2025年6月25日
発展する2歳トレーニングセール
4~5月に2歳トレーニングセールが相次いで開催された。4月29日のJRAブリーズアップセール(JRA主催、中山競馬場)は76頭が上場され75頭が売却(牡40頭、牝35頭)。売却率は98.7%(前年100%)。売却総額は9億3137万円で前年の8億4766万円から8371万円、9.9%増。平均価格は1241万8266円で、前年の1115万3421円から126万4845円、11.3%増となった。過去10年の比較で売却総額は2019年(9億1260万円)を上回る最高額、平均価格は19年の1322万6086円に次ぐ2番目の高額だった。参加馬主数は286人(24年247人)、このうち来場馬主数は236人(同183人)と発表された。最高価格は騎乗供覧で12秒5~11秒0をマークしたティックルゴールド2023(牝、父ナダル)の5940万円。ステイゴールド産駒の母はJRA3勝で、母の弟妹にはアキトクレッセント(武蔵野S3着)、アンジュデジール(JBCレディスクラシックなどダートグレード競走4勝)、アルドーレ(平安S4着)などがいる。日本軽種馬協会供用種牡馬の産駒が多く上場され、デクラレーションオブウォー産駒は4頭売却で平均1402万5000円、マクフィ産駒は5頭売却で平均761万2000円、ミスチヴィアスアレックス産駒は5頭売却で平均605万円、アニマルキングダム産駒は2頭売却で平均1347万5000円、ノーブルミッション産駒は3頭売却で平均788万3333円、バゴ産駒が1頭売却で1045万円など堅調な成績となった。
5月20日のHBA北海道トレーニングセール(日高軽種馬農業協同組合主催、札幌競馬場)は94頭が上場され68頭が売却(牡38頭、牝30頭)。売却率は前年より1.4ポイント上昇の72.3%。売却総額は5億446万円で前年の4億6574万円から3872万円、8.3%増。平均価格は741万8529円で、前年の763万5081円から21万6552円、2.8%減。最高価格は公開調教で11秒7~10秒9をマークしたテオレーマ2023(牡、父コントレイル)の6820万円。同セールでの過去最高価格だった。母はJBCレディスクラシックなどダートグレード競走3勝馬で、同馬が初子。注目のコントレイル初年度産駒で、母系、調教時計からも当然と思える高額落札だった。これに次いだのがタマモキラメキ2023(牡、父バンブーエール)の3520万円。公開調教タイムは11秒2~10秒6だった。父バンブーエールは25年の種付料が50万円ながらキャッスルトップ、ダテノショウグンなど地方競馬で活躍馬を多数輩出。母は地方・名古屋3勝馬で同馬が2番子。公開調教時計、馬体の良さが高額落札につながったトレーニングセールらしい結果だった。
5月26日の千葉サラブレッドセール(千葉県両総馬匹農業協同組合主催、船橋競馬場)は49頭が上場され48頭が売却(牡30頭、牝18頭)。売却率は98.0%(前年100%)。売却総額は15億9841万円で、前年の14億2582万円から1億7259万円、12.1%増。平均価格は3330万208円で前年の3033万6595円から296万3613円、9.8%増。売却総額、平均価格とも過去最高額を記録した。同セールでは一昨年から市場への輸送や当日の公開調教でのダメージを防止するため、強い調教は4月下旬に実施してVTRで公開。当日は軽めの調教披露を行う形式になっている。最高価格はフクシアの23(牡、父ナダル)で8800万円。4代母オカクモはテンポイントの母ワカクモの半妹で、桜花賞馬ダイアナソロンの祖母。星若~月丘に遡る約100年の歴史を持つ日本古来の牝系だ。昨年のファーストシーズンリーディングサイアー(総合)のナダルは、産駒がJRAブリーズアップセールに続いての最高価格馬となったように、その勝ち上がり率の高さで人気を呼んでいる。
セリ市全体が右肩上がりの成績を続けていることもあるが、趣の異なる3つのトレーニングセールの取引成績もほぼ前年成績を上回る好況となった。JRAセールからはセイウンワンダー、エイシンオスマン、ダイワパッションなど、HBAセールからはヒシミラクル、モーリス、ジャガーメイルなど、千葉セールからはベラジオオペラ、オメガパフューム、アスクワイルドモアなど、セール出身の活躍馬が多く誕生していることはもちろんだが、購買者視点で考えると2歳4~5月の時点で故障なく仕上がっている馬はリスク軽減もあるし、何よりも馬房のひっ迫状況が続いている中で比較的入厩しやすいと言われている点も大きな魅力になっているのではないだろうか。以前は「1歳セールで売れ残った馬を調教して上場する」というイメージもあったトレーニングセールだが、千葉セールのように社台ファームの良血馬が多数上場されたりするようになって、明らかに様相が変わってきており、今後はさらに発展していきそうだ。