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馬産地往来

2022年8月25日

さらに良質なセールへ

後藤 正俊

 四半世紀の節目を迎えた今年のセレクトセール。1998年第1回の売上総額48億5100万円、売却率が64.8%だったものが、今年は257億6250万円、95.3%にまで成長した。第1回時すら50億円近い売り上げを「衝撃的」とコラムに書いた記憶があるが、改めて振り返ってみると当時の1歳馬の売却率はわずか38.3%、平均価格は約1700万円に過ぎなかった。上場頭数の8割を占めた当歳馬が売却率71.6%、平均約3470万円で全体成績を引き上げたが、それでもこの結果を受けて2~8年目は当歳馬のみの開催となったのだから、試行錯誤を繰り返しながらの25年だったことがうかがえる。今年は1歳、当歳ともに売却率が95.3%、売上総額は約128億円、平均価格は5700万円台と数字が酷似した。昨年も1歳、当歳の比較はほぼ近い数字だっただけにこれは偶然ではなく、1歳セール、当歳セールがともに究極の形に近づいてきたことを物語っているようにも思える。
 今年のセールに関して日本競走馬協会・吉田照哉会長代行は「当初は社会情勢を考えて不安もあったが、事前の下見に来るお客さんが非常に多く、これならばある程度は売れるだろうとは思っていた。だがこの結果は予想をはるかに超えるものだった。この社会状況でも日本の税収は増えていると聞いた(2021年度は対前年比約6兆2千億円増で過去最高の約67兆円)。馬主になりたい収入の多い人は増えているのだろう。競馬場にも若い人、女性ファンが増えて競馬への関心が高まっている。その中に馬を持って走らせたいと思う人も何人かいて、新しい馬主が増えてきている」と購買者層の厚みを指摘した。
 もちろん日本馬の海外での活躍も影響があった。「サウジやドバイもすごかったが、ラヴズオンリーユーはブリーダーズカップ(フィリー&メアターフ)を現地の本命馬として勝った。タイトルホルダーは凱旋門賞で現地でも人気になりそうで、そういう盛り上がりが国際的にも日本馬への注目を高めている。今年は外国人購買登録者も増えた。ブラックタイプを見ると繁殖が米国G1勝ち馬ばかりでまるで米国のセリ市のようだし、米国でもこれほどの血統レベル、馬体の出来を誇るセリ市は滅多にないのではないか。セレクトセールはサンデーサイレンスから始まってキングカメハメハ、ディープインパクトの時代が終わったが、この5~10年間に世界から素晴らしい繁殖牝馬を買ってきた。ノーザンファームなどはセレクトセールの売り上げをすべて繁殖牝馬導入につぎ込んでいる印象だ。来年からはコントレイル産駒も登場する。受胎率は高かったようで楽しみだ。凱旋門賞でタイトルホルダーが勝つようなことがあれば、今後さらにセレクトセールの注目が高まる可能性もある」と来年以降へさらなる期待を膨らませた。
 あまりにも売り上げばかりに世間が注目するのは本意ではないだろうが、この25年間で培った経験を踏まえ、さらに良質なセールに成長させていくことが主催者の務めでもある。記者としてこの25年間のセールを見てきて感じたことをいくつか提案したい。以前から気になっていたのが落札を告げる「ハンマー」だ。当日にスクーリングは行っているものの、このハンマー音に多くの当歳、1歳馬が驚く様子をいつもヒヤヒヤしながら見ている。セリ市の世界でハンマープライスは世界共通の風景だし、これから大観衆の競馬場で活躍しなければならない馬たちにとって音に慣らすことが必要だという意見もあるが、慣らすのは徐々に行えば良いこと。これだけ高額な「商品」に万が一でもトラブルがあってはならないのだから、馬が驚きにくい音や光信号などで落札を告げる方法も考えられるのではないだろうか。
 また、これは以前にも指摘したことがあるが、カタログに掲載されている写真の中に見にくいものがある。背景に異物が映り込んでいたり、背景が同系色だったりすると重要な馬体のラインがはっきりとしなくなる。被写界深度が深い画像だとなおさらだ。大半の購買者は事前に実馬見学を行うものの、カタログ写真によってどの馬を見学するか決めることも多いだけに、やはりカタログ写真は重要な意味を持つ。簡易スタジオを用意して撮影するのがベストだと思う。また撮影日が全般的に古いのは印刷工程を考えれば仕方がないことだが、オンラインカタログ用にはできるだけ直前に撮影した別画像を掲載してもらいたい。これだけ高額な商品なのだからあらゆる工夫が必要だと思う。
 最後に、これも世界のセリ市共通のブラックタイプだが、1頭平均5700万円の商品を販売するには情報量が少なすぎると感じている。できるだけ公平な情報を提供することは必要だが、それに加えてもっと販売者が主観的なアピールをしても構わないのではないか。例えば数字には表れない母、兄姉の競走成績の特徴、馬体のアピール点、牧場での様子や性格などを文章で示したら、購買者の見る目が変わることもあると思う。1頭に2ページを使うとカタログは2倍になるが、1歳と当歳を分ければ問題ないはずだ。
 これらはあくまでも一記者の思い付きだが、好調であってもこのままの形で漫然と続けていくのではなく、主催者には常に改革をしていく意識が重要ではないだろうか。

※文中の金額は税別。

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