重賞勝ち馬News

Stallions in Japan

会員の勝ち馬

取引馬データベース

よくある質問

日本競走馬協会について

バナーエリア

馬産地往来

2009年4月1日

危機に瀕したばんえい競馬

ばんえいと新生・道営に共通する課題

後藤正俊

 08年度のばんえい競馬が3月30日に全日程を終了した。 売上総額は115億5535万8700円で、 前年対比は89・2%と14億円近くも落ち込んでしまったし、 予算対比でも97・2%と目標到達はならなかった。 このため運営業務を受託しているソフトバンク系の 「オッズパーク・ばんえい・マネジメント (OPBM)」 は4000万円以上の赤字決算となるようだ。
 帯広市の単独開催となり、 OPBMが業務委託し民間活力の導入で再建を目指してきたばんえい競馬は、 初年度の07年度は 「世界で一つのばんえい競馬を守っていこう」 という競馬ファンや市民、 道民の気運の盛り上がりがあり、 大きく売り上げを伸ばしていた。 だがそのような盛り上がりを2年間続けるのは難しかった。
 また、 これまでは4競馬場を巡回して開催されていたため同じ200メートルの距離でもコースによってバラエティさがあり、 馬券検討の材料が多くあった。 だが帯広競馬場1場での開催となると、 変化があるのはほぼ馬場水分だけという状況で、 馬券的な面白さは半減。 ファンは 「飽き」 を感じてしまった。
 OPBMサイドは帯広競馬場の複合施設化など競馬収益以外での収入源の確保を帯広市に要請してきたが、 帯広市は予算の問題などでこれに応じていない。 そのためOPBMは 「今秋までには (2010年度も業務受託を行うかどうか) 判断せざるを得ない」 とばんえい競馬からの撤退も視野に入れていることを明らかにしている。 傍から見ていると責任の押し付け合いをしているように見えなくもない。
 私が競馬欄を担当している札幌のスポーツ新聞社では、 年間を通してばんえい競馬の出馬表を5段のスペースで全レース掲載している。 これは札幌に拠点を置く他のスポーツ紙もほぼ同様だ。 首都圏のスポーツ新聞の場合、 南関東競馬や競輪、 競艇、 オートレースなどの出走表掲載は主催者が紙面を買い取る形、 つまり広告に近い掲載なのに比べると、 ばんえい競馬はかなり恵まれた立場で情報発信を行っていることになる。
 だが07年に新体制でばんえい競馬がスタートしてから、 帯広市もOPBMも職員、 社員が挨拶や打ち合わせに新聞社を訪れたことは一度もない。 レースや話題などの取材要請すらない。 マスコミに媚を売れと言うのではなく、 マスコミを利用しながら競馬を盛り上げていこうという意識が足りないのは、 何とももったいないと言いたいのだ。 禁止薬物が検出・発見された際の出走取り消しの理由が正式に発表されないこともあった。 「くわしい事情がわかり次第、 後日発表します」 という対応は、 競馬主催者・運営者としては認識が甘いと言わざるを得ない。
 ばんえい競馬では今秋をメドに、 売り上げの起死回生策として 「5重勝馬券」 の発売を予定している。 すでに競輪では導入されている 「重勝式」 だが、 国内の競馬では初めて。 キャリーオーバーが認められており、 上限2億円までの払い戻しが受けられる。 totoも最高6億円のBIGにキャリーオーバーが膨らんでから飛躍的な売り上げアップにつながっているだけに、 関係者の期待は大きい。
 しかし、 ばんえい競馬のフルゲートは10頭なので5レース続けての単勝的中率は10万分の1に過ぎない。 また実力差がはっきりとしているメンバー構成のことも多く、 キャリーオーバーがそれほど膨らむとも考えにくい。 過大な期待は疑問だ。 重勝式の導入は大賛成だが、 それより先に障害の高さや砂の深さを開催ごとに変更したり、 高重量戦も増加させるなど、 肝心のレースそのものにファンの興味を抱かせる改革が先決だろう。
 軽種馬生産者にとって、 同じ競馬ではあっても重種によるばんえい競馬はほとんど関係がないことだろう。 だが今年度から馬産地主導の体制で生まれ変わるホッカイドウ競馬は、 絶対にばんえい競馬と同じ失敗をするわけにはいかないのだ。 新生・ホッカイドウ競馬はいまのところ、 井村勝昭専務理事をトップに実に積極的な展開を見せている。 だが開催の大半を集客が期待できない門別で開催することには、 帯広単独のばんえい競馬と共通する課題がある。
 また道庁、 日高・胆振管内各町、 生産者団体など周囲の協力体制も決して一枚岩とはいえない部分が見え隠れしている。 もちろんばんえい競馬にも存続してもらわなければ困るが、 ホッカイドウ競馬の存続は馬産地全体の将来を左右する大問題だけに、 いまこそ一致団結し知恵を絞って新年度に好スタートを切ってもらいたい。

バックナンバー

過去の馬産地往来

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年