2025年8月25日
今年も記録ずくめの2日間
今年のセレクトセールも記録ずくめの2日間となった。1日目終了後に開かれた日本競走馬協会吉田勝己理事(ノーザンファーム代表)、2日目終了後の日本競走馬協会吉田照哉会長代行(社台ファーム代表)の記者会見から2日間のセールを振り返る。(インタビュー内容を一部要約)
吉田勝己さんは「セールの出だしが凄かった。その勢いがずっと続いた印象だ。昨日(13日)の下見が200組以上あり、去年までは150組くらいが最高だったので、それだけ今年は凄いと思っていたが、凄いを通り越している。とにかく馬の質が高かった。世界トップレベルの繁殖牝馬の多くが日本に入ってきているし、管理も素晴らしい。キタサンブラック産駒は凄く高くて、米国のジョン・スチュワート氏(ジャパンC出走のゴリアットの馬主。名義はレゾリュート・ブラッドストック)も落札した。日本で走らせるのか、キタサンブラック産駒はダートも走るので米国で走るのか判らないが、世界的に評価されているということ。管理のレベルも上がっている。良い馬はセリでなければ買えないという流れを作ることが重要だ」と、セレクトセール創設時からの目的だった「トップレベルの馬をほぼすべてセールで取引されるようにすること」が順調に進んでいることを強調した。「開催期間延長の考えは」との質問には「以前に3日間開催をしたことがあるが、購買者が帰ってしまったので。このままの形で質をさらに高めて、凝縮して行う方が良いと思う」との考えを示した。
吉田照哉さんは「こんな凄いセリが現実にあったのかという感じだ。世界中の人が驚くのではないか。外国だと高い馬はメチャクチャ高いことがあるが、平均的にこんなに高い、1億円以上が何頭も出るようなセールは世界にはない。日本の競馬の層の厚さというか、お客さんの層の厚さが際立った」と2日間を総括した。種牡馬に関しては「イクイノックスの初年度産駒が注目を浴びたが、キタサンブラック、キズナ、コントレイルなど種牡馬の層が厚い。キタサンブラックが一番高いのは正当(な評価)だと思う。産駒がダービーも勝った。英語で言うとプルーヴンサイアーで、キタサンブラックはその地位をすでに確立した。世界的に見ると子どもがすでに走っていることの価値が高い。体が大きくて、品があって、脚も丈夫そう。最初の頃は大きすぎるという噂があったが、これだけ走れば(まったく問題ない)。来年の種付け料がまた上がるかもしれないが、子どもが走って、種付け料が上がって、子どもが高く売れる世界。イクイノックス産駒は当歳なので(評価は)まだだが、繁殖牝馬の質は良いし、キタサンブラック産駒と同じでスラッと脚が長くて『通りが良い』という印象で成功すると思う」と分析した。
繁殖牝馬についても「セレクトセールがずっと売れているので、思い切って繁殖牝馬に投資して、その子どもたちがちゃんと高く売れるという流れもある。だから繁殖レベルが凄く高い。社台ファームも一生懸命にやっているが、それ以上の馬をみんな海外からよく見つけて買ってきている。日本で5代、6代と生き残っている血統もみんなレベルが高く、みんなそれを見逃さない」と人気種牡馬の産駒だけでなく、全体的な血統レベルが高まっていることがセール好成績の大きな要因だと強調した。
増え続けている購買者に関しては「新しい馬主さんが高額馬を買ってくれることで市場を支えている。最初に藤田晋さんが入ってきたときは『わぁ、藤田さんが来た』と驚いたが、そういうクラスの人が次々に入ってきてくれる。セレクトセールの常連の方も大変に強いので『そう簡単に負けるか』という感じ。高額層はさらに高くなったが、中間層まで高くなっている。以前は3千~4千万円だったのが6千~7千万円になっているとよく言われる。以前は馬を買うときに大事なのは採算かと思っていたが、最近は違うようだ。『その馬が欲しい』という気持ちで競り上がる。JRAの賞金が高いとはいえ、採算を考えたらこんな金額はあり得ないとも思う。馬主が増えているのは、競馬に入って来たいという魅力があるのだと思う。野球も大谷(翔平)さんのおかげで盛り上がり、北海道のエスコンフィールドでの日本ハムの試合はいつも満員になっている。『エンターテインメント全体が日本で盛り上がっているのは、平和であることを際立たせているのではないか』と言う人がいた。競馬はいつも人気があるが、落札額が高いとマスコミで走った、走らないと騒がれて、野球の年俸の高い選手が注目されるのと同じでさらに盛り上がっている」。
さらに「バブルと言えばバブルなのだろうが、それだけ魅力があれば多少損をしても、成功された方が良い馬を持ちたいという気持ちが勝っているということ。インターナショナルレーティングで115ポンド以上の馬が日本は56頭で米国や英国よりも多い。たまたま1頭だけではなく、公平に評価して日本の馬のレベルがそこまで来ている。日本で強くて外国で話にならないのでは通用しない。いろんなスポーツがそうだが、日本の選手が外国で活躍するとみんなが夢中になってくれる。バブルというよりもみんなが盛り上げたエンターテインメントとして優れているということではないか。日本の馬が強すぎると悲鳴が聞こえてくる感じで、値段が高いのも仕方がないかなと思う。血統だけでなく、調教の仕方、育て方など努力してきた」とレベルの高さが価格に反映されているとした。
セレクトセールの影響として「日高のセリにもこの流れは続く。セレクションセールだけでなくサマーセールも高くなると思う。もっと高くなってもいい馬は日高にもたくさんいるはずで。みんなもそれを探すのではないか。セレクトセールでは評価通りの値段がつく馬が、日高では見過ごされている馬もいる」と馬産地全体への波及効果にも期待した。