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馬産地往来

2006年6月1日

再び「日高社台」の時代に

3歳GIを日高生産馬が独占した背景

後藤正俊

"日高" の巻き返しがすごい。 このところ社台グルーに席捲されていた3歳クラシックだが、 今春はNHKマイルCを含めたGI5レースで、 いずれも日高の中小牧場の生産馬が優勝した。 しかもオークス馬カワカミプリンセス以外はすべて日本古来の牝系から誕生した馬。 サンデーサイレンス産駒はおらず、 桜花賞に勝ったキストゥヘヴンとNHKマイルCに優勝したロジック以外はその血も入っていない。
 いくらサンデーサイレンスといえども、 毎年確実にクラシックウイナーを輩出できるわけではないのだから、 特に驚くことでもないようにも思えるが、 産駒のラストイヤーだっただけになおさら "不振" に見えてしまうのは仕方がないことかもしれない。 春のGI未勝利で騒がれてしまうところがこの種牡馬の飛び抜けた偉大さなのだろう。
 この結果に敢えて理由を探すとしたら、 サンデーサイレンスのラストイヤーは例年よりも産駒数が少なかったことが影響したと見ることができる。 シーズン半ばに病気を発症したため、 種付け頭数自体が少なかったし、 社台スタリオンSでは体調を考えて交配頭数を減少させるときに、 "お客さん" である日高の生産者からの申し込みを優先させて、 グループ牧場の繁殖牝馬は配合変更することが多かった。 社台グループのサンデーサイレンス産駒が少なかったことで、 層が例年よりもかなり薄かったと見ることができる。
 それはつまり、 サンデーサイレンス産駒が完全にいなくなる現2歳世代からは、 日高も社台グループと互角の勝負ができるようになるのではないか、 という期待を抱かせる結果だ。 確かに社台グループには良血繁殖牝馬がそろっているし、 育成レベルも高い。 だがその差は、 サンデーサイレンスという次元の違う種牡馬がいるかいないかよりも小さい差のように思える。
 最高価格3000万円に達していたサンデーサイレンスの種付け料は、 一般的な日高の中小牧場ではとても捻出できる金額ではなかった。 いまでもアグネスタキオンの1200万円は中小牧場には厳しい価格かもしれないが、 その他の種牡馬はいずれも800万円以下だし、 実績の面でアグネスタキオンと決定的な差があるわけではない。
 それを考えれば社台スタリオンSにいくら人気種牡馬が集中しているからといって、 日高が不利な立場に立たされていることはない。 互角の勝負を挑める環境が整ってきたのである。
 もうひとつの理由としては、 JRAの馬場管理が考えられる。 多くの競馬ファンが感じているように、 今年の馬場は内外の状態の差が少なくなっていた。 外が伸びないというか、 内が粘れるという馬場状態なのだ。
 サンデーサイレンス産駒、 そしてその血を引く馬たちの最大の特徴は瞬発力にある。 だが外が伸びない馬場だと、 その瞬発力を生かしづらい。 先行して粘り込むタイプの、 スタミナがある日本古来の血統馬、 あるいはJRAが導入して日本軽種馬協会に寄贈されたダンシングブレーヴ、 オペラハウスのような欧州型ステイヤー種牡馬に有利な馬場状態だったともいえる。
 社台グループの台頭が顕著になってきたのは、 日本競馬のスピード化の進行と符合していたように思える。 芝2000メートルで2分が大きな壁になっていた時代には、 日本古来の血統馬でも活躍できたが、 条件戦でも1分58秒台が出たり、 上がりタイムで32秒台が出る時代になってくると、 瞬発力が最優先されるようになってきていた。
 だがあまりにも進んだスピード化、 スローでの上がり勝負は、 サラブレッドの競走寿命を短縮する結果にもなっていた。 芝を長めに刈った今年のJRAの馬場管理が意図的なものなのかどうかはわからないが、 今後も瞬発力一辺倒の馬場は敬遠される傾向になっていくはず。 ますます日高生産馬の巻き返しの余地が増える気がする。
 日高 VS 社台という対決図式が力量均衡ではっきりしてくることは、 競馬ファンにとっても興味深い話題が増えることになるだろう。

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