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馬産地往来

2017年10月25日

日本産馬と外国産馬

力の均衡に「変化」の兆し?

後藤 正俊

 今年も歴代最高の取引総額となったセレクトセールの終了後、社台ファームの吉田照哉代表は「日本には世界最高峰の繁殖牝馬が輸入されている。それを世界最高レベルの種牡馬であるディープインパクトやキングカメハメハと交配しているのだから、世界のバイヤーから注目され、高額な落札価格になることも、ある意味では当然なのではないか」との趣旨の発言をされていた。それはまさにその通りだと思っている。
 だが日本産馬がこのまま右肩上がりに成長し、世界の最高峰に君臨できるかどうかは、未知数な部分があるのではないだろうか。今回はその「やや不安」な部分を、他のスポーツとの比較から考えてみたい。
 日本の「国技」と言われるスポーツに相撲と野球がある。だが相撲では現在、4横綱のうち3人がモンゴル出身力士であり、日本人力士は大苦戦が続いている。これが曙、武蔵丸の時代なら「外国人との体格差」と言い訳ができたかもしれないが、白鵬は入門時の体重がわずか62キロだったし、日馬富士はいまでも幕内最軽量レベルの137キロ程度しかない。少なくともモンゴル勢との違いは体格ではないことは明らかだ。
 野球に関しても、相撲同様に外国人選手の出場枠には制限がある中で、セ・パ両リーグそれぞれの打撃部門では9月末現在、本塁打数のセ1位と2位(ゲレーロとバレンティン)、パ1位と2位(デスパイネとレアード)、打点のセ1位(ロペス)とパ1位(デスパイネ)、打率のセ2位(マギー)が外国人選手。投手部門でも、セーブ数のセ1位(ドリス)とパ1位(サファテ)、ホールドポイントのセ1位(マテオ)、防御率のセ2位(マイコラス)が外国人選手だ。体格差の影響が大きい打撃部門は以前から外国人選手の活躍が目立っていたが、これまでは日本人選手が優位なはずだった投手部門でも外国人が席巻している。MLBに移籍した日本人投手にしても、ダルビッシュ有、田中将大、前田健太らが期待の大きさほどは活躍できていない。
 チーム作りもこれまで以上に外国人選手に依存する割合が高まっており、例えば盟主・巨人を見てみると、打者のマギー、投手のマイコラス、マシソン、カミネロがもしいなかったら、歴史的大敗を喫するシーズンになっていたことだろう。
 相撲も野球も、日本人選手のレベル低下が疑われるが、その要因は競技人口の減少にあるとも言われている。相撲は「人前で裸になるのは恥ずかしい」「太っているのは格好悪い」と小学生らから敬遠されて年々競技人口が減っており、大相撲への入門者は減少の一途だ。生命保険会社が調査した「男子中学生の将来の夢」でかつては不動の1位だった「プロ野球選手」は、この数年で「サッカー選手」に抜かれ、いまではアンケート調査の項目が「スポーツ選手」と統合されたにもかかわらず、プログラマー、ゲームクリエイター、ユーチューバーにまで抜かれて4位。男子高校生になると9位まで下がっている。少子化なども影響して9人のメンバーが集まらずに、存続できなくなった少年野球クラブ、高校野球部も多い。
 同様なことは競馬でも言えるのではないだろうか。2016年の軽種馬(サラブレッド、サラ系、アングロアラブ)生産頭数は6903頭で、44年ぶりに7千頭台を割った12年からはほぼ横ばいの状況が続いているが、ピークだった1992年の1万2874頭から比べると6千頭近くも減少している。
 たまたま、なのかもしれないが、その92年に誕生したのはサンデーサイレンスの初年度産駒だった。そのサンデーサイレンス産駒の登場がいまの日本競馬の基礎となっていることは誰もが認めるところだろう。もちろんサンデーサイレンス級の大種牡馬なら、どんな時代に降臨してきたとしても圧倒的な成績を残したことだろうが、日本の生産頭数が右肩上がりの時代だったからこそ、このような大種牡馬を導入できたとも言える。
 生産頭数が多いということは、それだけ競争が激しくなり、全体のレベルを高めるという図式は容易に想像できる。生産頭数が7千頭を割った12年以降の世代が、本当にレベル低下をきたしているのかはまだ証明できていないが、最近、外国産馬の活躍が目立っている印象がある。9月3日G3小倉2歳Sアサクサゲンキ、9月17日G2ローズSラビットラン、9月27日Jpn2日本テレビ盃アポロケンタッキーと外国産馬が立て続けに重賞を制している。外国産馬の輸入頭数はこの数年、100~130頭台と大きくは変わっていないし、以前のような「日本産馬にとって脅威」という存在になっているわけではないが、ソウルスターリングのような持ち込み馬の活躍もあり、「変化」の兆しは感じられる。
 日本馬は、日本独特の高速芝コース、サンドコースでは確かに圧倒的な強さを見せている。だがサトノダイヤモンドの凱旋門賞での15着敗退もあり、やや不安な気持ちを抱いてしまう状況になってきていることも、否定はできない。

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