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馬産地往来

2026年6月25日

春のクラシックを振り返って

後藤 正俊

 2026年春の3歳クラシックシーズンが終了したが、今年も様々なドラマに満ち溢れたレース、出来事が続いた。思いつくまま書き綴ってみたい。
 桜花賞は昨年の2歳女王スターアニス(父ドレフォン)が2着ギャラボーグに2馬身1/2差を付けて1分31秒5の歴代2番目のタイム(トップは21年ソダシの1分31秒1)で圧勝した。桜花賞の歴史を遡れば、1975年テスコガビーの大差勝ち、グレード制導入後も87年マックスビューティの8馬身差があるが、近年は高速決着となって着差が付きにくくなっており、2000年以降で2馬身1/2以上だったのは01年テイエムオーシャン(3馬身=1分34秒4)、15年レッツゴードンキ(4馬身=1分36秒0)、19年グランアレグリア(2馬身1/2=1分32秒7)しかいなかった。スターアニスは阪神ジュベナイルフィリーズでも23年アスコリピチェーノに並ぶ1分32秒6をマークしており、スピード能力という面では歴代最強クラスと言えそうだ。
 また、スターアニスは阪神ジュベナイルフィリーズから桜花賞への直行だったが、阪神3歳牝馬Sから阪神ジュベナイルフィリーズへレース名変更となった01年以降、同レースの勝ち馬が桜花賞に直行した過去5回のケースでソダシ、リバティアイランドが優勝、レッドリヴェール、アスコリピチェーノ、アルマヴェローチェが2着。今年のスターアニスを含めて6頭すべてが連対したことになる。これは他のG1も同様かもしれないが、出走権利のある有力馬にとってトライアル~本番という流れが薄らいできており、「G1トライアルなのでG2」という格付けも、そろそろ見直していく必要があるのかもしれない。
 オークスはそのスターアニスが12着と惨敗した。阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞で見せた卓越したスピード・血統からも、やはり距離適性の差が出た結果と分析できそうだ。そして今村聖奈騎手とのコンビで優勝したジュウリョクピエロ(父オルフェーヴル)に関しては、称賛する多くの記事で溢れ返っているのでここでは重複させないが、個人的に印象に残ったのは今村騎手のレース後インタビューの「本当に危うさ全開で『いやー、今日もヤバイなあー』と思いながら、レースの緊張というよりかは落とされないかの緊張の方が大きかったです」という言葉。さすがはオルフェーヴル産駒だなと懐かしさが込み上げてきた。
 種牡馬オルフェーヴルは初年度から3年間は244、256、244頭と種付けする超絶な人気を誇ったが、4年目からは減少に転じ6年目は52頭まで激減した。だが産駒ラッキーライラックらの活躍で7年目には165頭に復活。その後もジャスティン、ウシュバテソーロ、マルシュロレーヌなどの活躍で人気種牡馬の地位を確立した。若いライバルたちも増えてきたことで12年目の25年は再び57頭に減少していたが、そのタイミングでジュウリョクピエロのオークス制覇。現役時代も種牡馬入りしてからもそのジェットコースターのような馬生がオルフェーヴルの魅力に思える。ジュウリョクピエロは凱旋門賞(10月4日)にJRA所属3歳馬として唯1頭、登録を終えている。凱旋門賞、海外遠征で不思議なほどの力を発揮しているステイゴールド~オルフェーヴルの血統だけに、「もしかしたら」の期待がファンに大きく広がっている。
 皐月賞、ダービーはロブチェン(父ワールドプレミア)が連覇した。牡馬の春2冠達成は史上25頭目となる。デビュー戦から2000m戦を選び、2戦目でホープフルSを制覇。菊花賞、天皇賞(春)を制したワールドプレミアを父に持つだけに、陣営もスタミナには自信を持っていたことはうかがえる。共同通信杯はリアライズシリウス、ベレシートに僅かにスピード負けして同タイム3着と初黒星を喫したが、再び2000mに戻った皐月賞はリアライズシリウスに終始マークされながらも高速ラップを刻んで逃げ切り勝ち。1分56秒5は皐月賞レコード、コースレコードでもあり、スピード能力面の高さも示した。
 ダービーは17番枠を引いてしまい、思っていたよりも後方の位置取りを余儀なくされたが、4角9番手からの差し切り勝ちで2冠達成。ディープインパクトの孫世代として初めてのダービー馬となった。2着はキズナ産駒パントルナイーフ、4着はコントレイル産駒ゴーイントゥスカイで、今後はディープ孫世代もダービー勝ち星を量産していくのだろうが、その第1号がエース格であるキズナ、コントレイル産駒ではなく、種付料50万円で初年度産駒25頭のワールドプレミアだった点が競馬の面白さだ。これまでに春2冠を制した上で菊花賞に出走して3冠達成できなかった馬は8頭いたが、その父はいずれも輸入種牡馬だった。3冠馬8頭のうち父内国産は3頭でトウショウボーイ(菊花賞3着)産駒ミスターシービー、ステイゴールド(菊花賞8着)産駒オルフェーヴル、そしてディープインパクト(3冠馬)産駒コントレイルだった。父が菊花賞馬のロブチェンが無事に夏を越せば、3冠馬になれる可能性はかなり高そうだ。
 ロブチェンのダービーの馬体重は522キロで、大型馬は長距離戦でスタミナのロスが大きいのではないかとの心配の声もあるが、キタサンブラック(菊花賞時の馬体重は530キロ、以下同)を筆頭にデルタブルース(526キロ)、マチカネフクキタル(512キロ)、アーバンシック(510キロ)など大型馬の菊花賞制覇の例は多い。ゴールドシップ、ダンスインザダーク、スーパークリークなど名ステイヤー・ステイヤー種牡馬と呼ばれた馬も500キロ以上で菊花賞を勝っている。この点でも3冠ロードに不安はなさそうだ。

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