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馬産地往来

2022年12月23日

ジャパンCウィークに思う

後藤 正俊

 5年ぶりに4頭の外国馬が出走した今年のジャパンC。その5年前に比べると実績は上位の馬たちだったし、東京競馬場の国際厩舎の活用、ボーナス賞金増額など環境も変わってきていたが、結果は日本馬が1~5着と掲示板を独占した。それでも日本馬が惨敗した道悪の凱旋門賞で5着に善戦したグランドグローリーが、昨年の0秒8差5着に続いて今年は0秒6差6着。凱旋門賞10着のオネストは直線で再三前が壁になる不利がありながら0秒7差7着。スタンド前のゲート入りで若さを見せてしまった3歳テュネスが1秒差9着とそれぞれ善戦した。直前のアクシデントで来日が実現しなかった凱旋門賞馬アルピニスタが出走していたら日本馬の17連勝はどうなっていたのか。日本馬と外国馬のレベル比較、馬場適性の違いの解析は、凱旋門賞に続いて今後の宿題として残ったジャパンCでもあった。
 これは馬産地と直接は関係がないことだが、1~4着の騎手はいずれも短期免許で来日した外国人騎手だった。ヴェラアズールで勝利したR.ムーア騎手は最後まで内で我慢して、わずかなスペースが出来た瞬間に抜け出した。ジャパンCは2013年ジェンティルドンナに続いて2勝目。ロンジンワールドベストジョッキーに昨年も含めて3度選出されている世界一騎手の手腕を見せつけた。そのヴェラアズールと大激戦を見せた2着シャフリヤールのC.デムーロ騎手はゴール前で内側に斜行し、11月19日の処分に続いて短期間に同様の不注意騎乗を繰り返した。これにより、2回の処分で合わせてJRA実効6日間の騎乗ができなくなり、来年の短期免許での来日も難しくなった。斜行に対しての批判があるのは当然だが、勝負に対してのすさまじい執念とも言える。今秋の短期免許来日では11月27日までにエリザベス女王杯のジェラルディーナでの勝利を含めて19勝を挙げており、馬券を買っているファンや騎乗を任す馬主にとっては頼もしい存在だ。早めの仕掛けで勝利に迫るシーンを演出したヴェルトライゼンデのD.レーン騎手、他馬に包まれながらも3冠牝馬デアリングタクトに復活の手応えを感じさせたT.マーカンド騎手もさすがの騎乗だった。
 いずれも上位人気馬なので好走して当然との見方もあるが、その有力馬に来日したばかりの外国人騎手が起用されている現実は、競馬界全体としてしっかりと受け止めなければならない部分だろう。JRAは来年度から別定重量における基礎重量、最低負担重量の引き上げを行う。その理由を「騎手の健康と福祉および将来にわたる騎手の優秀な人材確保」としている。重量制限を緩和することで、すでにアスリートとして実績を残している他競技選手のスカウトなど、年齢制限も緩和して幅広い人材から騎手を養成していくことも必要ではないだろうか。
 ヴェラアズールの父エイシンフラッシュは10年日本ダービー、12年天皇賞(秋)を制した名馬で、14年の種牡馬入り初年度は204頭と種付けする人気だった。その後も200、196、144頭と多頭数交配が続いたが、昨年までJRA重賞勝ち馬が1頭も出ていなかった。当初は受胎確認後150万円だった種付料は20年から80万円に下がり、21年種付頭数は42頭まで減少した。だが今年に入り、オニャンコポンが京成杯でJRA重賞初制覇。それにヴェラアズールが京都大賞典、ジャパンCと続いた。
 3着ヴェルトライゼンデの父ドリームジャーニーはオルフェーヴルの全兄で、09年宝塚記念、有馬記念の覇者。種牡馬入り初年度は種付料200万円で95頭を集めたが、小柄な馬体で種付けがあまり上手くなく、受胎率も高くない数字だったため年々交配頭数は減少。20年以降は実質的に引退状態となっている。だが20年にミライヘノツバサがダイヤモンドSでJRA重賞初制覇。ホープフルS2着、ダービー3着のヴェルトライゼンデが今年の鳴尾記念で重賞勝利を果たし、トゥラヴェスーラも短距離重賞で活躍している。種牡馬としてやや苦労していた2頭の名馬が存在感を示したジャパンCでもあった。
 ジャパンCの3日前に行われた兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)は1着がヴィットリオドーロ産駒オマツリオトコ、2着がダノンレジェンド産駒スペシャルエックス、3着がニシケンモノノフ産駒デステージョという結果だった。JBCスプリントを含め重賞9勝のダノンレジェンドこそ毎年交配100頭を超す産駒デビュー3年目の人気種牡馬だが、ヴィットリオドーロは重賞不出走で、新ひだか町・グランド牧場のほぼ自家用種牡馬的な存在だった。21年種付頭数は1頭だけだった。ニシケンモノノフはホッカイドウ競馬のデビュー馬で、JRA移籍後にJBCスプリントなどを制したが、今年の種付頭数は23頭で、来年の種付料は20万円と決して目立った種牡馬ではない。
 ディープインパクト、キングカメハメハ、地方ダートではゴールドアリュール、サウスヴィグラスらのトップ種牡馬がこの世を去り、日本産馬のレベルが全体に高まっていることもあり、種牡馬界は群雄割拠の戦国時代に突入してきていることも感じさせたジャパンCウィークだった。

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