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2022年6月24日

5月の馬産地

北海道事務所・遠藤 幹

北海道の5月は一気に季節が進む。静内の二十間道路はエゾヤマザクラが5月1日には満開となった。サクラが終わると草木の芽吹きが一斉に始まる。下旬にはスズランが咲き、カッコウも渡来して初夏の装いとなる。
 この時期はサラブレッドの出産もほぼ終了し、生産牧場の放牧地では母馬のそばで横になってぐっすり眠っている仔馬の姿が目につく。今が一番仔馬にとって幸せなひと時かもしれない。離乳後は競走馬へ向けての馴致や調教も始まるのだ。種牡馬、特に人気種牡馬は今が一番の頑張り時。多頭数交配が当たり前になって久しいが、飼養管理技術や獣医師の技術が進んだとはいえ、あくまで種牡馬自身が身を粉にして交配業務を行うことに何ら変わりはない。連日の交配で疲労も蓄積し、2度3度マウントして何とかお勤めをこなす馬もこの時期には続出する。しかし種牡馬が苦しいのもほぼ5月いっぱいまで。6月に入ると大波小波はあるものの徐々に配合数もフェイドアウトしていく。
 4月末にJRAブリーズアップセールが開催され、5月に入り千葉サラブレッドセール、HBAトレーニングセールが相次いで開催された。いずれも2歳馬のトレーニングセール。今年の軽種馬業界の景気の動向を占うセールと言える。
 千葉サラブレッドセールは、昨年は後のドーブネ(ききょうS勝ち馬)が4億7010万円(税別)というトレーニングセールのレコード価格で取引され、それが大きく販売実績を押し上げた。そのため千葉サラブレッドセールだけ見ると、昨年と比較して販売総額、平均価格ともに大きく前年比ダウンといった数字になるのだが、他の2つのセールは、ほぼ前年並みの成績を残すことができた。購買者の皆様の意欲は変わらず旺盛であり、今後のセールにその流れが続くことをうかがわせる結果であった。
 その一方で少しだけ不安なのは地元のホッカイドウ競馬だ。4月13日に開幕した今年の競馬は5月26日までに16日間を消化。この16日間の発売成績を昨年と比較してみると……

〈令和3年〉
 発売額総額 107億908万円
 (1日平均:6億6932万円)
〈令和4年〉
 発売額総額 87億4024万円
 (1日平均:5億4627万円)

 何と前年対比約20億円弱、18%もの大幅減少なのだ。その原因として考えられるのが、番組数と出走頭数の減少である。開催初日の4月13日は10競走の番組が組まれ90頭が出走した。昨年の初日(4月14日)は12競走が組まれ110頭が出走したことと比較すると一目瞭然で、そもそも2競走、出走頭数で20頭少ないのである。単純にレース数が少なくなれば、馬券の売り上げは伸びない。この出走頭数不足による番組数の減少が序盤戦で続いており、残念ながらスタートダッシュにつまずいた結果となった。他の地方競馬においては主催者によって多少の凸凹はあるが、発売額は前年をさらに上回る主催者が多く、ホッカイドウ競馬の大幅減少は競馬全体の退潮というわけではなさそうなのだ。
 出走頭数つまり在厩頭数の減少原因として考えられるのは、ほかの主催者が大きく報償費(賞金)をアップさせていること。ホッカイドウ競馬も前年の売り上げアップを受けて報償費が上昇しているのだが、それ以上に園田や高知をはじめ、他の主催者がこの数年で大きく賞金をアップさせて、馬資源の確保が順調に進んでいると聞く。ホッカイドウ競馬は馬産地密着の競馬であり、かつては黙っていても地元の馬資源が豊富に入っていたが、それなりに手を打たないと資源確保も大変な時代に突入したと言えるのではないか。ただし16日目の開催を比較すると、昨年今年ともに12競走108頭と、全く同じ競走数と出走頭数となり、発売額もほぼ昨年同水準に近づきつつある。今後の動向も注視していきたい。
 この稿を記している5月29日は東京優駿(日本ダービー)。たった今ドウデュースがレースを制したところだ。それにしても、ドウデュースの道中の位置取り、追い出しのタイミングと進路、そして最後のたたき合い……いずれもが完璧で、武豊騎手は鮮やかな勝利を手にした。やや紅潮した表情でインタビューに応じる様を見て「千両役者」とはこの人のことを言うんだなと改めて思った。競馬関係者や競馬ファンに留まらない影響力をいまだに与え続けるその存在感には痺れるばかりだ。ダービーを頂点とした競馬のストーリー性、レースで疾走する競走馬の美しさと躍動感、そしてゴール前の熱狂と興奮等々、様々な要素が入り組んで至極の感動を与える競馬。これが続く限り「競馬産業=馬産地」も安泰なのだと思う。

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