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馬産地往来

2004年8月1日

第7回セールが成功した要因

SSの不在が新時代を切り拓いた

後藤正俊

 今年のセレクトセールはサンデーサイレンス産駒がいなくなることで、 誰もが売り上げの大幅な減少を覚悟していたはずだった。 日本競走馬協会としても 「売り上げは50億円程度」 とシミュレーションしていたと聞く。
 ところが逆に、 SSのラストクロップ上場で史上最高となった昨年をも上回る驚異的な売り上げを記録し、 しかもダンスインザダーク産駒の 「エアグルーヴの2004」 にはセリ市史上最高の4億9000万円という値がつけられたことは、 ただただ驚くしかない結果だった。 なぜ、 これだけの売り上げに結びついたのか、 分析してみる。
 1景気の回復 セール後に吉田照哉副会長も語っていたことだったが、 今年の2歳トレーニングセールあたりから、 景気の回復が感じられる兆しを見せてきていた。 セレクトセールではIT関連など新規馬主も数多く参入してきていたし、 一部馬主はまさに青天井の予算で買いまくっていた。 景気の減退が真っ先に表れ、 上昇がもっとも遅れて表れるといわれているサラブレッド販売だが、 ついに長年の景気減退から回復の兆しが見えてきたことは間違いない。 これは、 セレクトセール後に行われた北海道市場のセレクションセールが昨年を大きく上回る好成績となったことからも、 よりはっきりと証明されたといえる。
 2セールの信頼性 サラブレッドを購買したいと思う人は、 たとえ景気の悪い時代であってもある程度はいる。 その人たちがどこで買うのかといえば、 やはり 「実績と信頼のあるセレクトセールで」 という流れが完全に出来上がっているのだ。 特に今年のダービー馬キングカメハメハを輩出したインパクトは大きかった。 購買者の多くはダービー制覇を最大目標としているだけに、 SS産駒以外のセール出身馬からダービー馬が出たことは、 多くの購買者に夢をもたらした。
 3上場馬のレベルアップ 主催者も、 購買者からの信頼に応えるべく、 優秀な繁殖牝馬の産駒を例年以上に用意した。 特に社台グループは牧場に 「残す」 ということをまったく考えずに、 良い馬から順に上場してきた印象だ。 SSはいなくても、 優秀な繁殖牝馬に一流種牡馬を交配すれば、 当然高いレベルの産駒になる。 上場馬の 「総合力」 でこれまでのセールを上回っていたと見ていいだろう。
 4サンデーサイレンスの遺産 SS産駒はいなくなったが、 SS牝馬、 SS系種牡馬の産駒たちはいずれも高い評価を得て、 売り上げに大きく貢献した。 だがこれだけがSSの遺産ではない。 SSが稼ぎ出した資金で購買してきた高いレベルの種牡馬、 繁殖牝馬たちが、 今年のセレクトセールを支えてきたことも間違いない。 また、 これまでSS産駒で成功をつかんできた馬主たちも、 今年のセレクトセールを支えた。 いなくなってもなお、 絶大な影響力をSSは残していたといえるだろう。
 5サンデーサイレンスがいないからこその成功 4と逆に思えるかもしれないが、 これこそが今年のセレクトセール最大の成功理由だったと私は思っている。 これまではSS産駒を購買しないと、 名馬を手に入れるのは 「ノーチャンス」 と思われていた。 実際にはSS産駒以外でも活躍している馬は多いのだが、 そう思わせてしまうほど 「サンデーサイレンス」 の名は絶大だった。 だがそのSS産駒がいなくなれば、 どの種牡馬の産駒にもチャンスが出てくる (ように見える)。 だからこそ、 いままでSS産駒を買えなかった馬主が、 今年は積極的に良い馬を探して、 このセリ市に参戦してきた。 これまではSS産駒との比較から、 それ以外の種牡馬の産駒には 「1億円」 という壁が自然とできていたが、 今年はその壁も取っ払われた。
 平成大不況という厳しい時代を支えていたのは間違いなくSSだったが、 今年のセレクトセールは、 これからはSS抜きでも日本の競馬界は安泰であることを示したセールだったと思う。

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