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馬産地往来

2005年8月1日

売却率が80%を超えた夢舞台

社台グループの主取はわずか2頭

後藤正俊

 今年のセレクトセールもまた夢舞台だった。 史上最高だった昨年をさらに3億円以上も上回る79億7200万円という取引総額もすごいが、 もっと驚くのが売却率の80・1%。 昨年を4ポイント以上も上回った。 いくらセレクションされているとはいえ、 売却率が8割を超えるセリ市は世界的にも例がないのではないだろうか。
 この数字を引き上げたのが社台グループからの上場馬であることは間違いない。 社台グループからは123頭が上場されて売却は121頭。 つまり売れ残ったのはたった2頭だけで、 売却率は驚異の98・4%。 社台グループ上場馬は過去7回とも90%前後の売却率をマークしていたが、 今回の数字はまさに究極といえるだろう。 吉田照哉日本競走馬協会副会長は 「リザーブ価格は思い切り下げました。 "価格は上場者が決めるのではなく市場が決めるもの" という信頼感を、 これまでのセレクトセールではっきりと示されてきたからです」 と記者会見で語っていた。
「セリ市ですから、 こちらが予想していたよりも低い価格しか付かない馬もいるし、 逆に、 激しい競り合いで購買者が熱くなって、 想像を絶するほど高くなるケースもある。 父 (故・吉田善哉氏) もよく "セリ市は狂気の世界だ" と言っていました。 キーンランドセールなどで熱くなってずいぶん高い買い物をしてしまったことがありましたし、 とんでもないお買い得もありました。 それがセリ市なのです」
「価格は市場が決めるもの」。 一般の取り引きではごく当たり前の市場理念が、 ようやくサラブレッドの市場にも導入されたのだ。 これこそがセレクトセールが競馬界にもたらした、 もっとも大きな功績ではないだろうか。
 この社台グループの姿勢に引っ張られて、 日高からの上場馬もリザーブ価格を抑える傾向が出てきている。 非社台グループ上場馬の売却率は02年の第5回までは50%前後だったが、 03年=59・7%、 04年=61・7%、 そして今年は67・6%と、 この3年間で急激に上昇している。 セレクトセールの取引総額が上がってきているのは、 むしろこの非社台グループ上場馬の売却率アップに起因しているとも言える。
 セレクトセールの1週間後に静内・北海道市場で行われたHBAセレクションセール7月当歳市場は、 上場頭数が年々増加していることから、 昨年を8500万円上回る7億705万円の取引総額を記録したため 「成功」 と見る向きも多いのだが、 売却率は昨年を5ポイント以上下回る34・8%に終わった。 セレクトセールの半分以下、 同セールでの社台グループの成績の3分の1に近い数字だった。 これが一般セールなら仕方がない部分もあるのだが、 「セレクションセール」 で3分の1しか売れないというのはあまりにも寂しい、 というよりもおかしい。
 セレクトセールのような "上客" が集まっていない北海道市場の場合、 全幅の信頼感は上場者から得られていないので、 どうしてもリザーブ価格が高めになるのは仕方がない面もあるが、 それにしても高すぎる。 まるでリザーブ価格を 「売却希望価格」 と考え違いしているのではないかと思えるほどだ。 これではいつまでたってもセレクトセールに追いつけないし、 日高の経済も上向いてこない。
 これは以前にも指摘したことだが、 セレクションセールのように上場馬を選抜するセールでは、 単に血統や馬体だけで選抜するのではなく、 リザーブ価格の設定も選抜の判断材料とするべきだ。 どんなに超良血馬であっても、 とんでもないリザーブ価格が付けられていて売れないのでは、 市場にとっては何の利益ももたらさない。 商品である以上、 価格はその質と同等の重要性があるはずだ。
 それはセレクトセールにもいえることで、 今回の売却率に満足することなく、 限りなく100%売却に近づくような施策が、 今後求められてくる。

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