重賞勝ち馬News

Stallions in Japan

会員の勝ち馬

取引馬データベース

よくある質問

日本競走馬協会について

バナーエリア

馬産地往来

2023年12月25日

大いに活気づくダート競馬

後藤 正俊

 今年の馬産地で最も印象に残った出来事として挙げられるのは、やはりセリ市の好調さだろう。日高軽種馬農協主催北海道市場のトレーニングセールを含めた5セールのトータルは、上場2746頭、売却2162頭、売却率78.73%、売上総額187億6347万円、平均価格867万8756円。2022年は上場2629頭、売却2059頭、売却率78.32%、売上総額165億1573万円、平均価格802万1238円だったので、売却率こそ大きくは変わらなかったが、売却頭数は103頭増、売上総額は約22億円増、平均価格は約65万円増となった。この1年間の物価上昇率は約3%と試算されており、同じ畜産農家でも和牛・乳牛・養鶏・養豚農家などは燃料価格や円安による輸入飼料価格の高騰、販売価格の低迷などの要因で経営危機に瀕しているケースが見られる。だが同じ畜産業でもサラブレッド生産牧場は、一部を除いて決して経営は楽ではないかもしれないが、平均売却価格の上昇率が物価上昇率を大きく上回る8.2%にまで高騰しているのだから、ひと息つけている状況だと言えそうだ。
 その要因としては、昨年度は1兆円を超えた地方競馬の売り上げが依然として好調に推移していることが大きい。低迷していた時期に減額された賞金もほぼ持ち直し、24年度には3歳ダート三冠など全日本的なダート競走体系の整備が本格化することもあり、北海道市場の各セールではヘニーヒューズ、シニスターミニスター、パイロ、ドレフォン、ホッコータルマエ、ダノンレジェンド、エスポワールシチー、ルヴァンスレーヴ、モーニン、ゴールドドリームなどダートで実績を残している種牡馬の産駒が高額で取引された。サマーセールでは、モーニン産駒は45頭、ホッコータルマエ産駒は38頭、ゴールドドリーム産駒は32頭、ルヴァンスレーヴ産駒は31頭の多頭数取引でセールを下支えした。今後は、これまでJRAデビューしていたレベルのダート血統馬が地方デビューに切り替えるケースも想定され、各地の地方競馬がさらに活性化、レベルアップされることは間違いない。
 日本のダート馬は今年、パンサラッサ(牡6歳、父ロードカナロア)がサウジC、ウシュバテソーロ(牡6歳、父オルフェーヴル)がドバイワールドC、デルマソトガケ(牡3歳、父マインドユアビスケッツ)がUAEダービーを制しBCクラシックで2着、大井所属のマンダリンヒーロー(牡3歳、父シャンハイボビー)もサンタアニタダービー2着でケンタッキーダービーに出走するなど、海外で輝かしい実績を残した。サウジC、ドバイワールドCの超高額賞金が話題になったが、個人的にはそれ以上に衝撃的だったのがBCクラシック2着であり、これはエルコンドルパサーの1999年凱旋門賞2着以上の価値だったのではないかと思っている。今年のJRA年度代表馬は原稿執筆時点(11月末)ではイクイノックスで確定と予想されるが、ダート競走体系の整備に伴い、年度代表馬も「芝部門」「ダート部門」に分けて表彰する制度改革を検討してはどうだろうか。ウシュバテソーロやデルマソトガケの快走にはそれだけの価値があったように思える。
 ダート馬にとって「海外」という選択肢が広がり、芝馬に負けない高額賞金獲得が現実になったことは大きい。以前のダート血統馬には、言葉は悪いが「潰しが効く」という意味で、もしJRAで芽が出なくても地方競馬に転厩して賞金を稼ぎ続けられるという価値観があったが、今年の海外競馬での活躍、ダート三冠の創設を契機に、JRA3歳クラシックや凱旋門賞を目指す芝馬と同様の大きな夢を持つことができるようになってきた。これは馬主層にも大きなアピールとなっているはずだ。
 国内競走でも、レモンポップ(牡5歳、父レモンドロップキッド)、メイショウハリオ(牡6歳、父パイロ)ら一線級が君臨している中、ドライスタウト(牡4歳、父シニスターミニスター)、キングズソード(牡4歳、父シニスターミニスター)、セラフィックコール(牡3歳、父ヘニーヒューズ)、オーサムリザルト(牝3歳、父ジャスティファイ)、ヤマニンウルス(牡3歳、父ジャスタウェイ)、オメガギネス(牡3歳、父ロゴタイプ)、そして地方のミックファイア(牡3歳、父シニスターミニスター)など次々に逸材が登場している。ダートのオープン馬は芝のオープン馬よりも年間出走回数で上回ることが多く、これらのスター、次世代スターの直接対決を何度も観られることは、競馬ファンの盛り上がりにつながっている。そしてそれが売り上げにつながり、再び馬産地に還元される好循環ができつつあるのではないだろうか。2024年のダート競馬の推移も引き続き、注目していきたい。

バックナンバー

過去の馬産地往来

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年