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馬産地往来

2016年8月25日

驚きに満ちたセレクトセール2016

後藤 正俊

 今年もまたセレクトセールは別世界を見せてくれた。英国のEU離脱騒動で世界的な経済不安、日本でも円高・株安が進行している状況は、日本と世界の富裕層が訪れるセレクトセールにとって決して好ましくはなかったはずだ。だがこれまでも、売上を伸ばし続けてきたセレクトセールには、ほとんど関係がなかったようだ。
 初日の1歳馬セールは1億円以上の馬は14頭、売上は81億3060万円で、昨年の71億450万円を大きく上回り過去最高を記録した。2日目の当歳セールは1億円以上が9頭。昨年の60億6900万円を上回る68億1150万円。2日間トータルで149億4210万円は、昨年の131億7350万円を17億7000万円近く上回る記録更新となった。この4年間で50億円近い増加となった。
 この結果を受けて囲み取材に応じた日本競走馬協会・吉田照哉会長代行は「150億円近いという数字は、売っている方が驚いている。何でこんな数字になるのか、いろいろと分析しないと判らないが、エイシンヒカリがイスパーン賞ですごい勝ち方をして、ラニが米国三冠レースで善戦した。世界に通用する馬が日本にいるということが、購買者の気持ちを高めたのかもしれない。日本ダービーを勝つことは購買者の大きな夢だが、凱旋門賞やキングジョージを勝つこともまた現実的な夢になってきているのではないかと思っている。馬主の気持ちも世界へ向けて羽ばたいている」と日本馬の能力向上が最大の要因との見解を示した。
 価格高騰に関しては「やはりディープインパクトが大きい。日本ダービーで1~3着独占に加えて、エイシンヒカリも外国で勝った。ディープインパクトに交配するために、米国の2歳チャンピオンやニュージーランドやアルゼンチンの牝馬チャンピオンを輸入して、その産駒がセレクトセールに登場してきた。そのような再投資が成功して、ディープインパクト産駒の良い馬なら2億円という価格が当たり前という雰囲気にもなっていた(1歳3頭、当歳4頭)」とディープインパクトがかつてセレクトセールを異次元な世界に引き上げた父サンデーサイレンスと同様の存在になっていることを確信していた。
 外国人購買者については「購買者の外国人登録は24人で1人しか増えていないが、クールモアも来て競ってくれたし、カナダの著名な馬主も来てくれた(「トップライナー2の2015」=めす、父ディープインパクト=を1億2500万円で落札したフィプケ氏)。本気で買いに来た外国人購買者が増えてきた印象だ。そんな著名馬主でもなかなか思った通りには購買できないほど価格が高かったようだが、外国人が目の前で日本馬を見ているので、より安心してセリに参加できるようになってきたのではないか。香港の馬主が香港で活躍したロードカナロア産駒を購入したが、香港では走らせずに日本かヨーロッパで走らせたいと言っていた(1歳のロードカナロア産駒2頭を落札したハン氏)。一段と進んだ国際化の中にこのセールが組み込まれていた。血統面を考えても、日本ではサンデーサイレンスの血が溢れているが、ヨーロッパではガリレオとかデインヒルが溢れて困っている。他の血統を欲しがっている馬主の購入先として、セレクトセールを入れてもらえるようになってきた。さらにビックリするような繁殖牝馬を買っているし、クールモアが来たぐらいだから他の大手馬主が参入してくるかもしれない」と国際化の進展がセールの下支えとなっていることを改めて実感していた。
 その上で今後についても「今年は英国の問題で円高、株価下落という厳しい状況だった。高額な馬を購入する馬主の多くは株を持っておられるので、影響はあるだろうと思っていたが、結果は全く関係がなかった。馬を購入する予算は別に用意しているのだろう。新しいオーナーも活発に競って、それに常連も加わって、どんどんと競り上がっていた。繁殖牝馬のレベルが上がって、馬の出来も良くなっていた。夢を売っている商売なので、その夢を提供できるセールができていたと思う。競馬は中央も地方も売上が伸びていて、競馬界全体が明るいムードに包まれ、希望に満ちている。セールでは最高レベルの馬が誰にでも買え、厩舎がしっかりと預かり、育ててくれる。厩舎スタッフの考え方や技術も高い。すべてがうまくいっている。セレクトセールが今後もずっと右肩上がりで売上が伸びていくかどうかは判らないが、少なくともこのムードはセレクションセールにはつながるだろう(セレクションセールはセレクトセールの1週間後の7月19日に行われ、売却総額23億3880万円、売却率73.52%は1歳馬市場のみとなった2011年以降で最高の数字を記録した)」と競馬界全体に明るいムードが続いていくことを予言した。

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