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馬産地往来

2005年2月1日

セール出身馬が大活躍する背景

馴致トレーニングで「英才教育」

後藤正俊

 セレクトセール取引馬が絶好調だ。 04年のJRA賞表彰では、 年度代表馬に輝いた最優秀古牡馬ゼンノロブロイをはじめ、 キングカメハメハが最優秀3歳牡馬、 アドマイヤグルーヴが最優秀古牝馬のタイトルを獲得した。 年が明けてからもハットトリックが京都金杯、 東京新聞杯を連勝してマイル路線の頂点に立つ勢いだし、 3歳ではディープインパクトが若駒Sで強烈な強さを見せて3冠レースの最有力候補に躍り出た。 異色なところではホッカイドウ競馬からJRA入りしたモエレアドミラルもセール出身馬だ。
 あれだけ良質馬が多数上場されるのだから当然のこと、 と思う人もいるかもしれないが、 取引頭数はもっとも多かった昨年でも234頭。 すでにデビューしている02年以前は170~180頭台である。 これは日本のサラブレッド生産頭数の50分の1程度にすぎない。 またいくらサンデーサイレンス産駒が多いといっても、 取引されるのは20頭程度。 こちらも生産頭数の7~8分の1程度である。 それを考えると、 セール出身馬の活躍が突出していることがよくわかる。
 これはやはり当歳でセールに上場することと関係があると考えるべきだろう。 セレクトセールで少しでも高い評価を得るために、 上場者は多くの努力をしている。 セレクトセールが開催されるのは7月。 4月生まれの馬だとすると生後3か月の赤ちゃんだ。 生後3か月目までに、 馬運車に揺られて慣れない環境に連れて行かれても平常心を保ち、 きちんと立つことができ、 厩務員の指示通りに歩くように馴致するためには、 誕生直後からトレーニングを始めることになる。 産毛が残っていると毛づやが悪く見えるので、 ブラッシングも熱心に行う。 また脚の湾曲などがあったらすぐに矯正する。 セールに上場しない馬ならほとんど手をかけない時期に、 これだけ懸命に手を掛けている。
 これは馬に限らず、 どんな動物であっても、 また人間でも、 幼少のときに躾 (しつけ) られたことは忘れないものだ。 もちろんあまり厳しい躾を行うとトラウマになってしまったりすることもあるだろうが、 きちんとしたトレーニングさえ行えば、 たとえ猛獣であっても馴致させることができる。 まだ自我がそれほど芽生える前に、 人間との深い関係を理解させることは、 絶大な信頼関係を生むことになる。 馴致トレーニングは早くから行うに越したことはないのだ。 その面でセレクトセール出身馬は理想的な育成を行っていると言えるのかもしれない。
 昔の日本の競馬だったら、 相手に負けない気迫とスピードがあれば活躍することができたかもしれない。 だが、 いまの競馬は騎手との折り合いがもっとも重要視されている。 人間 (騎手) の指示通りに動けることが、 ゼンノロブロイ、 キングカメハメハ、 ハットトリック、 ディープインパクトらのような、 どんなペースでも折り合って、 どこからでも仕掛けられるような万能な馬を作り上げたと考えることもできるだろう。
 以前は、 海外から来日した競馬関係者は日本馬を見て 「人間を怖がっているようだ」 とコメントすることが多かった。 欧州ではパドックからコースまで観客席を馬が通っていく競馬場もあるが、 日本では馬が暴れて事故を起こしたら大変だということで、 とても考えられないことだった。 これは 「文化の違い」 とも思われていたが、 じつは馴致の違いだったのかもしれない。 最近は、 追いムチで叩き付けるような光景はあまり見られなくなってきた。
 欧米ではセレクトセールのような当歳馬セールは一般的に行われていないので、 この英才教育の面では日本が一歩リードすることができるかもしれない。 セレクトセールの存在が、 単に活躍馬を多く生み出すだけでなく、 日本馬全体のレベルアップにもつながっているのであれば、 関係者の意識もさらに高まっていくことだろう。

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