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日高便り

2016年12月22日

好景気ムードの馬産地

北海道事務所・遠藤 幹

 2016年は冬の訪れが早い。既に厳冬期並みの氷点下10度近辺まで朝晩は冷え込み、雪が少ない日高は、その分風の強い日も多く、体感温度はさらに低下する。その寒い冬と対照的なのは16年の馬の売れ行きだ。当協会主催のセレクトセールも過去最高の149億円もの売り上げを記録したが、日高軽種馬農協主催のセールも好調に推移した。
 特に10月のオータムセールの結果には、正直目を丸くするものがあった。660頭の上場頭数に対し、売却頭数が474頭(売却率71.8%)、売却総額は15億2870万円(平均価格323万円)と、従来のオータムセールの数字を塗り替える大商いとなった。特に開催2日目は、初日の目玉だった社台ファームとダーレージャパンの上場馬がない中で、売却率は78.5%、平均価格も362万円を記録し、ここで手を挙げないと馬は買えないと購買者に錯覚させるぐらいのヒートアップしたセールとなった。
 オータムセールといえば、「売れない」というイメージがそう遠くない前にはあった。05年は4頭に1頭程度しか声がかからず(売却率26.8%)、主取りになった馬はさらに値段をダンピングして引き取ってもらうような状態が恒常的に続いていた。それがこの好景気なのだ。この数年の間に新規参入の馬主が増加し、全体的に購買者層がぐんと厚みを増した感がある。
 バブル景気崩壊から10数年に渡り、長引く不況の中で馬の売れ行きは芳しくなく、地方競馬が続々と廃止された時期もあった。その一方で、セレクトセールが本物の素晴らしい競走馬を、オープンな市場に多数上場することによって大成功を収めたが、日高の中小牧場は、生産馬の売れ行き不振にあえぎ、生産者数も減少の一途を辿ってきた。生き残りをかけた生産者は預託馬の比率を高めて経営の安定を図ったり、限られた資金の中でも地道に繁殖牝馬の更新を行ったり、強い馬づくりのために新たな生産メソッドを取り入れたりして、生産馬の質的向上を図ってきた。セール主催者も、ホスピタリティに満ちた市場運営や徹底した個体情報の公開、購買者の視点に立った運営システムなど、可能な限りの手を尽くし市場を変化させてきた。今回のセール成功の要因は多岐にわたるとは思うが、関係者の地道な努力が実を結んだのも事実であり、心より大きな拍手を送りたいと思う。
 そんな状況の中、社台スタリオンステーションの種付料が発表されたが、待ち構えていたかのように、生産者から多数の申し込みが社台スタリオン、さらには種牡馬商社に相次いだ。新種牡馬のドゥラメンテ、それにルーラーシップとキズナは早々と満口。この稿が掲載される頃にはさらに何頭かの人気種牡馬が募集を締め切っていることだろう。
 私の会社でも新種牡馬リオンディーズが導入され、先日シンジケート総会を開催し、余勢種付料(受胎100万円)を決定した。総会前から多数の種付け申し込みが会社に殺到しており、種付料決定後間もなく、ドンとまとまった申し込みをいただき、募集終了と相成った次第。長年種牡馬マネジメントを行っているが、経験上ではおそらく最速でのブックフルだと思う。
 産地ではドゥラメンテとルーラーシップの種付料は受胎600万円(実際は両馬とも受胎400万円)ではないかといった憶測が流れ、リオンディーズも前評判が大変高く、生産者からの支持には絶大なものがあった。生産馬が順調にさばけたことあって、種付けの申し込み局面では、少々バブル感を感じさせる年の瀬の生産地ではあるが、景気が良いにこしたことはない。願わくは17年以降も素晴らしい年でありますように。

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