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馬産地往来

2024年12月25日

久しぶりに興奮したジャパンC

後藤 正俊

 第44回ジャパンCは、欧州のトップホースであるオーギュストロダン、ゴリアット、ファンタスティックムーンの3頭が来日したことで、久しぶりにワクワク感に溢れる国際競走となった。特にディープインパクト最終世代の傑作、オーギュストロダンが東京競馬場に到着した時には「本当に来てくれたんだ」と、日本初の国際競走として開催された第1回や、米国の至宝・ジョンヘンリーが来日した第2回のジャパンCの感動を思い出した。
 正確に言えば、外国調教馬が日本で初出走したのは第1回ジャパンCの2週間前の1981年11月8日。招待馬の中で唯一、前哨戦から参戦したオウンオピニオン(牡6歳=馬齢は現表記)が東京芝1800mの平場オープン競走に出走した時だった。競馬では後進国のインド調教馬とはいえ競走成績は40戦27勝2着8回。マスコミは「インドのシンザン」とニックネームを付けた。父シミードはシルバーシャーク産駒、ブルードメアサイアーのコーニッシュフレイムはハイペリオン産駒と血統的には日本馬とそれほど大きな違いはなかったが、パドックに姿を見せると400kgの小柄な馬体ながら豊富な筋肉量で力強い踏み込みを見せており、たてがみの独特な編み込みや頭飾りを付けた馬装、正装した厩務員の姿も印象的。興味津々にレースを見守った。結果は勝ったタクラマカンから2秒5差の7着しんがり負け。それでも、インドの習慣から蹄鉄をつけずに日本の芝コースで1分51秒2をマークしたのだから、いまにして思えば大健闘だったと言えるだろうし、招待とはいえインドからはるばる日本までよくぞ来てくれたものだった。
 そして迎えた本番の第1回ジャパンC。インターネットが普及していなかった当時は外国馬情報がいまのように入手できず、招待馬7頭に関する情報はJRAがマスコミ向けに発表した資料がほぼすべてだった。その中で「100万ドル牝馬」の触れ込みの米国馬ザベリワン(牝6歳)が注目された。100万ドルは当時のレートで約2億2千万円。ハイセイコーがJRA史上初の2億円馬となったのは74年、障害ではグランドマーチスが75年に3億円馬となっている。収得賞金100万ドルがどの程度の価値だったのか比較は難しかったが、ザベリワンの持ち時計は芝2400m2分27秒3。これはモンテプリンス(牡4歳)の2分27秒9を上回りメンバー最速だったこともあり、1番人気にはザベリワンが推された。結果はもう1頭の米国の牝馬で、海外通しか事前には馬名を知らなかったであろう5番人気メアジードーツ(牝5歳)が優勝し、タイムは2分25秒3のレコード。同馬の2400mの持ち時計は2分33秒1だったのだから、7秒8も短縮したことになる。2着はカナダのフロストキング(セン3歳)、3着はザベリワンで、日本馬最先着は5着ゴールドスペンサー(牡5歳)。当時日本最強だったホウヨウボーイ(牡6歳)は6着、モンテプリンスは7着。世界の競馬のレベルの高さを痛感させられた忘れられないレースとなった。オウンオピニオンは13着だったが、カナダの2頭に先着する健闘だった。
 第2回は創設から1年が経過し、前年よりもかなり多くの情報量を得られるようになっていた。欧州の名牝エイプリルラン(牝4歳)はよく知られる存在だったし、オールアロング(牝3歳)もエイプリルランが4着だった凱旋門賞に出走していた(15着)ことから、情報はあった。前年2着のフロストキングも再来日し、前哨戦の平場オープンではホスピタリティを完封する快勝でその能力の高さを示していた。だが何よりも驚いたのがジョンヘンリー(セン7歳)の来日だった。前年の米年度代表馬で、来日時点でG1・11勝。海外競馬にあまり関心のないファンにもその名が轟く伝説の名馬である。そんな馬を間近に見られることに大興奮したことを今でもはっきり覚えている。パドックで初めて見たジョンヘンリーは意外に小柄だったものの、筋肉の付き方が日本馬とはまったく違い隆々と盛り上がっていた。「これがあのジョンヘンリーなんだ。来てくれて本当にありがとう」と感謝の気持ちで一杯になった。結果は日本の芝が合わなかったのか13着の大敗だったが、7歳でもピークを過ぎた状態ではなかったことは、米国へ帰国後に再び快進撃を開始してG1・5勝を追加し、9歳時には再び米年度代表馬に選出されたことでも明らかだった。現役時代のジョンヘンリーのレースを生で見られたことは、子、孫にも自慢できる出来事だった。
 24年ジャパンCの外国馬は、結果としてはゴリアット6着、オーギュストロダン8着、ファンタスティックムーン11着と、日本の高速馬場では日本馬の厚い壁を破ることはできなかったが、日本の競馬ファンが目の前でその雄姿を見られたことだけでも価値は大きかった。特にレース後に「引退お披露目式」まで行ったオーギュストロダンは、来春からクールモアスタッドで種牡馬入りし、すでに種付け料は3万ユーロ(約480万円)と発表されている。将来的にはその産駒が日本で走る機会が数多くあるだろうし、日本でその血を発展させる可能性もある。その時に、現役時のオーギュストロダンを見られたことが、日本の競馬関係者にとっても大きな財産になっているに違いない。

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