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馬産地往来

2022年10月25日

注目の「ダート系」と「短距離系」

後藤 正俊

 9月20~22日の北海道市場9月市場(セプテンバーセール)は、開催日が昨年より1日増え上場頭数が53頭増加したこともあり、売上総額は同じ3日間開催だった一昨年(22億1122万円)にはやや及ばなかったものの、昨年比23.8%増の20億9165万円。531頭の上場で413頭が落札され、売却率は同5.4ポイント増の77.8%、1頭当たりの平均価格は18万円増の506万円で、これは一昨年(490万円)をも上回った。日高軽種馬農協主催のセールは10月市場(オータムセール)2日間をまだ残した段階で、昨年1年間の総額145億3859万円を超え、152億2400万円に達した。
 以前の9月市場、10月1歳市場は「8月市場(サマーセール)で落札されなかった馬のセール」というイメージもあり、売れ行きも芳しくなかったため、9月市場は2005年から中止となった。中止前の04年9月市場(サラブレッド)の成績は235頭の上場で売却は46頭、売却率は2割にも満たず、売上総額は約1億5千万円。平均価格は326万円というものだった。それが地方競馬の復興や庭先取引の減少によるセリ市への関心の高まりなどから8月市場の上場頭数が限界を超えたため、19年に15年ぶりに復活。決して「売れ残り」ではなく「その馬にとってベストの状態になった時に上場する」という生産者の意識の変化もあり、14年から1歳に特化した10月市場とともに年々レベルが高まってきている。今年も10月市場には社台ファームから11頭の上場が予定されているなど、9月市場以上とも思えるラインナップとなっている。年間売上総額は大きく記録を更新しそうだ。
 今年の9月市場の成績を振り返ると「ダート系」「短距離系」種牡馬の人気が目立った。売却頭数10頭以上はモーニン、ダノンレジェンド、ビッグアーサー、タリスマニック、エピカリス、ファインニードル、エスポワールシチーの7頭。モーニン(父ヘニーヒューズ、落札20頭、平均価格417万円)はフェブラリーS、コリアスプリントなどダート短距離~マイルで活躍。ダノンレジェンド(父マッチョウノ、17頭、535万円)はJBCスプリントなどダート短距離。ビッグアーサー(父サクラバクシンオー、15頭、400万円)は高松宮記念など芝短距離だが、産駒はダートでも活躍。タリスマニック(父メダーリアドーロ、11頭、597万円)だけは欧米芝中距離での活躍馬だが、今年デビューの初年度産駒は9月末時点ではJRA芝1勝、地方7勝と地方ダートでの活躍が目立つ。エピカリス(父ゴールドアリュール、11頭、650万円)は北海道2歳優駿などダート中距離。ファインニードル(父アドマイヤムーン、11頭、458万円)は高松宮記念、スプリンターズSなど芝短距離。エスポワールシチー(父ゴールドアリュール、11頭、584万円)はJBCスプリントからジャパンCダートまでダートでオールマイティーに活躍した。
 エスポワールシチーはすでに6世代の産駒がデビューし高い勝ち上がり率を誇るなど十分な実績を残しているが、他の6頭の産駒デビューは0~3世代で、まだ産駒成績で評価できるほどの種牡馬実績はない。それでもこれだけの高い人気となったのは、もちろん産駒の馬体の良さなどもあったはずだが、地方競馬の売り上げが年々増加・回復し、レースの賞金も増額されてきたことが大きな要因ではないだろうか。地方競馬でのデビュー、JRAから地方への移籍を考えた場合、やはりダート・短距離血統が大きな魅力となる。
 それは地方競馬リーディングサイアーにも如実に表れている。ダート短距離を最も得意としたサウスヴィグラス(父エンドスウィープ)が12年、15~21年と8回もリーディングサイアーに輝いている。18年に死亡し産駒数が減少しているため連続リーディングサイアーは昨年までで途切れそうだが、G1(Jpn1)はJBCスプリントの1勝だけだったサウスヴィグラスが種牡馬としてこれだけの活躍をしたことで、ダート・短距離で実績を残した馬は種牡馬として大化けする可能性があることが強く印象付けられた。
 ダート種牡馬人気の顕著な例がエピカリスだろう。北海道2歳優駿を含めデビューから4連勝。続くUAEダービーでサンダースノーに短頭差及ばず2着と初黒星を喫すると、その後は南関東移籍後も含め勝ち星を挙げることができずに12戦4勝。重賞はJpn3北海道2歳優駿の1勝だけという成績だった。レックススタッドで種牡馬入りし、種付け料は30万円の設定だったが、初年度交配は88頭を集め、60頭の血統登録数。その初年度産駒がサマーセールは12頭上場で11頭売却、平均価格704万円。9月市場は13頭上場で11頭売却、平均価格650万円だった。9月市場2日目は最高落札価格馬(1705万円)2頭がいずれもエピカリス産駒だったのだから、その評判の高さは本物だ。
 他にも9月市場では、重賞勝ちのないダブルスター産駒が2頭売却で平均価格550万円、Jpn2・2勝、Jpn3・1勝のキタサンミカヅキ初年度産駒が2頭売却、平均価格649万円、Jpn1とJpn2を各1勝にJpn3を2勝のニシケンモノノフ産駒が6頭売却で平均価格193万円など、競走実績ではそれほど目立たないダート種牡馬の産駒が目を引いた。

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