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日高便り

2015年2月25日

種付けシーズンを目前にして

北海道事務所・遠藤 幹

 昨年12月に猛烈な寒波が訪れ、この冬は寒さが厳しいのかと覚悟していたところ、年明けからは割と穏やかな日が続いている。道東の地吹雪や札幌の豪雪を思うと、日高は北海道にしては大変穏やかな地域なのだ。
 ブリーダーズスタリオン繋養の新種牡馬トーセンジョーダン号は、1月19日に無事試験交配を終えた。種牡馬管理者の立場で言えば、供用を開始する新種牡馬が、果敢に牝馬に挑みかかる気合いがあって、精子数も多く活力も十分であることは、大変心強い限りである。トーセンジョーダン号はまさしく理想の新種牡馬で、100点満点の試験交配であった。顕微鏡で精子をチェックする現場スタッフも自然と笑みがこぼれる。あとは本交配の牝馬の来場を待つのみである。
 今から20数年前に私がこの業界に入った当時、シアトルスルー直子の新種牡馬が門別地区の種馬場に繋養されていた。本馬自身もアメリカの芝のGⅠレースに優勝し、シンジケートも1株1500万円ほどで、高額にもかかわらず即日満口になるほど人気を集めていた種牡馬だった。
 ところが、この種牡馬は、種付けにおいては大変シャイな性格で、なかなかその気になってくれない。牝馬に興味がないのか、全く興奮することもなく引手を持ったスタッフの脇で静かにたたずんでいるばかりだ。連日訪れる牝馬に一向に興味を示さず、たまに少々やる気を見せたかと思いきや、牝馬が動くとシュルシュルと元気がなくなる始末。当時、緊急に開かれたシンジケートの役員会では、種付け適期になった牝馬と一緒に放牧地に放して、自然に交配できるまで様子を見ようという意見もあったと聞く。幸いにして2、3週間後にしっかりと種付けに成功した本馬は、その後は静かに闘志を燃やすスタイルで、大方滞りのない種付けをこなせるようになったが、種付け成功に至るまでの関係者は本当に大変であったことと思う。種牡馬にも性格があって、種付けの得意不得意、精力の強い弱い等々、さまざまなのだ。
 この稿が発表される頃には、種牡馬展示会も既に終了しているが、2月10日を皮切りに2月19日までに9種馬場が延べ7日間にわたり展示会を行う予定である(2月2日現在)。
 かつては展示会に備え、種牡馬の馬体を作り上げる種馬場も多かったように思う。年明けから燕麦を中心とした濃厚飼料を食い込ませ、ロンギ場で馬を回したり、あるいは鞍をつけて乗り運動を行ったりして、種牡馬をより見栄えのするスタイルに仕上げ、展示会での種付け申し込みにつなげたいという思惑があった。ピカピカに磨き上げられた種牡馬は、気合十分に周回し、生産者の目を釘付けにした。それがまたスタリオンマンとしての喜びでもあった。
 現在は馬を必要以上に太らせてしまうと、種付けも鈍くなり、今般主流の多頭数交配に適さないと考えられており、以前と比較してスマートな体形の種牡馬が多くなったように感じる。見た目よりも、種付けシーズンを健康に乗り切ることを重点とした種牡馬管理方法に変わった。
 近隣の牧場でも、ちらほら当歳馬の誕生の話が聞こえるようになってきた。厳寒期の出産は人も馬も大変な作業ではあるが、オンタ(牡)が生まれるか、メンタ(牝)が生まれるか、牧場の皆さんにとって大変ながらも楽しみな時機が到来している。出産が無事終了すれば、初回発情は約10日後。いよいよ日高路を馬運車が西へ東へ往来するシーズンももう目前に迫ってきている。

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