2026年2月25日
種牡馬界の「対立軸」
昨年放送されて話題になったドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」には「継承」「克服」などいくつかのテーマが盛り込まれていたが、その中には「日高産馬による打倒・北陵ファーム」という構図もあった。「北陵ファーム」のモデルは、ドラマを観ていた誰もが想像する通り社台グループであろう。現実の馬産界では様々な協力関係もあり、このような単純な「対立関係」にあるわけではないが、そこはテレビドラマの世界。視聴者の判りやすさが必要な点は理解できるし、日高(もちろん社台グループ以外の胆振なども含めて)の生産者が「社台に負けない馬を作りたい」という思いを抱いていることも確かだろう。そうした思いが、かつての早田牧場をはじめ、下河辺牧場、ビッグレッドファーム、ノースヒルズ、ダーレー・ジャパン・ファームなどから多くの名馬が輩出されてきた一因にもなっていた。
2025年の生産牧場リーディング(JRA+地方)では1位ノーザンファーム、2位社台ファーム、3位社台コーポレーション白老ファームと、生産頭数も多い社台グループ各牧場が上位を占めたが、種牡馬成績を見るとやや様相に変化が生じてきているように感じられる。リーディングサイアー(JRA+地方)の1、2位は24年と同じ1位キズナ、2位ロードカナロアだったが、3位には24年10位のキタサンブラックが上がってきた。いずれも社台スタリオンステーション(以下、スタリオンステーション=SS)供用種牡馬だが、生産牧場はそれぞれノースヒルズ(新冠)、ケイアイファーム(三石)、ヤナガワ牧場(門別)と日高産馬である。4位ドゥラメンテ(ノーザンファーム生産)は21年に死亡しており、5位ドレフォンは輸入種牡馬。6位にエピファネイア(ノーザンファーム生産)が入っているものの、7~20位で社台グループ生産の社台SS供用種牡馬は11位ルーラーシップ、12位レイデオロ、16位サートゥルナーリアだけしかいない。7位リオンディーズ(ブリーダーズSS)はJRA賞最優秀3歳牡馬ミュージアムマイルを、8位リアルスティール(ブリーダーズSS)はJRA年度代表馬フォーエバーヤングを送り出している。
25年の種付頭数ランキング(下表)を見てみると、1位パレスマリス、2位レモンポップ、10位タワーオブロンドン、25位サンダースノーの供用先はダーレー・ジャパン スタリオン コンプレックス。パレスマリスは導入初年度の24年(262頭)に続いて2年連続のトップとなった。5位ジャスティンミラノ、17位ピクシーナイト、18位リアルスティールはブリーダーズSS、9位カフェファラオはアロースタッド、16位ニューイヤーズデイ、22位チュウワウィザードは優駿SS、26位タイトルホルダーはレックススタッド。ちなみに24年2位のダノンレジェンド(249頭、25年128頭)はイーストスタッド供用で、人気種牡馬が主要種馬場に分散していることがうかがえる。
26年の国内初供用種牡馬としては、1年リースだがアメリカンファラオ(種付料400万円)がJBBA静内で供用される。米国三冠馬で15年エクリプス賞ではジョンヘンリー(1981年)以来、満票で年度代表馬に選出された名馬であり、米国三冠馬が日本で供用されるのは初めて。同馬の産駒はすでに日本でもカフェファラオ(フェブラリーS2回など)、ダノンファラオ(ジャパンダートダービー)、ルクソールカフェ(武蔵野S)、ペルアア(マリーンC)らが実績を残しているだけに、JBBA供用のため手頃な種付料設定もあってかなりの頭数の交配申し込みが予想されている。その他、ウシュバテソーロとジャスティンパレスはアロースタッド、メイショウハリオはイーストスタッド、ソウルラッシュとソールオリエンスはブリーダーズSS、マッドクールは優駿SSで供用される。社台SSもベラジオオペラを供用するが、1月末時点で決まっているのはこの1頭だけで、他の種馬場との人気の差はさらに縮まってくるかもしれない。
社台グループ生産種牡馬とそれ以外の種牡馬、社台SSとその他のスタリオン施設の供用種牡馬という「対立軸」で種牡馬界を見てみるのも、なかなか興味深いものだ。