重賞勝ち馬News

Stallions in Japan

会員の勝ち馬

取引馬データベース

よくある質問

日本競走馬協会について

バナーエリア

馬産地往来

2011年10月25日

日本馬が凱旋門賞を制覇する日

あくなき挑戦が夢を実現する

後藤 正俊

 今年こそ日本馬が欧州最高峰のレースで頂点へ……、と期待の大きかった凱旋門賞だったが、結果はヒルノダムール10着、ナカヤマフェスタ11着という残念な結果に終わってしまった。
「競馬は難しい」と改めて感じさせられた凱旋門賞だった。スピードシンボリ(69年)、メジロムサシ(72年)の時代は参加することに意義のある段階であり、勝ち馬から大きく離された惨敗はショックではあったものの、後に生きる結果と納得した。
 エルコンドルパサー(99年)が2着になると状況は一変した。前年にはシーキングザパール、タイキシャトルが欧州GIを制し、アグネスワールドも英国で短距離界頂点のレースを制した。長期遠征でイスパーン賞2着、サンクルー大賞典1着、フォワ賞1着とステップレースを3戦とも好勝負したエルコンドルパサーが、屈指のメンバーのなかで2着となったことで、日本最強馬が万全の準備をすれば、凱旋門賞は手の届くところにあると思わせた。06年ディープインパクトは勝利を信じて疑わなかったが、いまにして思えば初遠征、ぶっつけ本番など初物尽くしのレースであり、・万全・とは言えなかったのかもしれない。
 今年は違った。ナカヤマフェスタは昨年2着の実績を持ち、今年は前哨戦を使っての本番。「昨年以上」が計算できた。ヒルノダムールはその前哨戦のフォワ賞で僅差2着。勝ち馬サラフィナは現地でも凱旋門賞の本命視されていたこと、母の父に不敗の凱旋門賞馬ラムタラを持つ血統背景、天皇賞・春以降ピークの状態を保っていることを考えても、少なくとも首位争いは間違いないと確信していた。
 世界との比較でも、ドバイワールドカップで日本馬が1、2着独占という快挙を果たしているのだから、日本馬の実力は世界トップレベルにあることも間違いない。その勝ち馬ヴィクトワールピサが故障のため回避したのは残念だったが、同馬抜きでも、ひいき目なしに冷静な分析をして「勝てる」と確信していた。だが結果は予想外に厳しいものとなってしまった。
 これが90回の歴史を数えながら、欧州調教馬以外にはタイトルが渡っていない欧州最高峰レースの権威であり、大きな壁だったのかもしれない。勝った人気薄デインドリームはドイツ調教馬で、ドイツ勢の優勝は最低人気だった75年スターアピール以来36年ぶり2頭目のことだった。遠征の不利が少ない隣国からの挑戦でありながら、これまで30頭以上が出走してようやく2度目の戴冠だったように、頂点に立つことも、人気を得ることさえも容易ではない。日本馬もドイツのように、負けても負けてもあきらめない気持ちで挑み続けるしかない。その積み重ねが、いずれは大きな栄冠をもたらすと信じたい。
 大きな収穫もあった。デインドリームはレース1週間前に、社台ファームの吉田照哉氏が権利の半分を取得していた。その相馬眼には敬服するしかない。おそらくは引退後に日本に来ることになるだろう。凱旋門賞牝馬が日本で繁殖入りすれば、72年の勝ち馬サンサン以来のこととなる。サンサンは期待通りウインザーノット、スプライトパッサーらの活躍産駒を輩出して、日本競馬の発展に寄与した。また凱旋門賞牝馬ではアーバンシーがガリレオ、シーザスターズを生んだことも有名。デインドリーム産駒が日本馬として再び凱旋門賞に挑む夢が広がる。
 凱旋門賞の2レース前に行われた2歳GIジャンリュックラガルデール賞では、ハットトリックの初年度産駒ダビルシムが無傷の5連勝でGI連覇を果たした。英1000ギニー馬ナタゴラを送り出したディヴァインライトに続いて、サンデーサイレンス系種牡馬が欧州でも活躍していることは、日本の馬産界にとって大きな自信となった。

バックナンバー

過去の馬産地往来

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年