重賞勝ち馬News

Stallions in Japan

会員の勝ち馬

取引馬データベース

よくある質問

日本競走馬協会について

バナーエリア

日高便り

2023年6月23日

群雄割拠の様相を見せる種牡馬界

北海道事務所・遠藤 幹

 5月28日に開催された東京優駿(日本ダービー)は、圧倒的1番人気のソールオリエンスの追撃をクビ差抑えて、タスティエーラが優勝した。4着までクビ、ハナ、ハナの大接戦となったゴール前の迫力は、今年90回を数えるダービーにふさわしい名勝負だったと思う。
 タスティエーラは弥生賞ディープインパクト記念に優勝し、前走皐月賞は2着。デビュー5戦目のダービー優勝でG1ホースの仲間入りを果たした。ノーザンファームの生産、父サトノクラウン、母パルティトゥーラ、母の父マンハッタンカフェという血統構成の持ち主だ。
 サトノクラウンは、父がラストタイクーン産駒のマルジュで、自身は香港ヴァーズと宝塚記念のG1レースに勝利した。サンデーサイレンスもキングカメハメハも持たない血統でもあり配合牝馬を選ばず種付けでき、種付料もお手頃な価格(初年度2019年:受胎条件100万円)であることも相まって、初年度は200頭を超える牝馬を集めた。さすがに競争相手の多い価格帯の種付料でもあり、昨年は78頭まで配合数を減らしてはいたのだが、初年度産駒からいきなりダービー馬を出すとは……! 底力に富み、2200~2400メートルを得意としたサトノクラウンの本領発揮と言えるのではないだろうか。
 皐月賞に優勝し、ダービーは2着に惜敗したソールオリエンスの父は、キタサンブラック。昨年の年度代表馬で、今年のドバイシーマクラシックを圧勝したイクイノックスの父でもあるが、2世代連続して傑出馬を送り出したことで、今年社台スタリオンステーションで最も予約の取りにくい種牡馬になった。その父ブラックタイドは種牡馬生活において無二の傑物ともいえるキタサンブラックを出した。全弟のディープインパクトは綺羅星のごとくG1ホースを輩出し、コントレイルやジェンティルドンナなどの図抜けた馬も作出しているが、対照的にただ一頭だけとはいえ、近い将来リーディングサイアーに上り詰めそうなキタサンブラックを送ったブラックタイドも、この先々日本の競走馬血統史に語り継がれる存在になるのかもしれない。
 ディープインパクト、キングカメハメハ亡き後の種牡馬界では、新興勢力の台頭が目に付くようになってきた。今年、ダービーまでのG1・13レース(日本調教馬が制した海外の3レースを含む)に勝利した競走馬の父に注目してみよう。ドゥラメンテ3勝、キタサンブラック2勝、ロードカナロア2勝、オルフェーヴル、キズナ、サトノクラウン、ディープインパクト、モーリス、レモンドロップキッドが各1勝と、実に多種多様な顔ぶれが並ぶ。
 個々の勝ち馬をつぶさに見ると、これまたその実力も世界トップクラスに位置するのでは……と思えるほどの強力布陣なのだ。牝馬二冠を達成したリバティアイランドは、オークス終了時で120ものレーティングを与えられ、女傑アーモンドアイを現時点でしのぐほどのパフォーマンスを見せている。イクイノックスはドバイシーマクラシックでの圧勝劇が評価され、6月4日現在のワールドベストレースホースランキングでレーティング129と世界首位にランク。レーティング120以上の馬28頭中7頭が日本産馬(昨年の同時期は22頭中3頭)であるという現実が、日本馬の優位性を雄弁に物語っている。
 6月7日現在の総合(中央+地方)サイアーランキングはトップがロードカナロア、そしてドゥラメンテ、キズナ、ディープインパクトと続く。追い上げる中にモーリス(6位)、キタサンブラック(7位)、サトノクラウン(19位)らが位置しており、今後デビューする数多くの産駒の活躍でそれぞれがさらに順位を上げていくことになるだろう。
 日本国内では海外から飛び切りの良血繁殖牝馬がこの10数年たゆまず導入されている。それらの牝馬に国内トップクラスの種牡馬が配合され、確かな生産、調教技術も作用し強い日本産馬が続々生産されている。数多くの優れた種牡馬が互いに競い合う展開の中で、「独立峰=トップ種牡馬1頭が抜きんでる」という従来のサイアーランキングが、「高い山々がそびえ立つ連峰=複数のトップ種牡馬が並び立つ」ような、列強が覇を競うランキングに変わりつつあるようだ。まさしく種牡馬界はハイレベルの群雄割拠=戦国時代に突入したともいえる様相である。

バックナンバー

過去の日高便り

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年