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馬産地往来

2004年10月1日

地方競馬の再生は民間の力で

道営競馬に学ぶ復興への途

後藤正俊

 全国の地方競馬が絶体絶命の状況にまで追い込まれている。 高崎競馬も今年度中の廃止が発表されてしまったし、 宇都宮、 笠松も絶望的な状況だ。 その他の地区にしても、 廃止の話はかなり真剣に論じられている。
 そのなかで 「廃止の大本命」 と見られていたホッカイドウ競馬が強烈な粘り腰を見せている。 今季も目標額を何とか超えており、 このままいけば来年度の開催も安泰といったところだ。 12月には念願だった札幌中心部の場外発売所が札幌駅前にオープンするので、 来年の売り上げにも大きな影響を及ぼすことになるだろう。 まだ油断はできないが、 大きなピンチは何とか乗り越えられたように見える。
 ホッカイドウ競馬が粘れたのは、 外部の声に耳を傾けるようになったからだろう。 これまでは典型的な 「お役所競馬」 を続けてきていた。 外部から意見を聞く場はあったが、 何かアイデアがあっても 「できません」 「前例がありません」 の一辺倒だった。 ブリーダーズゴールドCの開設に際して、 馬産地が賞金を支払うという申し出をしたときでさえ 「そういう前例はないので」 と一度は断ったほどだった。
 今回の改革で大成功したスタリオンシリーズにしても、 当初は生産者サイドからの申し入れに喜ぶどころか、「種付け権利を賞品にするというのは、 いろいろと問題があるのではないか」 と迷惑顔をしたものだった。
 コスモバルクで大成功を収めた実質的な外きゅう制度 「認定馬房制度」 にしても、 ようやく重い腰を上げて最初に発表された規定では 「牧場は周囲が塀で囲まれていて、 外部と遮断されていること」 とか 「追い切りはトレセン、 競馬場で行う」 などという、 まったく実情に沿わない規定が盛り込まれていた。
" だが、 生産者サイドのあきらめない積極的な申し入れに、 道庁、 北海道競馬事務所もようやく ""動く"" ようになってきた。 スタリオンシリーズも外きゅう制度も、 ""聞く耳"" を持ったことで、 現実的な制度として運用されるようになり、 大きな成果を収めるに至った。 "
" 確実に ""変わった"" と感じさせたのはコスモバルク・フィーバーのときだった。 コスモバルクが皐月賞、 ダービーに出走したときには、 広報担当者2人が現地へ飛び、 徹夜で並んで競馬場のパドックに横断幕を掲げたのだ。 以前だったら道の役人がこんなことをするのは考えられないことだった。 もちろん前例はないし、 そんな出張が認められるはずもなかった。 "
 だが、 北海道競馬事務所はこの出張を敢行した。 このパドックの横断幕がどれだけ宣伝効果があったのかはわからないが、 これを見たファンはきっと 「ホッカイドウ競馬も頑張っているな」 と好意的な目で見てくれたことだろう。 「コスモバルクは北海道を代表して来ているのだな」 と感じたかもしれない。
 また、 皐月賞、 ダービーのあとには、 高橋はるみ北海道知事がコメントを発表したが、 これも驚きだった。 これまでは一度だけ、 ホッカイドウ競馬の開幕日に堀前知事が競馬場を訪れたことがあったが、 1頭の馬に対してコメントを発するというのは、 これまでの役所とはまったく違う発想だった。
 役所というのは 「えこひいき」 とか 「特別視」 と思われる可能性があることを、 ことさら排除しているので、 民間人の所有馬に対してコメントを送ることなど前代未聞のことだった。 これも道庁全体が「ホッカイドウ競馬を何とかしよう」という気持になってきたからこそ実現したことだろう。
 いま、 政治の世界では郵政民営化問題が大きな焦点となっている。 小泉首相の持論がすべて正しいのかどうかは専門家ではない私にはまったくわからないが、 「民間にできることは民間に任せるべき」という考え方は、 地方競馬の問題にも共通するところだろう。
 競馬法、 刑法から日本では民間が競馬を主催することはできないが、 少なくとも民間の意見に耳を傾けることはマイナスではない。 もし民間企業が競馬開催を行ったら、 確実に黒字を生み出すに違いないからだ。 笠松も高崎も、 最終決断をする前に、 この民間の力に、 できる限り任せてみてはどうだろうか。
 ホッカイドウ競馬にできたことが他の主催者にはできない、 ということはないはずなのだから……。

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