重賞勝ち馬News

Stallions in Japan

会員の勝ち馬

取引馬データベース

よくある質問

日本競走馬協会について

バナーエリア

馬産地往来

2017年2月24日

NARグランプリ選考を終えて

後藤 正俊

 キタサンブラックが年度代表馬に選出されたJRA賞は多くのマスコミで報道されたが、地方競馬の年度表彰「NARグランプリ」の露出度は残念ながら高くはない。NARグランプリの選考委員を四半世紀も続けており、地方競馬の振興に懸命に取り組んでいるのだが、力不足を痛感する状況だ。
 各部門最優秀馬から選出される2016年の年度代表馬は、満場一致でソルテ(牡6歳=16年時点、父タイムパラドックス、母ヒノデモンテローザ、母の父マルゼンスキー=大井・寺田新太郎厩舎、新ひだか町・下村繁正氏生産)に輝いた。16年の競走成績は5戦2勝と出走数、勝利数は少なかったが、Jpn2さきたま杯(浦和1400m)でJRA馬ベストウォーリア、ドリームバレンチノらを斥けて優勝した。ベストウォーリアはJpn1南部杯を14、15年に連覇し、16年もコパノリッキーの2着とマイル以下では圧倒的な強さを見せており、2キロの重量差があったとはいえ同馬に1馬身半差をつけた内容は、レーティング111を付けたように高く評価されるものだった。またソルテはJpn1かしわ記念でもコパノリッキーの2着で、ベストウォーリア(3着)に先着し、同レースでもレーティング111を獲得している。
 Jpn2勝ち馬が年度代表馬というのは、JRAファンからすれば寂しい印象があるのかもしれないが、16年に55レースが行われたダートグレード競走で地方馬が勝ったのは、他に2歳最優秀牡馬に選出されたローズジュレップ(牡2歳、父ロージズインメイ、母タニノジュレップ、母の父コロナドズクエスト=北海道・田中淳司厩舎、新ひだか町・岡田スタッド生産)のJpn2兵庫ジュニアグランプリ(レーティング105)だけしかなかった。芝のレースを含めても最優秀ターフ馬トラスト(牡2歳、父スクリーンヒーロー、母グローリサンディ、母の父エイシンサンディ=川崎・河津裕昭厩舎、新冠・中本牧場生産)のG3札幌2歳S(レーティング106)があるだけで、ソルテが満場一致で選出されたのは妥当な結果だったし、14年サミットストーン、15年ハッピースプリントもJpn2を1勝だけでの受賞だった。
 ただ、委員会では今後への危機感を募らせる提言もなされた。ダートグレード競走でJRA勢が圧倒的な強さを見せていて、いずれはダートグレード競走の勝利がない馬の中から年度代表馬を選出せざるを得ない状況に陥る恐れがあるが、それよりも地方競馬関係者に漂う「あきらめモード」が懸念されていたからだ。
 年末の大一番・東京大賞典は地方で開催されている唯一の統一G1レースであり、1着賞金8000万円という地方競馬ではまさに別格のレースなのだが、昨年の東京大賞典(14頭立て)に地方から出走した7頭のうち、新聞紙上で印が付いたのは16年未勝利ながらダートグレード競走でまずまずの成績だったハッピースプリント1頭だけだった。羽田盃、ダービーグランプリ勝ち馬のストゥディウム、16年にJRAのオープンから転入したヴァーゲンザイル、準オープンから転入したコスモカウピリ、メジャープレゼンスは地区重賞ですら近走惨敗している。ダートグレード競走初出走のスパイア、サンドプラチナに至っては、JRAファンは馬名も知らなかったかもしれない。
 結果は案の定、JRA勢7頭が上位7着までを独占。ハッピースプリントが地方馬最先着の8着だったが、9着以下は大差がついてしまった。売り上げだけを見れば、東京大賞典は地方競馬1レースのレコードを大幅に更新する37億3269万5200円、当日の大井競馬1日の売り上げも従来の記録を13億円も更新する61億9493万3590円と大成功と言えるものだが、これはJRAのネット投票での発売など馬券購入環境の変化による部分が大きい。このまま「実質JRA勢の7頭立て」というレースが続けば、売り上げも頭打ちになることは目に見えているし、地方競馬の存在価値そのものが問われる状況だ。
 賞金格差による入厩馬のレベル差、育成施設の違い、厩務員数などは一朝一夕に解消できることではないが、「東京大賞典で惨敗するよりも地区重賞で勝った方が賞金を獲得できる」という挑戦意欲の欠如は問題だ。馬主経済が重要なことは理解できるので、少なくとも唯一のG1東京大賞典だけでも地方勢のフルラインナップが揃うような出走奨励金制度を設けることも必要ではないかなど、委員会では話し合われた。
 本協会の下河辺俊行副会長が先日、あるスポーツ紙のインタビュー記事で「JRAと地方競馬の垣根をもっと低くしていく必要がある」「世界を見渡しても、いまのJRAと地方競馬のような一国二制度はないはず」と指摘されていた。すぐに大きな変化を起こすことは難しくても、1レース1レースの改革を積み上げていくことが、将来的な日本競馬の統合、更なるレベルアップに繋がっていくのではないだろうか。

※各馬の所属はNARグランプリ受賞時のもの

バックナンバー

過去の馬産地往来

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年