は極めて稀な存在だろう。
 これは女性に限ったことではないが、騎手学校の入学基準年齢を引き上げて、スポーツで実績のある人は運動系の授業を減らして卒業までの期間を短縮してはどうだろうか。19年は武豊騎手が50歳代で年間100勝以上を達成したように、騎手という仕事は他のプロスポーツに比べて高齢まで活躍ができる。30歳からスタートしたとしても、能力さえあれば20年以上の現役生活を送ることができる。特に女性は男性に比べて体重の軽い人が多いから、対象者は数多くいる。柔道、レスリング、体操、水泳などの女性トップ選手が引退後に騎手を目指してくれたら、日本の女性騎手レベルも格段に高まるに違いない。

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