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馬産地往来

2013年4月25日

マイナー種牡馬 台頭の謎

「丈夫系種牡馬」大活躍の背景

後藤 正俊

 2013年の3歳クラシック戦線がスタートしたが、今年はやや風変わりな展開を見せている。「あれっ」と思うような血統を持つ馬が主力を形成しているからだ。
 牝馬路線では、フィリーズレヴューを快勝したメイショウマンボはスズカマンボ産駒。父は現役時代に天皇賞(春)を制しているが、重賞制覇は朝日チャレンジCを含めて2勝だけ。他のGIではダービー5着以外は掲示板にも載っていない。数多くいるサンデーサイレンス直仔の種牡馬陣のなかでも、競走成績、血統とも突出した存在ではなかった。
 「日高繋養のサンデーサイレンス産駒でGI勝ち馬」という肩書きで種牡馬入りし、供用後2年間は90頭以上と交配するなどまずまずの人気を集めたが、3~4年目は70頭台、5年目は34頭まで落ち込んでいる。種牡馬成績も目立たず、デビュー4世代目でJRA重賞勝ちはメイショウマンボが初めてだった。母メイショウモモカはグラスワンダー産駒で、現役時代は12戦未勝利。渋い血統が多い「メイショウ軍団」のなかでも、一際地味な血統といえる。
 また、フィリーズレヴュー2着のナンシーシャインはブラックタキシード産駒(母ダーリントウショウは未出走)。フェアリーSとアネモネSを連勝したクラウンロゼはロサード産駒(母ヒシアスカは4勝、初勝利は3歳5月)。デビュー2戦目でフラワーカップを制した新星サクラプレジールはサクラプレジデント産駒(母サクラプレステージは3勝、初勝利は3歳6月)。
 この3頭の種牡馬はいずれも現役時代、JRA・GIを勝っていない。そして冒頭のスズカマンボを含めた4頭とも、サンデーサイレンスの直仔種牡馬という共通点がある。
 同じくサンデーサイレンス直仔のエイシンサンディ、ゴールドヘイロー、ニューイングランド、ミスキャストなども競走成績と種牡馬成績はかけ離れているし、いまやディープインパクトと並んでサンデーサイレンスの最良後継種牡馬といわれているステイゴールドにしても、GI制覇はデビュー50戦目、7歳12月の香港ヴァーズが初タイトルで、国内でのGI勝ちはない。サンデーサイレンス直仔種牡馬に関しては、競走成績はあまり関係ないのかもしれない。
 自身がJRA・GI勝ちがないのに産駒がGIを制した種牡馬は、グレード制導入後、ミラクルアドマイヤ(産駒カンパニー)、トウショウペガサス(産駒グルメフロンティア)、サクラトウコウ(産駒ネーハイシーザー、)、ヤマニンスキー(産駒ヤエノムテキ)しか出ていなかったが、昨年はミスキャスト(産駒ビートブラック、天皇賞・春)、ローエングリン(産駒ロゴタイプ、朝日杯フューチュリティS)と一挙に2頭も誕生した。
 そのローエングリンにGI勝ちをもたらしたのが、牡馬クラシック路線でトップに立つロゴタイプ(母ステレオタイプは22戦2勝)である。ローエングリンは8歳時に中山記念を制するなど息の長い活躍をした馬だったが、以前なら高齢まで活躍を続けた馬は種牡馬としてあまり歓迎されていなかった。2歳時に素質の高さを見せた馬のほうが?才能?を伝えるという面で種牡馬に適していると考えられていたからだ。しかも日本ではこれまで成功していなかったサドラーズウェルズ系である点も特徴的だ。
 JRA平地GIは年間22レースも組まれている。いまや、GIを1~2勝した程度では種牡馬入りすることもままならない状況。種牡馬入りしても、交配牝馬を集めるのには当然苦労する。そのなかでGIタイトルのない種牡馬からこれだけ活躍馬が出現していることは驚異的であると同時に、日本競馬の変化が感じられる。
 あくまでも仮説だが、調教レベルが高まってきたことによって、どれだけそのトレーニングに耐えていけるかという?丈夫さ?が求められるようになってきたのではないだろうか。ロゴタイプは社台ファームでのハードトレーニングの育成時から1日も調教を休むことはなく、2歳春の時点で「いますぐにでもデビューできる仕上がり」と言われていた。牝馬のクロフネサプライズ(父クロフネ、母アイアンブリッジは佐賀13戦1勝)も同様なタイプだった。
 これまで人気だった「天才系」ではなく、派手さでは見劣る「丈夫系」の種牡馬、繁殖牝馬が高く評価されるようになれば、ファンにとっても競馬の魅力がまた大きくなっていくはずだ。

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