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馬産地往来

2005年12月1日

道営存続の真実

「廃止」の言葉に悲観論飛び交う馬産地

後藤正俊

 11月29日に開催された北海道議会一般質問で、 約200億円の累積赤字を抱えるホッカイドウ競馬の存続問題について質問された高橋はるみ知事は、 「いますぐ廃止すれば生産者や地域社会への影響は大きく、 3年を限度に存続させることにする」 と述べ、 当面の存続期間を3年間とする方針を正式に表明した。
 だがこれには条件が付けられている。 それも 「この間に単年度の赤字額を半減させ、 単年度収支が均衡する見通しを得ることが必要。 達成できない場合は3年以内でも廃止する」 という厳しい条件なのだ。
 10月には知事の諮問機関である北海道競馬運営委員会が存続を前提として建議を提出。 これを受けて高橋知事も 「高いハードルを設けて存続させる、 という建議に基づいた結論を出す」 と語っていた。 今回の表明はまさにそれに基づいたものではあるのだが、 「廃止」 という言葉が盛り込まれたうえ、 はっきりとした数値目標、 期限が明示されたことで、 関係者には一層の緊張が走っている。
 この高橋知事の表明に対して、 反応はさまざまだ。 「3年間の猶予」 を喜ぶ声も多い。 「いつ廃止されるのかまったくわからない状況だと、 思い切った改革に手をつけられない。 だが3年間あれば、 いまからでも抜本的な改革に取り組めるし、 明確な数値目標があることで関係者も一丸となれる」 という意見もあった。 また、 なかには 「高橋知事の任期は07年4月。 その後の知事選がどうなるかはわからないが、 もし知事が替わってしまえばこの表明も反古になるかもしれない。 3年あれば状況もいろいろと変わるからね」 という意見を口にする人もいた。
 一方では、 「これでホッカイドウ競馬ももう終わりだろう」 と悲観的に考えている人の方がもっと多いし、 論理的でもある。 「赤字半減というが、 今年の単年度赤字は10~12億円 (今後の南関東などの場間場外発売の金額によって変わってくる)。 これを5~6億円にするためには、 単純に考えて最低でも20~25億円の売り上げ増をしないとクリアできない。 賞金などの経費削減はもう限界まで来ているのだから、 実質的には不可能な目標設定と言える。 この高橋知事の発言は、 あと3年間でホッカイドウ競馬を廃止する、 ということに等しい」 と断言する人。
 あるいは、 「簡単に収支均衡の見通しと言うが、 どこの地方競馬もそれができないから廃止に追い込まれたり、 存廃問題が論議されているのだ。 たった3年間で、 そんな夢のような見通しが立つはずがない。 これはもう地方自治体の手を離れた問題で、 JRAと農水省が地方競馬をどうするのか、 という一点の判断にかかっていること。 今回の表明は、 国の問題を道が国に対しては何も求めずに、 責任をすべてホッカイドウ競馬関係者に押し付けてしまったようなものだ」 と批判する声もあった。
 赤字額を3年間で半減させることは、 通常の方法では極めて厳しいが、 方法がないわけではない。 たとえば、 開催日数を半分にして夏季だけの開催にすれば、 地元馬はほとんどいなくなったとしても、 函館、 札幌開催中のJRA馬と、 3カ月間だけの短期遠征馬による競馬で、 1日当たりの売り上げは今年と変わらないまま、 赤字額を半減できるかもしれない。 また開催を、 道が所有している門別競馬場だけで行うことにすれば、 競馬場賃貸料を大幅に削減できる。 だがそんな競馬をファンが望んでいないことは明白で、 そうまでして 「ホッカイドウ競馬」 を存続させる意義はないだろう。 それならお祭りの草競馬で十分だ。
 高橋知事の決断を責めることはできないだろう。 北海道の財政は赤字再建団体への転落が差し迫っているほど切迫しており、 職員給与の大幅カットも発表されている。 そんな状況のなかで年間10億円もの赤字を出し続けているホッカイドウ競馬をこのまま存続させることができないのは当然だ。 それはどの地区の地方競馬も同じことである。
 あとは、 中央競馬と地方競馬といういびつな二元システムで行われている日本競馬を、 今度こそ一元化するという大胆な手術を、 一刻も早く行うことしか道は残されていないのではないだろうか。

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