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日高便り

2020年8月25日

セレクトセール2020が終了して

北海道事務所・遠藤 幹

 新型コロナウイルスの感染が全国的に蔓延し、4月7日には7都府県に「緊急事態宣言」が政府から発出され、16日には全国が「宣言」下に入った。人命を守るため、そして医療崩壊を引き起こさないために、不要不急の外出を避けて3密状態を作らないようにと、首相や自治体の首長から強い要請があった。企業ではリモートワークが始まり、交通機関は全くの閑散とした状況になり、ホテルやレストランも臨時休業するところが相次いだ。相手は電子顕微鏡の世界で確認できるウイルスである。純然たる生物とは呼べない「たんぱく質の殻とその内部にある核酸」が人体内で増殖し、重篤な症状を引き起こすという不気味さが、世相をより一層暗くした。
 その時の状況から、今回のセレクトセールの活況が想像できたであろうか。当時の私は、先の見えない状況に全くの思考停止状態にあった。ワクチンや特効薬がない中では、この感染症の終息は期待できない。「感染症」と「大不況」の2つの言葉を前にして、ただ立ち竦むだけだった。
 しかしながら、既に7月のセールの準備が始まっている中にあって、立ち竦んでばかりもいられない。セール申込馬の取りまとめを受けて、5月21日には「上場選定委員会」が行われ、選定委員の皆様の厳しいチェックを受けて497頭の上場馬が決定した。申込者の皆様へ選定結果をお伝えする中で、「本当にセリをやるの?」という率直な声も幾つかいただいたが、「やることを前提に準備を進めていますよ」と自分自身に言い聞かせながら回答したことを思い出す。
 ほかの国と比較すれば大変緩やかな行動規制だったにもかかわらず、幸いなことに新型コロナは終息する方向に向かい、宣言は5月25日に全国一斉に解除された。セール開催に向けて、6月3日そして7月9日に販売者説明会が開催され、準備は着々と整っていった。7月10日から屋外プロスポーツで観客を入れた試合が始まる。そしてそのタイミングで、セレクトセールが開催された。
 本年度のセール開催にあたっては、いわゆる3密を避け、ソーシャルディスタンスを確保した運営が徹底して行われた。会場内の座席数を大幅に減らして空間を設け、なおかつ場内の窓ガラスは可能な限り撤去して、風通しを良くした。従来の購買者様用の屋外テントもテント間の距離を大きくとり、テントの間にはビニールシートを張って飛沫感染予防も徹底した。来場される方々へも検温やマスクの着用をお願いし、消毒用アルコールなども数多く配置した。セリ会場内に出入りできる方も、購買者様を始めとした関係者に限ることとし、来場を控えられる購買者様のために電話でのセール参加システムも急遽準備した。実際のセリ会場およびその周辺は、人と人の間に適度な距離感が保たれて、対策はうまくいったように感じた。
 その中にあって、購買者の皆様の熱い思いが会場内で展開した。皆様が北海道入りし牧場に足を運んで実馬をチェックできるようになったのが、6月下旬から。事前の実馬チェックも不十分なまま、日本経済にも不透明感が漂う中でのセール開催であったが、例年と変わりない、いや例年以上に活発な競り合いが展開したのだ。
 1歳市場にはディープインパクト、キングカメハメハの両巨頭の産駒が数多く上場されており、当然それらの争奪戦になることは想像できたのだが、2日目の当歳市場は、その2トップの産駒がいない。それにもかかわらず、熱い競り合いが最終盤まで続いた。社台グループの上場馬以外でも、上場者が思いもよらない高値で落札される場面も数多く出現した。歴代2位の187億6100万円(税別)の売り上げ、売却率90.9%、とにかくすごい数字を叩き出した。セールが終了した瞬間、私は何とも名状しがたい満足感に包まれた。購買者、販売者、そしてセールに携わるすべての皆様への感謝の気持ちが、じわじわと湧き上がってきた。たくさんの購買者の方々に上場馬をご購買いただき、大きなトラブルもなく2日間のセールが無事終了した安堵感が一気に押し寄せてきたのだ。
 セールに対する購買者の皆様の厚い信頼が、この数字を叩き出した直接の原動力であるのは間違いない。そしてもう一つ、協会理事を始め、運営スタッフの「セールをやり抜く」という強い気持ちが、この成功を呼び込んだことも事実だろう。セール開催に対して様々なネガティブ要因がある中で、それらを様々な対策を打って潰していき、安全で安心なセールを開催し、お客様に喜んでいただく……。これこそが今年のセールを大成功に導いた最大の要因ではないだろうか。私ごときのつまらぬ杞憂を、木っ端みじんに粉砕してくれた今年のセレクトセール。セールに参加された全ての皆様に心より感謝申し上げたい。

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