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日高便り

2014年4月25日

14年春 日高点描

G1祝賀会と道営の能検

北海道事務所・遠藤 幹

 年間初のGIとなる2月のフェブラリーS、春の短距離王決定戦である3月の高松宮記念と、今年の年頭を飾る2つのGIレースは、同一馬主&牧場のコンビが連覇する快挙となった。2頭のオーナーは風水家として知られる「Drコパ」こと小林祥晃氏、牧場は07年のフェブラリーSを制したサンライズバッカスを生産した日高町のヤナガワ牧場である。
 フェブラリーSに出走したコパノリッキーは最低人気の16番人気。それが直線先頭に立つと、このあとドバイに遠征する人気のホッコータルマエやペルシャザールに迫られても、そこから二の脚を繰り出して見事に優勝。単勝オッズは272倍の大穴となった。
 不良馬場になった高松宮記念では、他馬が道悪で直線伸び切れずに苦しむなか、道中2番手を進んだコパノリチャードが抜け出してスイスイとビクトリーロードをひた走り、後続に3馬身差をつけて圧勝した。
 その2つのレースの優勝祝賀会が4月9日、新ひだか町静内のホテルで行われ、胆振日高の牧場関係者など120名余りが出席して楽しい宴が催された。
 小林オーナーは、テレビでおなじみの軽妙洒脱なトークを全開し、何度も会場を笑いの渦に巻き込んだ。対照的にヤナガワ牧場の梁川正晋さんは、やや緊張した面持ちですべての関係者に感謝の言葉を述べたあと、「この優勝に浮かれることなく馬づくりに邁進していきたい」と挨拶。オーナーと生産者の双方に会場から惜しみなく温かい拍手が送られた。
 会場のテーブル席はフリーになっていた。私は地元の女性牧場主、Tさんと隣同士になり、こんな会話を交わした。
「次の優勝祝賀会はTさんの牧場かもしれないよ」
「いえいえ、うちを通り越してたぶん別の牧場さんに幸運はいっちゃうのよ」
 大学を出てから数年間テニススクールのインストラクターをしていたという異色の経歴を持つTさん。日高に戻って家業を手伝いはじめ、生産牧場を切り盛りするようになってすでに10数年、すっかり牧場主の顔になっている。
「でも、牧場やっていると、馬から離れるのが怖くてずっと家にいるんだよね。もう少しオン、オフをはっきりさせて外に出たほうがいいのかな」
「そうだよ。GI祝賀会もいいけど、オフのときにぜひ素敵な彼氏を見つけて、ここで寿の祝賀会をやりましょう!」
「あははは、GI祝賀会以上にそれは難しいわ」
 Tさんは明るく笑った。

 翌4月10日、門別競馬場では、今年4回目の競走能力・発走調教検査(能検)が行われた。
 全16レースに87頭が出走して81頭が合格。晴れてはいるものの強い風が吹くなか、出走馬は制限タイム(2歳馬は800メートルを57秒以内)をクリアすべく騎手を背にゴール前を走り抜けた。
 馬券を発売する本番レースではないので、目いっぱい疾走することはないが、それでも仕上がりつつある馬もいれば、まだまだこれからといった感じの馬もいて、調教師それぞれの考えでこの能検に臨んでいることがうかがい知れる。
 所有馬や生産馬の走りを確認するために集まっている関係者も見受けられるなか、私も会社事務局種牡馬の産駒の走りに注目していた。今年、種牡馬デビューとなるヴァーミリアン産駒を2頭見たが、まだまだ調教途上ではあるものの、しっかりとした足さばきでゴール前を駆け抜け、産駒デビューが楽しみになってきた。
 新冠の若手牧場主Nさんは、牧場で手がけた調教馬の走りを確認に来たとのこと。
「うちで育成、初期調教をした馬なんで気になって。まずまず動いてくれるといいんですけどね」と彼は言う。
 出産や種付で多忙な時期、仕事の合間のわずかな時間を利用して、門別競馬場に足を伸ばして熱心にお目当ての馬の動きを確認する彼を、私は大変頼もしく思った。
 ホッカイドウ競馬は4月23日に開幕し、初日には2歳新馬戦「スーパーフレッシュチャレンジ」(1着賞金300万円)が行われる。日本で一番早い2歳新馬戦になるが、それまでわずか2週間あまり。
 道営競馬の開幕とともに日高は一気に春本番となる。

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