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馬産地往来

2018年4月25日

「地方競馬強化指定馬制度」が始まる

後藤 正俊

 地方競馬全国協会(NAR)が昨年10月に創設を明らかにした「地方競馬強化指定馬制度」の指定馬第1弾が3月12日に発表された。平成29年度の指定馬は4頭となった。
 地方競馬強化指定馬制度とは、「地方競馬における強い馬づくり」の一環として、一定の成績を残した地方競馬所属馬について、その競走能力を向上させるために坂路などを備えた民間の育成施設を利用する場合に支援する制度。支援内容としては、今年1~6月までの間に「強化指定馬」(5頭以内)が民間育成施設などを利用して競走能力向上を図った場合に、馬主に対してその経費の一部(最大200万円)を支援する。
 29年度は2歳競走の成績により選定。全日本2歳優駿の1~3着馬または地方最先着馬、東京2歳優駿牝馬勝ち馬などを対象に、指定競走の着順ごとに選定順位をつけ、選定順位上位の地方所属3歳馬が優先的に選定された。選定馬は故障による引退などを除いて、今年12月まで地方競馬に在籍することが条件で、その間にJRAへ移籍した場合は補助金を返済しなければならない。30年度の詳細は今後、発表される。
 指定された4頭と選定条件となった実績は以下の通り。
▽ハセノパイロ(牡3、船橋・佐藤賢二厩舎)全日本2歳優駿(Jpn1)3着、NARグランプリ2017・2歳最優秀牡馬
▽ソイカウボーイ(牡3、船橋・岡林光浩厩舎)兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)3着
▽サザンヴィグラス(牡3、川崎・河津裕昭厩舎)北海道2歳優駿(Jpn3)3着
▽リコーデリンジャー(牝3、北海道・川島洋人厩舎)エーデルワイス賞(Jpn3)3着
 NARのような地方共同法人が、能力が高いことを理由に特定の馬だけを対象に支援するというのは極めて異例な措置だ。地方競馬はJRAのPATを利用した馬券販売が好調で年々売り上げが上がっており、NARにも資金的な余裕ができたということが大きな理由だろうが、それと同時に大きな危機感も感じていることが、思い切った支援策に踏み切るきっかけとなった。
 ダートグレード競走は年間54競走(JRA・地方合計)が実施されており、このうち40レースが地方競馬場での開催(30年は37レース)。G1・Jpn1は12レース(地方10レース、30年は7レース)が行われており、29年にG1・Jpn1を勝った地方馬はヒガシウィルウィン(ジャパンダートダービー)とララベル(JBCレディスクラシック)の2頭だけで、JRA勢が席巻する結果となっている。だがこの29年はむしろ地方馬の大健闘であり、28年はG1・Jpn1で地方馬は未勝利、かしわ記念2着で唯一連対を果たしたソルテがNARグランプリ年度代表馬に選出されている。28年以前の地方馬によるG1・Jpn1制覇は25年全日本2歳優駿のハッピースプリントがいるが、古馬のレースでは23年かしわ記念のフリオーソ(G1・Jpn1計6勝)まで遡ることになる。
 地方競馬でもそのフリオーソをはじめラブミーチャン、アジュディミツオー、トーホウエンペラー、メイセイオペラ、アブクマポーロなどそれぞれの時代を象徴するダートグレード競走で活躍した名馬はいたが、大半のレースでは4~7頭出走するJRA勢が上位を独占しており、地方開催で唯一G1の東京大賞典では昨年、1~7着をすべてJRA馬が独占した。レースによっては馬券上は実質5~6頭立てのようなこともあり、いくらPATの売り上げが好調でも、いずれはファンから見放されてしまうのではないかという危機感がNARにはある。だからといってJRA枠をさらに広げれば、地方競馬の存在意義が問われることになりかねない。
 ホッカイドウ競馬デビュー馬が南関東をはじめ全国で活躍している。24年に開設された屋内調教用坂路コースの効果が、これをさらに後押ししている。NARは「地方競馬の競馬場、調教場に坂路コースは現在、門別と小林分場にしかない。全競馬場・調教場に導入できればいいが、予算の問題などでそれは不可能。それならば民間の育成牧場の坂路コースを有効に活用すべきだと考えた。民間育成施設の預託料は1日1万円前後、1カ月で30~40万円のところが多いので、6カ月間で200万円を上限とする支援をする。オリンピック選手の強化指定を参考にして、システムを考えた」と説明している。
 NARのこの思い切った取り組みが、地方馬のレベルアップにつながり、ダートグレード競走、そして地方競馬全体を活性化できるかどうか、大いに注目していきたい。

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