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馬産地往来

2023年8月25日

セレクトセールの成功要因

後藤 正俊

 今年もまた新記録ラッシュとなったセレクトセールの2日間。セール後の日本競走馬協会・吉田照哉会長代行、吉田勝己理事のインタビューからその成功要因を分析する。(インタビュー内容は一部要約)
 初日の1歳セール後、吉田勝己理事は「高額落札馬だけでなく、それよりも低い価格帯の馬が、ほぼすべて競り合いになって高くなったのがすごかった。ひと声での落札はほとんどなかったのではないか。いろいろな牧場からの上場馬が満遍なく高く売れて、理想的なセリだった。上場馬の馬体のレベルが高かったとも言える。去年の成績が素晴らしかったので、去年と同じ程度売れてくれれば上々だと思っていたが、まさかこれほど上がるとは驚いている。最初の4頭が連続して1億円を超えたことで、購買者の感覚が上に上がったのではないか。ディープインパクト、キングカメハメハ、ハーツクライのビッグ3の産駒が1頭もいないセレクトセールとなったが、それがかえって良い方向になって、いろいろな種牡馬の子が満遍なく売れていた。ドゥラメンテの最後の世代は頭数も14頭と多かったし、半分の7頭が1億円を超えた。牝系の血統レベルの高い馬が多く、間違いなく走ってくれると思う。キタサンブラック産駒もすごい数字になったが、これだけ走っていれば当然でしょう。今回は下見の時点からすごく多くのお客さんが来ていて、特に若い馬主さんが多かった印象だ。円安を反映して海外のバイヤーも多数来ていたが、いくら円安でもこの価格ではなかなか購買ができなかったようだ。日本の経済状況、景気も良くなっているのだろう。セレクトセールは世界一のセリ市だと思っている」と話した。
 また2日目の当歳セール後に吉田照哉会長代行は「驚きに近い数字。円安で海外からのお客さんも多く来ていたが、基本的には、日本人の競馬への思いの強さの表れだったのではないか。競馬場のお客さんを見ていてもそれを感じる。馬を持ちたい、どうせなら高くても良い馬を持ちたいという思いが、このセレクトセールにつながったのではないだろうか。当歳セールの目玉となったのがコントレイルの初年度産駒で、1億円以上が8頭。コントレイル自身はそれほど大きな馬ではなかったが、産駒はみんなしっかりとした体をしていて、形の良い馬が多いと評判になっていた。無敗の三冠馬の子どもが初めてセリ市に出てくるのを見られるのが当歳セールの良いところでしょう。まだ走っていた時のイメージが強く残っているという点からも購買意欲が増しただろうし、コントレイルのオーナーも積極的にセリに参加して、価格を後押ししてくれた。キタサンブラックはトップの評価を受けている種牡馬。世界一のイクイノックスやソールオリエンスを出しているのだから当然だが、いままで交配牝馬の面でそれほど大きなサポートを受けていなかったのに、実力でいまの地位を確立した。これは認めざるを得ないでしょう。デビューが3歳1月と遅くて、どちらかといえば長距離が得意で、体はやや大きすぎるという点で当初は心配もあったが、これだけ走れば飛び抜けたチャンピオンという評価も当然でしょう。新しい購買者も増え、手を挙げれば良い馬を購買することができ、希望する厩舎に預けることもできる。そのように競馬を楽しむ雰囲気ができてきたことも良かったのではないだろうか」と分析した。
 セレクトセールは1998年のスタートから25年、四半世紀が経過した。当初は、牧場と強いつながりがないとなかなか購買することができなかったサンデーサイレンス産駒をセリ市で購買できることが、セレクトセールの大きな目玉だった。それがディープインパクト産駒に置き換わっても同様な傾向は続いていたが、「ディープインパクト産駒がいなくなったらどうなるのか」という点がこの2~3年の大きなポイント、転換期だった。だがそんな心配はまったく杞憂に終わった。昨年はエピファネイア、ドゥラメンテ、モーリス、今年はそれにキタサンブラック、コントレイルが加わり、いずれもサンデーサイレンス、ディープインパクト級の平均価格で取引された。2022年はセレクトセール取引馬9頭がG1/Jpn1を10勝し、この9頭のうち5頭は1億円以上での取引馬だったが、4頭は5千万円以下だった。好成績の大きな要因は馬主層の拡大による高額馬の活発な取引なのだろうが、中低価格帯からもG1馬がコンスタントに誕生していることも価格の底上げにつながっているのは確かだろう。来年はドゥラメンテ産駒がいなくなるが、セレクトセールの盤石さが影響を受けることはなさそうだ。

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