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馬産地往来

2011年6月24日

名門メジロ牧場 解散の衝撃

オーナーブリーダーの栄枯盛衰

後藤 正俊

 5月20日にメジロ牧場が解散となったことは、今年上半期の競馬界最大の衝撃だった。
 解散表明の会見で北野雄二代表が「一番の思い出はメジロアサマの天皇賞」と語っていた。メジロアサマは、生産こそメジロ牧場ではなくシンボリ牧場だったが、気品に満ちた芦毛の馬体が印象的な名馬だった。
 名門・尾形藤吉厩舎からデビューし、名手・保田隆芳が厩舎を開業するとエースとして移籍して、若い池上騎手を背にして一気に素質開花。70年天皇賞・秋では「パーソロン産駒は短距離向き」という風評を覆して、社台ファームのフイニイ相手に差し切り勝ち。
 メジロ牧場にとっては前年秋のメジロタイヨウに続く盾制覇で、さらに翌春はメジロムサシが続いて「3200メートルの天皇賞を勝つことがメジロ牧場の最大目標」であることが明確になった時期でもあった。大本命で臨む予定だった71年有馬記念を流感で取り消すなどの不運もあったが通算成績は48戦17勝、重賞6勝。現在のように毎週GIがある時代とは比較ができないが、獲得賞金が当時最高の1億8736万円だったように主要重賞に常に出走し続けて、馬主には賞金をもたらし、ファンには存在感を示した名馬だった。
 このメジロアサマがメジロ牧場のターニングポイントとなった。目黒記念を制した持込馬・メジロサンマン(代表産駒メジロイーグル)に続いて大きな期待を抱かれて73年からメジロ牧場で種牡馬入りしたものの、初年度は交配牝馬の不受胎続きで受胎馬0のまま種付け中止。検査の結果、精虫数が少ないことが判明。流感時の注射の影響なども取り沙汰されたが治療法は見当たらず、通常なら種牡馬としては失格の烙印だった。
 だが北野豊吉前オーナーは「メジロ牧場がここまで成長できたのはアサマのおかげ。精虫が皆無ならあきらめるが、少ないだけなら生殖能力喪失ではない。何としてもアサマの子を残す」と号令。2年目以降も交配を続けた。その結果、毎年1~2頭ながら産駒が誕生し、しかもメジロテイターンを筆頭にメジロカーラ、メジロエスパーダなど生まれた産駒の大半が活躍するという奇跡的なストーリーが生まれた。
 このメジロアサマの天皇賞制覇、種牡馬復活が起こってから、メジロ牧場の考え方が「長距離重視」「完全オーナーブリーダー」へとより強くシフトしていったように思える。こだわりを持ったメジロ牧場での生産馬を、思い通りに育成して、丈夫に長く現役生活を送ってもらい、引退後は種牡馬、繁殖牝馬として、さらに功労馬として大切にしていく。その生産馬への愛情と執着、独自性の追求、ある意味では他人の意見は聞かず独断的に突き進んだことが、メジロ王国の栄枯盛衰につながったのかもしれない。
 「完全オーナーブリーダー制度」は他の牧場にとっては実現不可能に思える大きな憧れだった。だが北野前オーナーは「生産費のなかでもっとも大きなウエートを占める種付け料がかからない、売る必要がないので見栄えを気にする必要はなく徹底的に鍛えられる、その馬の個性に合った仕上げを育成時期からできるので無理をさせないで済む。生産としてはもっとも楽な方法なのかもしれません」と以前に語っていた。 メジロアサマの不授胎騒動のときも、有珠山噴火で大きな被害を受けたときも、所有馬の獲得賞金を直接手にすることができたことで、ピンチを切り抜けられた。この制度によって経営的に無理をしたことはほぼなかった。
 解散の要因として「長距離重視の方針が時代にマッチしなくなった」ことが挙げられているが、近年のメジロ牧場はJRAの距離体系見直しに応じてスピード&瞬発力血統の導入も積極的に行ってきていた。サンデーサイレンス系の人気種牡馬との交配も多数行っていたし、繁殖牝馬の輸入も毎年続けていた。それだけが原因とは思えない。
 メジロラモーヌなど種牡馬モガミの血が入った繁殖牝馬が軒並み成績不振だったことも、メジロラモーヌがあまりにも偉大な歴史的名牝であったことからその牝系を大切にする思いが強かっただけにダメージも大きくなった。日本競馬全体のレベルが高まり、坂路、ウッドチップ、全天候馬場などハイレベルな育成施設が求められるようになったことも、設備投資には限度がある個人牧場にとっては厳しかった。
 そして何よりも、JRAの売り上げの右肩下がりが続いて生産者賞など生産関連予算が削減されていることが、オーナーブリーダーにとっては直接的な打撃になったようにも思える。

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