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日高便り

2018年4月25日

春の訪れ

北海道事務所・遠藤 幹

 今年の日高地方は、私自身の記憶にもないくらい、雪の多い年だった。2月5日、6日と2日連続の大雪となり、新ひだか町静内では、アメダス観測史上最深の43センチもの積雪となった。2月中旬にも一晩で15センチ級の雪が降り、積雪は40センチ近くになった。お隣の新冠町では、雪の重みに耐えきれなくなったビニールハウスの倒壊が相次ぎ、農家に深刻な打撃を及ぼした。
 その後、3月に入ると急に気温が高くなり、雪が一気に解ける。3月9日未明に降った50ミリもの大雨は、放牧地の凍結土壌の上に大きな湖を作った。行き場を失った雨が、厩舎内に侵入した牧場もあったらしい。幸いこの暖かい雨は、凍結土壌を一気に解かしてくれて、水が地下へ抜けてくれたのは有り難かった。その後、3月28日には最高気温が5月下旬並みの15.8度まで上がり、この2週間ほどずっと気温の高い状態が続いている。本州では桜が記録的な早さで開花したが、北海道でも例年より数段早く開花するのではないだろうか。
 さて、これだけ急激な気候の変動は、馬産地に少々異変をもたらしつつある。種付け適期の繁殖牝馬が各スタリオンにどっと押し寄せているようなのだ。
 ブリーダーズ・スタリオン・ステーションは、昨年1400頭と、開場以来最多の交配数を記録したが、本年は、種牡馬の入れ替えその他を勘案して、100頭減の1300頭の交配数を予定している。したがって当然この時期であれば、総種付数は前年より減少していても不思議ではないのだが、実際は4月3日現在、前年比32頭プラスの510頭の種付けを消化している次第。この傾向は当社に限らず他の種馬場も同様らしい。
 牝馬の発情のメカニズムには、第一に日照時間、第二に気温や摂食量が影響するという。3月に入っての天候の安定と高温が、牝馬の発情に好影響を与えていることは間違いなさそうだ。

 4月18日から、ホッカイドウ競馬が開幕する。すでに2歳馬の競走能力・発走調教検査(能検)も3日にわたって行われ、約160頭の若駒が合格した。本年初産駒デビューの当社事務局種牡馬ベルシャザールやシビルウォーの2歳馬らも、無事能検をクリア。JRAより一足早く始まる新馬戦で、新種牡馬の動向をいち早く掴みたいというのは、種牡馬関係者なら誰でも思うことだろう。
 ここ数年のホッカイドウ競馬単体の発売額の増加や、好調な他場発売額の増加もあり、2017年度の主催者は、10億円近くの黒字を計上できそうだと聞く。18年度の賞金などの報奨金についても、一定程度の増額が図られ、生産者馬主の占める割合の高いホッカイドウ競馬の馬主にとって、額の多寡はともかく好ましい状況になりつつある。ただし北海道の気候の関係で、開催日数は80日間という短期間であり、その限られた時間の中で、厩舎スタッフは懸命に馬を仕上げ、レースで勝負をしなければならない。厩舎スタッフがやるべきことは、中央であろうが地方であろうが変わらない。決して多くないパイを分け合うホッカイドウ競馬をはじめとした地方競馬の関係者にとって、この優勝劣敗の競馬は過酷な競争となる。
 ホッカイドウ競馬をはじめとする競馬主催者のさらなる躍進を願ってやまない。ここ数年好調な競馬を取り巻く好環境を、今年はさらに良いものにしていければと思っている。
 残念ながらインバウンド効果は、競馬産業にはあまり波及していないように感じる。水面下で進んでいると思われる統合型リゾート(IR)事業が、日高に隣接する胆振地区に決まれば……。私ごときが夢想しても意味はないが、そう本気で願っている。

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