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2005年4月1日

当世種馬場事情

年々早まる種付けシーズン

北海道事務所・遠藤幹

 会社の前の国道を多数の馬運車が行き交っている。 種付けシーズンもこれから5月いっぱいまでが最盛期だ。 種牡馬のなかには、 朝8時30分、 昼1時、 夕方5時の3回に加え、 早朝5時やナイター8時の種付けをこなす猛者もおり、 馬も人も大変な日々が続く。
 とりわけ、 今年初めて種付けをする繁殖牝馬 (産地では 「上がり馬」 という) は、 管理する牧場も種付けをする種馬場も細心の注意を払って種付けを行うことになる。 何せその牝馬にとって種付けは生まれて初めての体験であり、 繊細で臆病なサラブレッドにとっては、 人為的な交配は恐怖以外のなにものでもないからだ。
 牧場側は当て馬で牝馬の発情状況を慎重に見極め、 獣医師の直検 (獣医師が牝馬の肛門から手を差し入れ、 直腸の壁越しに卵胞の状態をチェックして交配適期を判断する方法) で種付け時期を指定してもらい、 種馬場に赴くことになる。 種馬場側でも、 予行演習として当て馬を実際に牝馬にマウントさせて模擬訓練をし、 その後、 本番に臨むことになる。
 種牡馬にも繁殖牝馬にとっても、 なんら問題もなくスムーズに種付けが終了することが望ましいのだが、 なかには恐怖心を前面に出して暴れる牝馬もいて、 やむなく鎮静剤を注射することもある。 種馬場側の経験則に照らし合わせると、 牝馬を管理する牧場側でさまざまなケアと予行演習を施して十分に手をかけられた馬ほど、 おとなしく種付けできることが多く、 種馬場としては、 最低限、 牧場側で当て馬をするなどの初期教育を積んでほしいというのが本音だろう。
 首都高を競走馬が走るという全国記事があったが、 私も種馬場から脱走した牝馬が会社の前の国道を突っ走るのを一度目にしたことがある。 牝馬の足には蹴張 (けばり) と呼ばれる固定ロープがついたままだったので、 種馬場から脱走したのは関係者が見れば一目瞭然なのだ。
 牝馬は5キロほど離れた種馬場で種付けに驚いて暴れ、 スタッフを振り切って脱走した。 足に絡みついたロープがばたばた音を立て、 それがさらに牝馬の恐怖を増長し、 その恐怖から逃れるために懸命に走るという悪循環に陥ってしまったのだ。
 桜並木で有名な静内の二十間道路でも、 かつてはそんな事件が時々はあったらしい。 馬産地ではたまには起こりえることなので、 こちらでは新聞記事にもならない。
 種付け後3週間で牝馬に次の発情が来なければ、 おおむね受胎したと推測される。 最終確認までにはさらに時間を要するが、 牧場側としては、 まずは受胎させることが生産の第一歩なので、 高額種牡馬を種付けした際など、 まずはほっとする瞬間だろう。
 それにしても、 ここ5年ほどで、 種付け時期はおおむね1カ月ほど早くなった。 かつては3月上旬に種付けが始まったが、 今は2月の種付けもまったく珍しくない。 ブリーダーズスタリオンを例にとれば、 10年前の平成7年には3月中に種付けした牝馬数は48頭 (種付け開始2月26日) と総種付け頭数802頭の6・0%に過ぎなかったが、 昨年は183頭 (種付け開始2月1日) と総種付け数882頭 (5月供用開始の種牡馬を除く) の20・8%を占めるまでに至っている。 種付け最終日も平成7年は8月3日だったが、 昨年は2週間以上も早く7月14日に切り上げている。
 当協会のセレクトセールが開催されてから、 当歳の良血馬が高額で取り引きされるマーケットが創出された。 セール開催に合わせて早く出産させる努力が大手牧場を中心になされたことも一因だろう。 それが広く馬産地一帯に波及したのである。
 ただし、 1月や2月といった厳冬期に生まれる当歳馬の管理には各牧場とも苦労しているようで、 ヨーロッパやアメリカと比べて寒さの厳しい北海道での早期生産はなかなか大変なことだと思う。
 ここ10年ほどサラブレッド生産の減少傾向が続いており、 地方競馬の危機的な状況も相まって、 減少基調は当分とどまりそうもない。 すでに生産頭数はピーク時の三分の二の8000頭程度にまで落ち込んでいる。 当然、 種付け数もそれに比例して減少しており、 種牡馬間の競争も激化する一方だ。 1頭でも多くの牝馬を集めるための努力が、 種馬場と事務局に求められているのである。

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