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馬産地往来

2014年10月24日

異色の繁殖牝馬が話題に

国際化の最先端を進む日本競馬

後藤 正俊

 凱旋門賞は残念な結果となったが、出走した日本馬トリオの血統を見ていて、感慨深い気持ちになった。ハープスターは06年凱旋門賞で「負けるはずない」と日本の誰もが思っていたものの、まさかの3位入線後に失格となったディープインパクト産駒。祖母ベガの父は凱旋門賞馬トニービン。ジャスタウェイの父ハーツクライはドバイシーマクラシックを制し、キングジョージ六世&クイーンエリザベスSで惜しい3着。ハーツクライの母父はトニービン。ゴールドシップの父ステイゴールドは香港ヴァーズ勝ち馬。世界的な芝2400㍍戦で活躍した血が集結して、同条件の凱旋門賞を大いに盛り上げた。競馬がグローバルなスポーツであること、そして日本がその最先端を進んでいることが、改めて示されたレースでもあった。
 日本国内のレースでも最近「グローバル」を感じるケースが多くなったが、神戸新聞杯でワンアンドオンリーを苦しめた2着サウンズオブアース(牡3歳、父ネオユニヴァース)の血統については、インターネットで大きな話題となった。
 母ファーストバイオリンは米国産馬で競走成績は北米2勝だったが、繁殖入り後、2番目の産駒ドミニカン(せん馬、父エルコレドール)がGⅠブルーグラスSを制するなど大活躍。08年のキーンランド繁殖牝馬セールにおいて23万ドルで社台ファームが落札した。その時に受胎していたドミニカンの全妹となるエルコレドール産駒ツクバエルドラドは未勝利に終わったが、日本での2番目の産駒がサウンズオブアースとなった。
 話題はこのファーストバイオリンがドミニカンを出産した直後に、北朝鮮に輸出された記録が残っていたこと。JBISのデータには、05年生産シンフォニーソナタ(牝、父イードバイ)、06年生産パワーオブマネー(牡、父リーサルインストゥルメント)の生産国が「北朝鮮」と表記され、社台グループ繁殖牝馬名簿には、シンフォニーソナタの競走成績が韓国6勝、パワーオブマネーが韓国3勝と記されていたのだ。競馬開催が行われていない北朝鮮にサラブレッド生産牧場があり韓国と貿易をしているのか、在韓北朝鮮国籍のオーナーが繁殖牝馬を所有しているのかなど、ネット上でも様々な見解が飛び交っていた。
 この点について日本軽種馬協会に問い合わせたところ、国コード入力時にミスがあったことが判明し、この2頭の生産国は「韓国」に訂正されて一件落着となったが、話題にはまだ続きがあった。07年に韓国で交配されたのはダート交流重賞2勝、フェブラリーSなどGⅠ2着3回の成績を残して種牡馬入りしたビワシンセイキだった点だ。同馬は日本で1シーズンだけ供用された後、韓国に輸出されて種牡馬として活躍している。その産駒ファーストオーシャンは米国産となっているので、ドミニカンの活躍によって受胎時に米国に買い戻され、翌年にエルコレドールと交配されてキーンランドセールに上場されたことになる。米国、韓国、米国、日本と渡り、さまざまな種牡馬と交配される、数奇な繁殖生活となっている。
 似た境遇をたどっているのが、繁殖牝馬ワールドリープレジャーだ。米国で8勝を挙げて繁殖入りし、07年生産の2番子ゲームオンデュード(せん馬)が4歳時の11年、米国でサンタアニタH、グッドウッドSとGⅠを2勝、BCクラシックでも2着と大活躍。だがその時に母はすでに韓国へ輸出されていたのだ。09年に韓国へ移った同馬は11年、その年に日本から韓国へ輸出されたアドマイヤドンと交配された。韓国でけい養されていることを米国よりも先に発見した白老ファームが、受胎した同馬を輸入。日本で生まれたワールドリースター(牡2歳)が8月の札幌開催でデビューした。つまり同馬は米国の名馬の半弟であり、種牡馬アドマイヤドンのこの世代唯一の日本産馬でもある。
 様々な国際化の最先端を進んでいる日本馬は、必ず近いうちに、凱旋門賞制覇の夢を実現できるに違いない。

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