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馬産地往来

2014年4月25日

海外遠征を継続する最善の方法

海外レースのサイマルキャスト発売を

後藤 正俊

 今年のドバイ・ミーティングには8頭(ブライトライン、ジャスタウェイ、ロゴタイプ、トウケイヘイロー、ジェンティルドンナ、デニムアンドルビー、ホッコータルマエ、ベルシャザール)の日本調教馬が参戦し、ドバイデューティフリーはジャスタウェイ、ドバイシーマクラシックではジェンティルドンナと、2頭が勝利を収めた。
 ドバイ・ミーティングでの日本馬の勝利は、01年ステイゴールド、06年ハーツクライ(ともにドバイシーマクラシック)、06年ユートピア(ゴドルフィンマイル)、07年アドマイヤムーン(ドバイデューティフリー)、11年ヴィクトワールピサ(ドバイワールドカップ)に続くもので、通算7勝となった。
 3月のドバイ、10月のパリ(凱旋門賞)、12月の香港と、いまや日本馬の参戦がないと祭典が盛り上がらないといわれるほど、日本馬は毎年のように国際舞台で活躍している。日本競馬の発展は著しいものがあるし、海外での好成績はファンを盛り上げ、さらに競馬発展に寄与するものとなっている。昨年の凱旋門賞でのオルフェーヴルと、3歳馬キズナの果敢な挑戦、香港スプリントを連覇したロードカナロアの圧倒的なスピードは、ギャンブルではなくスポーツとして競馬を多くの日本人に認めさせるものだった。
 だが日本馬の海外レース出走は、手放しで喜べない一面もある。ドバイデューティフリーで6馬身以上の差をつける圧勝劇を見せたジャスタウェイの陣営には、海外からの出走オファーが殺到していることが明らかになった。須貝師は「日本の競馬のことも考えないといけないから」と今後のプランについては未定を強調したが、優秀なアスリートのもとには全世界からオファーが来るのは当然のことだといえる。
 今年限りで引退が予定されているジェンティルドンナは、今秋の海外遠征は未定だが、国内で走るのはせいぜいあと2~3走。古馬になってからの2年間で、国内では計5~6走しか走らないことになる。2年連続で凱旋門賞に出走したオルフェーヴルも、その2年間で国内では計6走しただけだった。
 ドバイワールドカップに出走したダート界の頂点に立つ2騎は、ベルシャザールが夏の札幌開催から復帰を目指しているが、ホッコータルマエはレース終了後に体調不良となり、今後の復帰はまったく未定。デニムアンドルビーとロゴタイプも「未定」だが、少なくとも春シーズンは最大1走だろう。
 欧米よりは輸送時間が短いドバイでも、遠征による体力消耗は激しく、遠征をした年の国内出走回数は4~5走程度に減少する。スターホースが国内のレースに出走しなければ、売り上げに直接的な影響が出てくる。日本競馬が短期間にここまで急激にレベルアップできたのは、世界最高の売り上げを誇っているからこそ、ともいえる。
 JRAも危機感を募らせたのだろう。今年から海外レースに出走する馬に対しての補助金、褒賞金の交付を廃止した。交付金は年々削減されてはいたのだが、完全廃止となれば今後は海外遠征が減少することも考えられる。特にクラブ法人の所有馬は、出資会員全員の同意を得ることが難しくなる。だがそれでは、せっかく世界で認められるようになってきた日本馬の地位が、徐々に崩れてしまいかねない。
 この問題を解決するためには、日本馬が遠征する海外レースの馬券を、JRAがサイマルキャスト発売することが最善の方法だ。海外の賭博を日本で販売することは法規上、まったく不可能なことだと思っていたが、サッカーくじでは昨年11月から今年2月までの国内オフシーズンに、イングランドのプレミアリーグやドイツのブンデスリーガなどを対象とするくじの発売を行った。スポーツ振興投票法の改正という簡単な手続きで、対象を海外のゲームまで拡大することができたのだ。
 ドバイ・ミーティングや凱旋門賞の馬券をJRAがサイマルキャスト発売するために、どのような法改正が必要なのかは不勉強のため不明だが、「サッカーでできたものが競馬ではできない」「香港では日本の馬券を発売しているのに日本では香港のレースを買えない」という現状は何か釈然としない。
 JRA、農水省にはぜひその道を探っていただき、国際舞台での日本馬の活躍を手放しで喜びたいものだ。

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