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馬産地往来

2022年4月25日

サウジ、ドバイで日本馬が大活躍

後藤 正俊

 3月26日に開催されたドバイワールドカップデーは衝撃だった。計8レースに日本から22頭が遠征し、5勝、2着1頭、3着3頭。2月26日のサウジカップデーも6レースで4勝、2着1頭、3着2頭という凄まじい成績だったが、出走馬のレベルを考えるとサウジ以上の快挙だったと言えるだろう。
 勝ち馬はもちろん5頭とも素晴らしいが、敗れた馬にも大きな収穫があった。ワールドCのチュウワウィザードは、昨年が2着で今年が3着。だが対戦相手のレベルはかなり違っており、今年は米国から超一流馬が揃って遠征してきた。その中で僅差まで追い上げ、距離の問題はあっただろうがあのライフイズグッドに先着したのだから大したものだ。ゴールデンシャヒーンのレッドルゼルも追い込んで2着だったが、勝ったスイッツァランドは13番人気(JRAによる馬券発売での人気。以下同)のノーマークだったので、これはレースのアヤ。1番人気ドクターシーヴェル(3着)にはしっかりと先着した。アルクオーツスプリントのラウダシオンは9着、エントシャイデンは12着だったが、同レースは新潟直線コースと同様に明らかに外枠有利の馬場で、1着アケースオブユーは大外16番枠だった。
 特筆すべきは、昨年のBCディスタフのマルシュロレーヌ、サウジカップデーのリヤドダートスプリントでのダンシングプリンスに続き海外ダート重賞で、バスラットレオンがゴドルフィンマイル、クラウンプライドがUAEダービーを制し、前出のチュウワウィザードとレッドルゼルも健闘したことだろう。日本のダート馬のレベルアップは目覚ましいものがある。
 マルシュロレーヌはオルフェーヴル産駒で芝でも実績があった。ダンシングプリンスは勝ち鞍がダートのみだが、父は芝短距離重賞3勝のパドトロワ、母の父はバブルガムフェロー。バスラットレオンはキズナ産駒でニュージーランドT優勝などこれまで芝で活躍してきた。レッドルゼルはロードカナロア産駒、チュウワウィザードはキングカメハメハ産駒で、いずれも芝適性が高い血統背景を有していた。これらの結果を分析すると、海外ダート重賞で活躍できる日本調教馬は、コテコテのパワー型ダート馬ではなく、芝でもオープン級のスピードがある馬なのではないかと推察できる。今後はある程度ダートもこなせそうな芝のトップホースが米国三冠、BCクラシック、ペガサスワールドC、ドバイワールドCなどに挑戦したら面白いのかもしれない。
 外国馬で目をひいたのはシーマクラシックでシャフリヤールに首差まで迫ったユビアーだった。この相手に日本ダービー馬シャフリヤールが負けるはずがないと個人的には確信していたが、ゴール前のユビアーの脚色には肝を冷やした。BCターフでの追い込みも強烈だったように、この馬の切れ味は本物だ。ドバウィ産駒は時計の速い芝コースにも高い適性を示しているので、ぜひその脚を直線の長い東京のジャパンCで見てみたい。エフフォーリアとの対決、シャフリヤールとの再戦が実現すれば、今秋のジャパンCは大いに盛り上がるはず。JRAにはぜひ積極的な招致を試みてもらいたい。
 サウジ、ドバイでの日本馬の大活躍は嬉しいと同時に、一抹の不安もある。高額賞金レースでこれだけ日本馬が活躍できるとなると、今後遠征する馬はさらに増える可能性が高い。今春の香港チャンピオンズデーは新型コロナウイルス感染拡大の影響で地元馬以外が出走できなくなったが、来年以降、この3カ国に主力馬が遠征してしまうと、日本の春のG1シーズンが空洞化してしまうことが心配される。それはJRAにとっても痛手だろう。今回のドバイワールドカップデーは日本で馬券を発売した4レースの売り上げが約49億5千万円だった。約32億3千万円だった昨年と比較して153.5%の大幅増。海外競馬発売では昨年の凱旋門賞の約53億9千万円に次ぐ2番目の売り上げとなったが、国内G1は1レースで130~500億円ほどの売り上げを記録している。海外発売は「映像提供料」などとして主催者に対して一定の手数料支払いが必要になるし、この遠征メンバーが国内G1に出走していたら数十億円規模の売り上げ効果は計算できるはずだ。
 もちろんスポーツ性を考えれば海外遠征は大きな意義があるし、日本馬の強さを世界に知らしめることは生産界にも大きな貢献を果たすことになるが、やはりベストは日本で開催する国際競走をもっと盛り上げていくことではないだろうか。海外ダート重賞とは逆に、米国ダートのトップホースが高速芝コースのジャパンCに来日してどのようなレースをするのかも興味津々だ。

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