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馬産地往来

2024年8月26日

新記録ラッシュのセレクトセール

後藤 正俊

 今年もまたまた新記録ラッシュとなったセレクトセールの2日間。例年通り、セール後の日本競走馬協会・吉田照哉会長代行、吉田勝己理事のインタビューからその成功要因を分析する。(インタビュー内容は一部要約)
 初日の1歳セール後、吉田勝己理事は「購買登録者数が昨年より1割多く、新しい人も多くいて、盛り上がるとは思っていた。セリ前の馬見せにも本当に多くの人に来てもらった。それでも、毎年そうなのだが、今年もすごい数字が出て驚いている。ここまでいくとはなかなか考えられないことだった。株価が高いのも影響しているのかもしれないが、競馬が注目され、日本馬が世界で成績を残していることも大きい。馬は1頭だけで同じものがいないので、欲しい人が2人いるとすごい結果になる。上場馬全体のレベルが上がり、新しい種牡馬がどんどんと出てきたことで、満遍なく高価格になった。セレクトセールはサラブレッドデイリーニュースなど海外のメディアでも大きく取り上げられていて、外国人購買者も多くなってきた。日本で馬主登録をする外国人も増えてきて、いずれは競馬に国境がなくなる時代が来るだろう」と話した。
 2日目の当歳セール後に会見した吉田照哉会長代行は2日間の総括として「考えられないくらいに強いセリになった。競馬を取り巻く環境が恵まれているのだなと改めて感じた。セレクトセールから、今年は日本ダービー馬(ダノンデサイル)も出たし、ケンタッキーダービーもああいうレース(フォーエバーヤングが僅差3着)で、それがオーナーの心証を刺激したのではないか。ダノンの馬主さんも大きなところを競っていたし、他の方も『今度は俺の番だ』と競ったのだと思う。いかにも高いという馬ばかりでなく、その下のクラスも活発で、ひと声で落ちた馬はあまりなく、セリが終わるのか心配になったほどだった。購買者が増えてなかなか買えず、次の馬、次の馬と買いたい人が溜まっていき、来たからには1頭は買いたいなと最後まで残ってくれた。それだけ競馬が楽しく、魅力的なものだということに尽きると思う。馬主を一度始めた人は、なかなか辞めないものだ。コロナ禍が終わり、スタンドに観客が戻ってきて、そこで自分の馬が走るというのは、社会的に成功された人たちにとって魅力的な趣味なのだと思う。新しい購買者が増えているのは『ウマ娘』などゲームの影響もあるだろうし、クラブ法人からスタートして馬主になる人も増えている。セレクトセールは日本最高峰の馬を提供する場所なので、ダービーを勝ちたい、大きいレースを勝ちたいと思って、ここで馬を手に入れようと思って頂けたのだと思っている」と競馬そのものの魅力が成功の根底にあることを示唆した。
 また、「ディープインパクト、キングカメハメハの産駒がセールからいなくなったが、何かがまた現れてくる。競馬とはそういうもので、世界的にもそういうことが繰り返されてきている。エピファネイアは産駒が高くなったが、デアリングタクト、エフフォーリアが走って良い繁殖牝馬を集めたので、今回はそうして生まれた産駒が高く取引された。そういうサイクルになるものだ。コントレイルはまだ産駒が走っているわけではないが、出来が非常に良い。それほど大きくなくコンパクトだが、大きく見せている。体の張りやツヤも素晴らしい。交配牝馬のレベルも高く、これで走らないことは経験上、考えられない。バーイードやフライトラインといった海外のセンセーショナルな種牡馬の産駒もしっかりと価格をつけていた。来年はイクイノックスの子が生まれ、次から次へと夢を与えてくれる種牡馬が登場する。オーナーにとって夢を満足させてくれるのがその馬たちなのだろう。この価格だと採算を取るのは、よほどクラシックを勝ったり、種牡馬になったりしないと無理だと思うが、日本よりも賞金がはるかに安い外国でもとんでもない価格で取引されてきた。私たちは夢を売っているのだなとつくづく思う。1頭だけ上場されたマカヒキの産駒はうち(社台ファーム)の生産馬だが、金子オーナーが自分の子どものように思っていて絶対に欲しくて、この価格(1億5000万円、税別)にまで上がったのだろう。種付け料は50万円だったが、本当に誰が見ても良い馬だと思う出来だった。さすがにこれだけの新記録が今後も毎年続くとは思えないが、かといって悲観すべき材料もない。新しい馬、新しいオーナーはどんどん出てくるので、そんなに値崩れするとも思えない。馬だけでなく、扱う人もレベルが上がってきて、みんなでしっかりと準備してきている。日本もここまで来たかという思いだ。大谷選手のように、良い馬が世界でさらに活躍すると、競馬はもっと盛り上がる。ますます日本の競馬が盛んになると良いと思っている」とセレクトセールが日本競馬の盛り上げに一役を買っていることを改めて感じている様子だった。

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