重賞勝ち馬News

Stallions in Japan

会員の勝ち馬

取引馬データベース

よくある質問

日本競走馬協会について

バナーエリア

馬産地往来

2020年8月25日

セレクトセールの意義ある成功

後藤 正俊

 セレクトセール2020が無事に終了した。売り上げの詳細は他記事に任せるが、開催自体が危ぶまれていた中、2日間で187億6100万円と昨年度に次ぐ史上2位の売り上げを記録したことは、馬産地全体を考えると大きな意義があることだったとは思う。ライブ中継解説者やスポーツ紙記事が「驚愕の売り上げ」と絶賛するのも当然のことだろうが、何よりも、この原稿執筆時点でセール終了後3週間が経過して来場者・関係者からの新型コロナウイルス陽性者は確認されておらず、千歳、札幌市民からも、来場者・関連者との接触による感染が報告されていないことで、「無事終了」「成功」と初めて言うことができたように思える。7月末現在の感染状況を考えるとかなり綱渡りの開催執行だったとは思うが、事前の懸命な準備が報われたと言えるだろう。関係者の皆さん、本当にお疲れ様でした。
 例年通り、セールの状況を吉田勝己ノーザンファーム代表、吉田照哉日本競走馬協会会長代行のインタビューから振り返ってみたい。
 初日の1歳セール終了後に吉田勝己氏は「始まるまで、この情勢の中でどうなるのか、不安で一杯だった。とにかく開催できればいい、開催できないと生産界も競馬社会も回っていかないという思いだった。絶対に開催するぞという思いで、みんなが準備をしてきた。購買者の不安を解消しないと納得して購買して頂くことができないので、ギリギリまで万全の対策を練り、ようやく間に合った」と開催までの苦悩を語った。
 売り上げについては「とにかく驚きの連続。去年までもすごい数字だったが、今年は外国人バイヤーをはじめ来場できなかった購買者も多かったし、事前の牧場での下見も6月19日以降で、直前まで行えなかった。しかも消費税も増税されている。その中でこれだけの売り上げを記録できたのは、競馬の持つ力だと思う。無観客でも優秀な売り上げを記録し続けている日本競馬の底力だと思いますよ」と競馬の持つ力を強調した。
 産駒12頭の落札で24億9700万円の売り上げとなったディープインパクトに関しては「世界中のクラシックを獲ってしまうような馬ですから。1歳取引価格の記録を更新した『シーヴの2019』、『フォエヴァーダーリングの2019』は世界トップクラスの馬だと思っていたし、これが産駒を購入できる最後のチャンスかもしれないという思いも購買者にはあったと思う。ディープインパクトの最後の世代は頭数が少ないが、もしかしたら1頭くらいは来年の1歳セールに上場できるかもしれない」と高価格に納得の様子だった。
 コロナ対策として行われた電話による入札に関しては「1歳セールは4頭が電話ビットで落札され、他にも競っていた場面が見られた。情報提供などいろいろな形で世界中と繋がることは重要だが、実馬をまったく見ないで購買するというのは難しいのではないか」と完全な電子・電話入札の仕組みについては否定的な見解を示した。
 2日目の終了後にインタビューを受けた吉田照哉氏は「当歳の売り上げが去年よりも下がったのは、ディープインパクト産駒がいなくなったことも影響していると思うので、コロナの影響がどの程度あったのかを見極めるのは難しい。この厳しい環境にもかかわらず、皆さんによく競って頂き、良い馬には高額の価格が付けられた」とセールを振り返った。
 そのディープインパクトに関しては「アメリカでも、ノーザンダンサーの時代はセリ市で1000万ドル以上の馬が出たが、その後は300~400万ドルの時代になった。いままでは『クラシックを狙うにはディープインパクト産駒』というような方程式が見られたが、これからは何が出てくるのか誰も判らない。超高額馬は出にくくなってくるとは思うが、それだけに良い馬を出していくことがより重要になってくる。セレクトセール上場馬の繁殖牝馬のレベルはとてつもなく上がっている。母馬、兄姉がG1馬というのがこれほど多いセールは世界的にも類を見ない。すごく投資をしてきたので、ディープインパクトがいなくなっても、全体的にはそれほど大きな影響は出ないのではないか」と来年以降のセールを見据えた。
 その上で「エピファネイアは初年度からクラシックホースを出し、キズナもしっかりと走っている。1歳が初年度産駒のキタサンブラックも、大き過ぎずに品のある、足さばきの軽い産駒が目立っていた。当歳のサトノダイヤモンド産駒も評価が高かったし、海外供用種牡馬ではサクソンウォリアーとかジャスティファイなども出ていた。楽しみな種牡馬は多い。社台グループだけでなく、日高の生産者も『これは』と思う馬を持ってきてくれている。昨年はセレクトセール取引馬が海外G1を5勝した。日本馬が強いことはみんな判っているので、ディープインパクト産駒がいなくなっても、海外からバイヤーは来てくれる。今回の開催で、競馬を愛している人がたくさんいることを実感できた。みんなで盛り上げて、より楽しめる市場にしていきたい」と抱負を語った。

バックナンバー

過去の馬産地往来

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年