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2019年6月25日

5月の馬産地 ―― 好調なトレーニングセールとホッカイドウ競馬

北海道事務所・遠藤 幹

 5月も末になれば、出産シーズンもほぼ終了する。南に張り出した高気圧に覆われ、5月26、27日の両日は、日高地方もこの時期には考えられない高温に見舞われた。5月27日には日中の最高気温が日高門別で25.7度、浦河町の中杵臼で30.3度にも達し、夏も冷涼な日高の気候に慣れた私にとっては、猛暑以外の何物でもなかった。
 真夏のような昼下がり、近隣の牧場の放牧地を見れば、当歳馬や1歳馬はみな横になって熟睡している。今この時が、彼らにとって本当に至福の時なのだろう。のどかな牧場風景が広がっていた。

 JRAブリーズアップセール、千葉サラブレッドセール、HBAトレーニングセールと、相次いで開催されたトレーニングセールも無事終了した。いずれのセールも売却総額や売却率ともに、まずまずの結果を残しており、今年のセールの先行きを占う意味で、順調なスタートが切れたことと思う。
 私は、5月21日に開催されたHBAトレーニングセールに顔を出した。札幌競馬場のパドックに隣接したセーリングスペースには、たくさんの関係者が詰めかけていた。正直に言えば、セリ中盤までは、上値が重く価格的に伸び悩んだセリに見受けられたのだが、終盤にかけて1頭でも購入したいという購買者心理が大きく影響したのか、かなり活発なセリに様変わりした。
 結果は、234頭の上場馬中162頭が売却され、売却率は69.2%と、昨年を3ポイント上回った。売却総額は、いずれも消費税抜きで10億6380万円(前年比1940万円減)、平均価格は657万円(前年比61万円減)と、昨年を若干下回ったが、売却総額は過去10年で上位3番目であり、まずまずといえる成績だったと思う。
 次々落札される購買者名を見ていて、新規購買者と思しき方も多数に上り、この数年来新規に市場に参入される方が大きく増えたことを実感する。聞けば今回の購買登録者数は600名を超えたという。トレーニングセールは、上場馬のレベルを見れば、上下間のばらつきが大きいセリではあるが、やはりグッドホースと思うような上場馬に対しては多数のバイヤーが積極的に手を挙げて、活発なセリが繰り広げられていた。また、通常のセリ以上にコンサイナーの手腕がものをいうセリでもある。セリ結果をつぶさに眺めると、コンサイナー間で大きく売却率などに差が出ているようで、その力量が問われるセリでもあるように感じた。

 5月30日、私は門別競馬場へ出かけた。この日は、ホッカイドウ競馬三冠レース第1弾「北斗盃(1600m)」がメインレースに組み込まれ、地元のファンがいつも以上に集まっていた。最近は、馬産地の助っ人として外国人の数も増えた。インド系やフィリピン系の皆さんだろうか、仲間で競馬観戦を楽しんでいる光景があちこちに見受けられた。
 レースは圧倒的な人気を集めていたリンゾウチャネルが、3、4番手から危なげなく抜け出し、2着のジョウランに3馬身差をつけ快勝した。鞍上のベテラン五十嵐冬樹騎手は、昨年この競走をサザンヴィグラスで制しており、2年連続の北斗盃制覇となった。
 マイクを向けられた五十嵐騎手は、「逃げの手に出るつもりが、速い馬がいて抑える競馬になったのは意外でした。後ろの馬には差されないと思っていたので、前だけを見て直線追いました。次走の北海優駿に向けて良い予行演習になったのでは」と抑揚のある歯切れ良いスピーチを披露し、ホッカイドウ競馬を代表する騎手としての存在感と発信力を示していた。
 ホッカイドウ競馬は、開幕以来14日間で56億2800万円を売り上げ、前年同日の実績41億3360万円と比較し、何と36%も売り上げが増加するという絶好のスタートを切った。この数年来、ホッカイドウ競馬は、開幕当初はスローな滑り出しで夏以降に大きく売り上げを伸ばすのだが、今年はいったいどうしたのだろう?と不思議がられるくらいに絶好調なのである。
 ホッカイドウ競馬の更なる成長には、まずは面白く充実したレースをファンに提供することを前提に、関係者がたゆまぬ努力を続けることに尽きると思うが、五十嵐騎手のインタビューを聞いていて、騎手は馬を降りてからでも「俳優」であるべきという感を強くした次第だ。がんばれ! ホッカイドウ競馬!

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