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馬産地往来

2013年2月25日

新降着ルールの見直しを

AJCCで露呈した問題点

後藤 正俊

 直接的には馬産地に関係のない話題だが、日本競馬の将来を考えると、新降着ルールに関しての論議はしなければならないだろう。
 新ルールを簡略して説明すれば「その走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していたと判断された場合に、加害馬は被害馬の後ろの着順に降着する」というもの。言葉にすれば単純明快であるし、海外の競馬主要国に倣い、パートI国として国際的な統一ルールに従うという目的も大義名分が成り立っている。JRAではホームページ上で、サンプルとなる動画を公開してファンへの周知徹底を図っていた。主催者として大きな問題はなかったようには見える。
 だが新ルール施行直後の1月20日、アメリカジョッキークラブCで、大きな騒ぎが起こってしまった。1位でゴールしたダノンパラードがゴール200メートル手前で内斜行し、2位トランスワープ、9位ゲシュタルトが急ブレーキをかける形になった。当初、審議ランプは点灯しなかったが、トランスワープの萩原師らからの異議申し立てがあり、ゴール入線から12分後になって審議ランプが点灯。さらに10分後に入線どおりに確定した。この裁決の問題点を検証する。
 ①まず根本的な問題として、降着処分を下さなかったこと。決定するのは裁決委員なのだから外野がとやかく言うことではないのだが、このケースで降着にしないということは、導入直後のこのケースがはっきりとした「基準」となって、今後降着はほぼなくなると考えられる。騎手制裁が厳しくなったとしても、騎手にとって重賞競走などではやはり目先の勝利が重要であり、ヨレそうであってもそのまま追い続けるケースが増えるのは明白。落馬事故が増加する懸念もある。
 ②新ルールの解釈は、ファンにとっても関係者にとっても、より難解になった。裁決は、ゴールまで残りわずかな地点であれだけの不利があっての1馬身?差を「不利がなくても逆転できなかった」と、被害を「1馬身以内」と判断した。もし完全に抜け出したダノンバラードのベリー騎手がゴール前で手綱を緩めて1馬身以内になっていても「逆転できなかった」とするのか、「その着差なら逆転可能だった」と降着にするのか。被害を受けたあと追い上げたトランスワープと、大きく失速したゲシュタルトは、どちらが大きな被害を受けたと判断するのか。そもそも「脚があった」「なかった」というのは、裁決委員の「予想行為」にはならないのか。
 ③たとえば不利がスタート直後だったとしたらもっと複雑だ。「レース序盤なら挽回が可能だったはずで、レースの結果には大きく影響しない」と捉えられるのか。結果として加害馬に迫ったとしたら「不利がなければ逆転できた」と判断するのか。その不利が極めて大きなものであっても、被害馬が加害馬に比べて能力的にかなり見劣る馬だった場合(たとえば1991年天皇賞・秋のメジロマックイーンとプレジデントシチーの着差は7秒)、「被害がなくても加害馬に先着できない」と結果や能力から逆算して判断するのか、不利の大きさ自体で判断するのか。新ルールは考えれば考えるほど難解だ。
 ④もっとも批判が大きいのは当初、審議ランプを点灯させなかったことだ。あれだけの不利があっても、裁決委員にとっては〝一目瞭然〟で降着に値しないことが判別できたということだが、その感覚が関係者やファンとはあまりにも乖離している。その割には、異議申し立てがあって審議ランプを点灯するまでに12分も経過している。この間の時間は何をしていたのか。
 ⑤異議申し立てを受けたあとの審議ランプ点灯も、納得しにくい部分がある。いくら「確定まで馬券を捨てないように」とアナウンスがされたところで、まさか審議ランプが12分間も点灯されないまま着順が変更になるなど、大半のファンは考えていない。もしこの審議で降着としたら暴動の心配すらあるだけに、裁決としても着順変更は考えていなかったことだろう。それなのに10分間も審議を行ったことも不明だ。異議申し立て制度は、入線直後に審議ランプを点灯されたケースでなければ有名無実なもののはずだ。
 国際ルールに倣うことも必要だろうし、4月からは地方競馬でも新ルールが適用される。だが納得できないルールを押し付けられても、ファンは失望するだけだ。地方競馬でのスタート前に、見直す点は見直して、誤りは謝罪して、新たな施行を行うべきではないだろうか。いまならまだやり直しができる。

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