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馬産地往来

2011年4月26日

日本に勇気を与えたドバイWC

半世紀をかけて実現した競馬界の悲願

後藤 正俊

 日本馬によるドバイワールドCのワンツーフィニッシュは大震災で傷ついた日本国民に大きな勇気を与えた。
 震災から1週間経過した3月19日、JRA開催が西日本でのみ再開されたが、未曾有の事態を前にして「競馬をしている場合だろうか」と多くの関係者、ファンも考えていたことだろう。「白熱したレースで被災者に勇気を与えたい」の言葉は本心であっても、「本当に競馬にそこまでの力があるのだろうか」という疑念もあった。
 実際に、再開された週の競馬は、何かバタバタした印象があり、審議ランプは点灯しなかったものの荒れたレースが目立ち、ファンも盛り上がるというよりも騒然とした落ち着かない雰囲気に見えた。
 だがドバイ後は明らかに変わった。高松宮記念でGIのファンファーレが鳴ると、あの統一された手拍子が復活し、スタンドが一体となった。レース後は初の連覇を達成した8歳馬キンシャサノキセキへ惜しみない拍手が贈られた。いつものGIの光景が戻っていた。
 その影響は競馬界だけではなかった。サッカーの日本代表VSJリーグ選抜のチャリティマッチでは、キング・カズのスーパーゴールですごい盛り上がりとなったが、プロ野球の開幕問題などそれまで漂っていた自粛ムードを一変させて、サッカーの試合が行われていることに違和感を感じさせなかったのも、ドバイワールドCが「流れ」をつくったように思えた。競馬にはそれだけの「力」があったことを実感させられたし、「世界一」の価値はそれほど大きなものだったのだ。
 日本馬が世界一のレースで勝利することは、関係者、生産者にとって長年の悲願だった。日本馬の海外遠征の歴史は1958年のハクチカラに始まる。同馬はそのまま米国を拠点に走り続けて翌59年のワシントンバースデーHに優勝した。ハンデ戦なのでいまでいえばGII級だったと考えられる。その後はワシントンDC国際競走が日本馬遠征の大きな目標となったが、67年スピードシンボリの5着が最高位だった。
 真の世界一レベルへの挑戦は、障害ではフジノオーの66年グランドナショナル(英、競走中止)、平地ではスピードシンボリの69年凱旋門賞(仏、11着以下)が最初。スピードシンボリの凱旋門賞挑戦を録画映像で見たときには、勝ったレヴモスからはるか後方でもがいている日本最強馬の姿にショックを受けた。そのスピードシンボリが帰国初戦の有馬記念をあっさりと勝ったことにも日本と世界の大きな隔たりを痛感させられ、さらにショックだったことが思い出される。
 それから40年以上が経過。シンボリルドルフ、エルコンドルパサー、ディープインパクトらの日本王者が飽くなき挑戦を繰り返して、失望も希望も感じながら、世界との差を一歩一歩縮めてきた。馬産地も懸命に強い馬づくりに取り組んできた。常に血統の更新を怠らず、世界から新しい血を導入した。種牡馬ばかりでなく、繁殖牝馬もこれだけ導入を続けている国は日本以外にはない。育成施設も坂路、屋根付き馬場、ウッドチップコースなどあらゆる工夫を凝らし、土地の狭さという日本の弱点をむしろプラスに変えてきた。
 ヴィクトワールピサを生産・育成した社台ファームでも、常に世界を目指して強い馬づくりに取り組んできた。先代の吉田善哉氏の時代の73年にワジマを購入して米国GIを4勝して以来、米国で牧場を運営したり、日本産馬を欧米でデビューさせたり、あらゆる取り組みを行ってきた。86年ギャロップダイナの欧州遠征は2レースとも2ケタ着順、95年スキーキャプテンのケンタッキーダービー挑戦も14着惨敗だったが、ダンスパートナー、ステイゴールド(社台ファーム育成)、ハーツクライ、ダイワメジャーらが一歩一歩頂点に近づき、ついにヴィクトワールピサの栄光が実現された。
 ドバイにも帯同した社台ファームの東礼治郎育成主任は「コース、馬場がヴィクトワールピサに向いていたということはもちろんありますが、その世界の条件に適した馬をつくってきたということ。自分たちのいままでの馬づくりが間違いではなかったと証明できたことが何よりうれしいかった。日本馬は強い。海外でもしっかりと調整できれば、今後も世界一を争う舞台で日本馬が勝つことは、もう夢ではないと思います」と力強く言い切った。
 「あきらめない気持ち」「勇気」「努力の積み重ね」「感動」……。ヴィクトワールピサの栄光がもたらしてくれたものはとてつもなく大きい。

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